晩秋の某日、クマの影に怯えながら、八幡平の山奥に湧く有名な露天風呂「見張りの湯」へ行ってきました。
玉川温泉の南方数キロのところにある国道341号のスノーシェッド付近から東へ分かれる黒石林道へ。林道ですから全区間にわたって車1台しか走れないダートなのですが、適当に幅寄せすれば行き違い可能ですし、私の車のようなFFの一般乗用車でも問題なく走れました。キノコの時期ゆえか、意外とこの道の利用者が多く、途中何度か退避しました。
国道から丁度3.0kmでブナ沢林道との分岐点。ここは道なりに右へ。
この林道は一定間隔おきにキロポストがあり、またところどころ水たまりがあるものの、底を擦ったりするようなことはなく、比較的走りやすい路面でした。
4km地点で右に逸れる分岐あり。ここも道なりに(左側へ)。
5.0kmポストを過ぎてすぐのところで、左に冷水林道が分かれていきます。ここも道なりに(直進)。
8.8kmでこのような橋を渡り…
「発電所専用道路」の看板がある10.5km地点の二又分岐を右に折れると…
車5~6台は余裕で停められそうな広場に到着。車を置いて、ここからは徒歩で先へと進みます。
駐車スペースから先も発電所の関係車両が通るので、それなりの幅と路面は確保されているのですが、いきなり急な下り勾配になるため、乗用車では帰りに登れなくなるかもしれません。
この一帯はクマさんの棲息地域である上、冬眠に備えて栄養を必死に蓄えている時期なので、単独行の私はクマさんとの遭遇に怯えながら、熊除け鈴をガンガン鳴らし、また足元には糞が無いか、そして樹上には熊棚が無いか、よく注視しながら歩きました(ちなみに今回歩いた全区間に亘り、糞や熊棚は見当たりませんでした)。
駐車スペースから徒歩9分でゲートを通過。ゲートにはカギが掛っているので、この先一般車両での通過は不可能。ゲート前には駐車スペースはおろか転回場すら無いので、やはり上述の駐車場に車を置いて歩くのが吉でしょう。
ひたすらジグザグの下り坂が続きます。帰路この坂を登らなきゃいけないのかと思うと、ちょっと憂鬱です。私は当初自転車でこの道を往復するつもりでしたが、自転車での登りは歩き以上にキツいでしょうから、徒歩を選択して結果的には正解でした。
途中で石仮戸取水口への道が分岐。もちろん分岐へ逸れず、道なりに直進します。
駐車スペースから20分で水場を通過。足元が悪いので、靴が濡れないように注意して先へ。
歩き始めて27分でヒューム管の橋を渡ります。ここから約100mほどの短区間はコンクリ舗装がなされていました。
坂を下り切って玉川本流の河岸に至ると、ようやく道は平坦になり、玉川の右岸を遡るように東へと進みます。
路傍に錆びて朽ちかかった鉄の標識を発見。そこには「又口小屋」と書かれていました。現在この周辺には建造物らしきものは見当たりませんが、かつてここには山小屋が存在していたのでしょう。
歩き始めて37分で吊り橋。橋の袂にはトラックがとまっていました。ということは、この先に作業員がいるのか…。ここまで来たにもかかわらず、「関係者以外は立ち入り禁止だ」と追い返されたらどうしよう…。
かなり揺れる吊り橋ですが、足場板もワイヤーはもしっかりしているので、安心して渡れました。上流で発電用に取水されているため、川の水量はかなり少なめ。
対岸に渡り、川に沿って先へ進みます。
歩き始めて38分で小和瀬発電所の管理用小屋に到着。いまから目指す露天風呂は、この見張り小屋に付帯している施設であるために「見張りの湯」と称されているんだそうです。本来は発電所関係者のためのお風呂なので、一般には開放されていないのですが、まぁその辺りは大目に見てもらって入浴させていただこうというのが、今回の目論見なわけです。小屋では作業員のおじさんが布団を干している真っ最中。ダメ元で入浴を乞うと、どうぞどうぞとアッサリOKしてくれました。小屋から右手に折れて目的地へ。
笹藪の向こうでは湯気が立ち上っており、この光景を見るだけで、つい期待に胸が膨らんでしまいます。
ついに到着しました。いいロケーションではありませんか。一刻も早く入浴したかったのですが、念のために湯舟の温度を計測してみると…
48.9℃という入浴には熱すぎる温度に思わずたじろいでしまいました。水で薄めたかったのですが、加水用ホースからは水が出ていません。露天風呂のすぐ傍には沢が流れているのですが、沢は熱湯が流れているため、そこから取水するわけにもいかず、わざわざ吊り橋付近の崖から水を取り、ホースで玉川を跨いで小屋やこの風呂まで引水しています。しかし、その途中でどうやら漏水しているらしく、ここまで水が届いていなかったのです。配管のバルブが開いていたのは確認できたのですが、漏水箇所は把握できなかったため、浴槽への加水は断念。仕方ないので、まず源泉を注いでいるホースを浴槽から外し、近くにあった羽目板で一生懸命湯もみして、できるだけ人力でお湯を冷まそうと頑張りました。しかし、ちっともお湯が冷める気配が無い…。
痩せ我慢して入浴を試みましたが、あまりの熱さで10秒が精いっぱい。タイマー撮影で自分撮りしてみましたが、平然な表情をしているようで、実は相当堪えています。湯上がりは全身が軽度の火傷を負ったかの如く、ヒリヒリした痛みに苛まれました。とくに四肢の末端は辛かった。体をクールダウンさせながら、10秒入浴を4セットほど繰り返しましたが、皮膚は既に悲鳴をあげていたため、これ以上の入浴は不可能と判断。諦めて素直に着衣することにしました。せっかくここまで来たのですから、もう少しゆっくり湯あみしたかったのですが、残念としか言いようがありません。
ちなみにお湯は無色透明で、タマゴ味・臭いと砂消しゴムのような味・臭いを足して2で割ったような硫黄的知覚が感じられ、湯中では白い湯の花が沢山舞っていました。おそらく単純硫黄泉に該当すると思われます。
露天風呂のすぐ傍を流れる、その名も「湯の沢」という沢です。河床には白い硫黄の湯の華が沢山付着し、川面から湯気が濛々と立ち上っています。触ると火傷するほど熱い沢でした。
温泉分析表なし
秋田県仙北市田沢湖玉川国有林内 (地図による場所の特定は控えさせていただきます)
入浴可能時間:不問
無料
熊に注意(夏はマムシにも注意)
コメント
温泉研究家
こんにちは。
近々、この奥にある、湯田又沢に行く予定です。質問ですが、黒石林道入口から、見張りの湯までは都合、どれくらいの時間が掛かりましたか? 1.5時間くらい?
Unknown
齊藤さん、こんにちは。
黒石林道入口から駐車スペースまで車で約20分、駐車スペースから見張りの湯の小屋まで歩いて約40分、ということで都合約1時間でした。ご参考になれば幸いです。