中伊豆の修善寺と冷川の中間に位置する、東京圏の温泉マニアなら多くの方が御存知の共同浴場です。ネタとしてあまりにベタすぎるためか、あるいはお湯がいまいち面白くないからか、ここを取り上げているブログやネットの記事を最近あまり見かけませんが、そんな状況だからこそ敢えて今回取り上げてみます。私がここを訪れるのは大学生時代の合宿で利用した以来ですから、なんと13~4年ぶりです。当時はまだ温泉の魅力に全く目覚めていなかったため、小さく古く汚らしく臭い共同浴場という印象しか抱けなかったのですが、あれから幾星霜が過ぎ、なんだかんだで1300湯も温泉を巡ってきた今日の私は、果たしてここへ再訪して当時の印象を変えることができるのでしょうか。
橋のたもとに立つ白岩温泉の歓迎看板は、「岩」と「泉」の文字プレートが割られたまま放置されており、訪問者は果たして歓迎されているのか、はたまた温泉地として現役なのか、もう廃れてしまっているのか、いささか不安になってしまう。
川の対岸には共同浴場が見える。浴場名が右から書かれているところに風情を感じる。
浴場前の駐車場には軽トラが何台も止まっている。いずれも常連さんの車だろう。この外見は昔のままだ。以前は自販機付近に「空き缶を捨てるな」「捨てたら殺す」みたいな、強烈な語句の注意書きが貼られていたように記憶しているのだが、私の勘違いだろうか。当然ながら今はそんなものはない。
玄関入ってからの様子も昔のまま。記憶通りの光景が広がっていると、とっても安心する。でも以前の番台まわりはもっと雑然としていたはずだ。その名残か、玄関の三和土には種を売る古いラックが置かれていた。
番台前の棚には売り物のトマト・バナナ・落花生が置かれていた。以前はもっとたくさんゴチャゴチャと陳列されていたような覚えがある。
左が女湯で右が男湯。男湯の入り口は引き戸が開けっ放しで、単にカーテンがかかっているだけであった。男なら別に見られたって構わねぇだろ、という男らしい発想が私は大好き。
脱衣所も至ってシンプルで、棚と洗面台と腰かけがあるのみ。暑がりな私としては、扇風機が用意されているのは有り難い。常連は年寄りが多いのだろう、室内には仄かに加齢臭と膏薬の匂いが漂っており、けだし壁等にはそれらの臭いが染みついているものと思われる。学生時代に訪れた時には、この膏薬臭の他、なぜか矢鱈とカビ臭かった記憶があり、それゆえ、このお風呂には良い印象が抱けなかった。今回はカビ臭さは皆無であった。
もちろん共同浴場なのでお風呂は内湯のみ。タイル貼の浴槽は3人サイズ。ところどころタイルの色が異なっているのは補修をした跡だろう。お湯は浴槽底の穴から供給されており、縁からしっかりオーバーフローしている。浴槽縁の外側の下はちょっと窪んでおり、これによりオーバーフローしたお湯は洗い場へ溢れ出ず、窪みに沿ってそのまま排水口へと直行するようになっていた。
お湯は無色透明でほぼ無味無臭。スベスベツルツルの気持ちよい浴感で、肌への当たりが優しいお湯だ。感性を研ぎ澄ませば、微かに芒硝的な味や匂いが感じられたが、折悪く他の客が使うシャンプーやボディーソープの強い香りに邪魔されて、正直なところ、知覚面はあまりよく感知することができなかった。でも加温循環消毒無しの掛け流しであることは間違いない。湯加減は若干熱いかもしれないが、熱いお風呂に慣れてしまった私には特に問題なかった。
洗い場には昔ながらの押しバネ式カラン(湯+水)が3セットとシャワー付き混合栓が1基設置されている。カランのお湯がかなり熱かったのだが、これって源泉使用? 洗い場の上には、花咲か爺さんの大きなタイル絵が描かれていた。実用本位で無味乾燥になりがちな共同浴場の室内に良いアクセントを加える、実に微笑ましいアートだ。客層もこの絵で描かれているような爺さんばかりなので、もしかしたら絵のモデルはここにいる常連さんなのではないかと下らない想像をしてしまった。若かりし日の私はこのタイル絵の存在に全く気付かなかったようで、絵については全く記憶にない。ちなみに女湯は浦島太郎らしい。
久しぶりに訪れ、過去の記憶と照らし合わせながら入浴させていただきましたが、お湯こそいまひとつ面白みに欠けるものの、どうして13~4年ものブランクをあけてしまったのだろうかと悔みたくなるほど、昔ながらの風情にたっぷり浸れる情緒ある共同浴場でした。こういう鄙びた味わいは、齢を重ねないと理解できないものですね。
白岩2号
ナトリウム-硫酸塩温泉 64.7℃ pH9.1 溶存物質1528mg/kg 成分総計1528mg/kg
Na:450.0mg, SO4:791.7mg,
修善寺駅から伊豆箱根バスor東海バスで「白岩」下車、徒歩5~6分。あるいは東海バス・中伊豆温泉病院行で「小川橋」下車すぐ
静岡県伊豆市上白岩1268-2 地図
0558-83-2650
14:30~20:30 木曜定休・年末年始休業
(平成21年1月より定休日が火曜から木曜へ変更されています)
200円
ロッカーなど備品類なし(シャンプーなど販売あり)
私の好み:★★
コメント
なぜか?
どうしても伊豆方面には足が向かないのですよね?
わかります
そのお気持ち、よくわかります。
観光色が強いこと、秘境感がないこと、観光客も多いこと、客の足元を見たような料金設定が多いこと、無色透明の温泉が多くて個性差が少なくインパクトに欠けること、しかも循環消毒などのお湯が多いこと・・・などなど、敬遠したくなる要素がたくさんあるんですよね。私も伊豆から近い神奈川県に住みながら、あまり伊豆には行きません。でも探せばまだまだ渋くて良い温泉がたくさんあるんですね。意外と伊豆は奥が深くて面白いです。ただし、事前にちゃんと調べておかないとハズレくじを引く可能性が大ですが…。
はじめまして
今日、ここの共同湯行ってきました!
橋のほうから行かないと(いやそちらから
行ったとしても)気づかずに通り過ぎてしまうような
建物ですよね。
入り口の玄関も普通の家っぽいですし(笑)
その辺も含めてgoogleのクチコミに書いておきましたので
よかったら見ておいてください。
松藤南というのが私です。
受付のご夫婦を見たとき昔見たダウンタウンのシュール
なコントを思い出しました(笑)世代的にというかお笑いに
興味のない方にはピンときませんよね、すみません。
ここから近くの白岩の湯のほうは以前行ったことがあるのですがここの共同湯は今回が初めてでした。
この前の道は伊豆が地元なので何百回と通ってるんですけどね。まったく知りませんでした。
>観光色が強いこと、秘境感がないこと、観光客も多いこと、客の足元を見たような料金設定が多いこと、無色透明の温泉が多くて個性差が少なくインパクトに欠けること・・・等
つくづくおっしゃるとおりだと思います。
地元ながら(今は離れて住んでいるので外からの目で見て)
私も感じていることです。ざっくり言うと
『やる気が無いか調子に乗ってるか』
の二極に分かれるかと思います。
地元で商売している友人が言ってました。
品川ナンバーの小金もちらなんて金落としていく
カモでしかないな。
温泉も宿も集金装置としての演出でしかないと。
まぁ確かに妙に高級感だけうたって実体が無いような
ところもありますよね。
その値段の根拠は何だ?みたいな(笑)
でもまだその演出が徹底しているところはいいんですよ。
商売なんですからね。満足感を与えられれば対価として
いくらに設定したっていいわけですからね。
一番いやなのは金だけとって客に不愉快な思いさせるような
ホスピタリティーに欠ける接客と質の低い施設ですよね。
この間もこの共同湯からそんなに遠くない神代の湯というところ
で嫌な思いをしたばかりです。
具体的なことは書かないでおきますが(笑)
いろいろ書きましたが全国津々浦々温泉は好きですよ!
たまーにですが、そうそうこれこれ!ていうのに当たるので(笑)
長々と失礼致しました。
Unknown
サラダさん、はじめまして。
受付のご夫婦から受けるシュールなコントみたいな感じ、なんとなくわかります(笑)。浴場全体が独特な雰囲気ですよね。
伊豆は足が向きにくいんですよね。私の家からでしたら、箱根や伊豆の方が近いにもかかわらず、温泉に行くとなれば信州か東北になっちゃいます。やっぱり東京という大消費地の近くですと、いろいろと難しい面があるのでしょうね。宿やお店の問題もさることながら、東京方面から来る客の質にも問題があるのでしょうし…。
今年は春に西伊豆方面へ行き、渋い温泉の数々に入って、満足いく湯めぐりができました。探せば良い温泉がまだまだあるんですよね。
今後とも宜しくお願い致します。
Unknown
お返事ありがとうございます。
こちらこそ、よろしくお願い致します。
そうなんですよ、私も地元でには用事がないと中々帰りません。
この夏も能登半島の木ノ浦海岸までつげ義春の世界のような渋い温泉を求めて行って来ました。
渋い温泉どころか渋すぎる健康ランドに泊まるハメになりましたが(笑)
南下して帰りに寄った山中温泉が唯一の救いでした。
無計画はダメですね。
とくに繁忙期は(笑)
Unknown
>サラダさん
たしかに夏の繁忙期は難しいですね。幸か不幸か、私は夏に休みが取りにくいため、世間様よりちょっとズラして休ませていただき、お蔭様で大混雑を避けられています。
つげ義春の世界を求めて能登半島ですか。スゴいですね。能登半島といえば、今年の正月休みに、のと鉄道のイベント列車に乗りましたが、マニアックな世界には攻めておりません(笑) 昨冬は寒ブリが不漁で、せっかく寒ブリを求めて出かけたのに、口にすることができず、ガッカリしちゃいました。いずれリベンジしたいです。