尾張温泉 湯元別館

愛知県

愛知県・蟹江の尾張温泉と言えば、馬鹿デカい入浴施設である「尾張温泉東海センター」がまず思い浮かぶでしょうね。温泉不毛地帯の愛知県では珍しく掛け流しの温泉が楽しめる稀有な施設ですが、私の実体験から申し上げますと、この東海センターは館内で毎日開催される歌謡ショーや大衆演劇の方が目立っており、中高年の加齢臭がムンムンとしているような雰囲気に戸惑ってしまい、浴室内でもお年寄りのお客さんが非常に多くてじっくりお湯を楽しめる環境ではありませんでした。でもお湯だけは良かったので、ここ以外でどこかのんびりと尾張温泉に浸かれる場所はないかと探していたときに見つけたのが、今回取り上げる「湯元別館」であります。尾張温泉には日帰り専門の「東海センター」や棟続きの「観光ホテル」の他、料理旅館の「湯元館」、そしてその別館である「湯元別館」があるのです。尾張温泉は東海ラジオの子会社(東放企画)が全面的に運営管理しており、「湯元別館」も「東海センター」も経営母体は同じかと思われますが、昭和風情という大雑把な括り以外は全く異なる佇まいなので、その対照的なコントラストが面白く思いました。

 
近鉄蟹江の駅前には尾張温泉の歓迎ゲートが立てられています。でもここから温泉までは2km弱離れているんですけどね。

 
「湯元別館」はかなり地味な外観で、注意しないと民家と勘違いして通り過ぎてしまいそう。
まさかここで日帰り入浴できるとは想像できません。事前の調査では日帰り入浴開始時間は午前11時かららしいので、実際に11時に訪れてみると門は固く閉ざされており、電話で確認してみたら「12時からですけど」とのこと。仕方ないので、近所のピアゴ(スーパーマーケット。旧ユニー)でコーヒーとパンを口にしながら時間を潰して待つはめに…。

 
12時きっかりに伺ったら、門扉が開けられていたので一安心。庭園のような敷地内に受付・食堂・客室など全てが別戸の離れになって分散しているのですが、どの建物が受付なのかわからず、内部から声が漏れ聞こえる左手の建物へ「ごめんください」と声をかけてみたら、すぐに男性の方が現れて、お風呂へと案内してくださいました。

 
幾棟か建ち並ぶ平屋のちいさな建物のうち、一番右奥が浴場棟でした。勝手口のような小さく狭い入口を上がると、目の前に女湯の暖簾が下がっており、廊下の奥に男湯を確認。下足棚を見る限りでは、まだ誰も中へ入っていないようです。やった! 一番風呂だぁ。

 
浴室は男女別の内湯が一室ずつ。人工芝が敷かれた脱衣室は全体的に古びた作りですが、よく手入れされており、気持ち良く利用できました。浴室内にはボディーソープやシャンプー類などの備え付けが無いのですが、脱衣室内には専用台に置かれた石鹸が2つほどあり、利用者はおそらくこれを使っても良いのでしょう。

 
渋い装いの浴室には、窓際に据えられた岩風呂風の浴槽がひとつ。4人サイズといったところでしょうか。


洗い場のカランは、古典的な蛇口(湯と水のセット)が3基と、シャワー付き混合栓が2基、それぞれ互い違いに設置されています。このうち、古典的な蛇口から出てくるお湯は源泉なのですが、吐水の勢いが弱く、しかも配管が長いのか、かなりぬるめでした。一方シャワーの方のお湯は真湯なのですが、水道水が悪いのか泥臭さが気になってしまいました。

 
湯口は浴槽の底の左右両側にあり、塩ビVP管の先から泡と共に手のくわえられていない源泉が投入されていました。湯口が浴槽の中なので源泉投入量がわかりづらいのかと思いきや…

 
オーバーフロー量を見れば一目瞭然。浴槽の容量のわりには源泉投入量が多いようでして、常時ふんだんに縁から流れ出て川を形成しており、私が浴槽に入ると排水が追い付かずに床が洪水状態になるほど、ザバーっと音を立てながら勢いよく大量に溢れ出ていきました。加水加温循環消毒が一切ない完全掛け流しなんですから天晴れです。


常時オーバーフローしている床の流路はお湯の色によって茶色に染まっていました。

 
「東海センター」と同じ源泉を引いているはずなのですが、めちゃくちゃデカい浴槽のあちらと違って、こじんまりとした湯船へたくさんのお湯が注がれているこちらの方が、お湯の新鮮さや質感がはっきりと伝わってくるような気がします。

見た目は薄い茶褐色で透明、ほろ苦みと弱い金気味、弱いモール臭と弱い金気臭に鉱物油臭とアンモニア臭が感じられ、これらの知覚がひと段落自分の感覚神経を刺激した後から、弱めのタマゴ臭と味が時間差で遅れて伝わってきました(タマゴ的な匂いと味は蛇口で特に明瞭)。総じて薄い知覚ですが、薄いながらもはっきりとした主張を有する個性的なお湯です。そして特筆すべきはしっかり気泡が付着すること。加水されていないのでちょっと熱めの湯加減なのですが、その熱さを身を慣らしながらお湯にじっくり浸かっていると、肌全体の気泡がビッシリと付着するのです。モール的なお湯ですし、炭酸水素イオンも陰イオンの主役になっていますから、この気泡は炭酸ガスなのかもしれませんが、でも熱いお湯は炭酸ガスの飽和量が減ってしまって大気中に逃げてしまうので、炭酸ガスではなく窒素などその他のガスである可能性もあります。ま、いずれにせよ気泡が付着して全身がアワアワになることには変わらず、その泡のおかげでとってもツルツススベスベ爽快な浴感が楽しめました。

「東海センター」よりも(私の実感として)鮮度の良いお湯が堪能できるにもかかわらず、さすがにここで入浴できることを知っている人が少ないからか、あるいはわざわざ金を払って小さいお風呂に入ろうと思わないためか、訪問時(年末の昼12時)は一番風呂であったのみならず、1時間近くひたすら独占できてしまいました。そして独占できた喜びとお湯の良さにどっぷり嵌り、すっかりこのお風呂が気に入ってしまいました。
ここは永和温泉と並んで、愛知県屈指の名湯ではないでしょうか。お湯のみならず宿泊の評価も高いようですので、次回は宿泊で利用してみたいものです。

尾張温泉1号泉・2号泉・4号泉(混合泉)
単純温泉 50.3℃ pH不明 溶存物質0.6204g/kg 成分総計0.6239g/kg
Na:156mg(91.75mval%),
Cl:100mg(37.20mval%), HCO3:285mg(61.62mval%)

近鉄名古屋線・近鉄蟹江駅より徒歩20分(1.7km)
愛知県海部郡蟹江町源氏3-59  地図
0567-96-2552

日帰り入浴時間:要問い合わせ
(日によって変動するみたいです。私の訪問時は12:00~でした。20:00までという情報あり)
500円
備品類なし(室内の石鹸は使っていいのかしら?)

私の好み:★★★

コメント

  1. しーさん より:

    びっくりです
    こんばんは。

    永和温泉と尾張温泉とも名古屋の隣町。
    こんなところに掛け流し温泉があるなんて驚きです。

    名古屋近郊に行った際に「温泉に入りたい」と思っても食指が動く温泉がなかったので大変有難い情報です(^.^)

    ありがとうございます!

    機会があればぜひ入湯したいです。

  2. K-I より:

    Unknown
    しーさんさん
    こんばんは。
    私も数年前まで「名古屋付近に掛け流しの温泉は無い」と思い込んでいたのですが、調べてみたら愛知・三重県境には、永和・尾張(蟹江)・長島(三重県)など、モール系の湧出量豊富な掛け流しの温泉が点在していることを知り、いままでの自分の無知を悔みました。鉄道でのアクセスも便利な立地ですし、東名阪や伊勢湾岸、あるいは名四国道を車で走っている時にも気軽に寄れるので、名古屋方面へ行く場合は、なるべくこれらの温泉へ立ち寄るようにしています。

  3. 信長 より:

    これが答え
    蟹江東海センターの湯は地下水で薄めておるぞよ多分7割が地下水だと感じた、他方の湯本別館は本物の温泉で最高ランクである、12時~8時PM・・唯2名しか入れないこれ以上例えば3・4名が入ると身動きができずとなる!湯は最高だが脱衣場や施設は最低ランクであり床は何時抜けてもおかしくないほどの状態、他では男性経営者40前後は愛想がない男だぞよ・・結論=まあよほどの温泉通以外一度往くと二回目は来ないであろう、如何せん休憩する場所もない2客ある椅子も壊れておるし・・前にお湯以外全て直せというたら採算が摂れないので現状維持だそうである、要するに此の温泉は此処の住人の家温泉ということでこずかい稼ぎに他人に500円で入れておるだけ。

  4. K-I より:

    Unknown
    信長殿 
    貴殿の「答え」聢と賜り候。湯は最高だが床は云々との概評、至極御尤もに相成り候。されども愚生は奇人なりて品隲に偏向あり、猶且判官贔屓の心情なれば、痘痕も靨、蒼然とした茅屋の湯もまた一興、風流と存じ奉り候。蓋し余は貴殿が仰せられし余程の温泉通、否、余程の戯者なり。貴殿に上奏せし愚見によりて、酔狂者が時鳥の如く斬られんことをひたすら冀うばかりなり。恐惶謹言。

  5. 信長 より:

    この本物湯・・
    は素晴らしい!これと同じ湯が出る土地が欲しいです130坪ぐらいがよい、この別館全部を買い取り屋敷を造りたい、ワシの先祖は蟹江城の家老をしていた城主が滝川一益である滝川は織田家の親戚、私が信長の直系血族子供である、450年も前には温泉の存在はなかつた発見できずであろうが仮に見つかれば武力で織田家が盗るであろうのう、侘びさび温泉は心が休まる、冗談なしで本物の直系血族子孫、現在の戦国人気で講演もするが多くの民が驚愕される・・尚、スケーター織田は偽物馬の骨である、血族にはあのようなエテ公は居らん。

  6. 障子にメアリー より:

    Unknown
    はじめまして
    先日、親類が2泊するために紹介しました。
    しかし「部屋がタバコくさく気分が悪くなった」「男湯のお風呂は水道がなく温度調節ができず熱くて入ることができなかった」「内湯は鍵が閉まっていて利用できなかった」などで、急遽わが家に戻ってきました。
    急なキャンセルなので私が前払金(全額)は戻らないと思いますが、親類からも数千円お金を取るのはどうかと思いました。宿側へ「料金は前払いしてあるのに、お金を払ったのですが・・・」と電話したのですが、「確かにその通りです」との返事で、もう言う気がなくなりました。
    お湯が源泉かけ流しでいいのに、勿体ないと思います。

  7. K-I@広東省 より:

    Unknown
    障子にメアリーさん、はじめまして。
    この度は大変残念な思いをなさったようで、お気の毒です。前払金に関する対応はちょっと不可解ですね。お部屋が綺麗だったら、トラブルは起きなかったのに(涙)。私は日帰り利用でしたので、その辺りの事情はわかりませんでしたが、中京地区では珍しいかけ流しの良い温泉なので、今回の宿側の対応は、ちょっと勿体ない気がしました。

  8. 障子にメアリー より:

    ありがとうございます
    K-Ⅰ@広東省さん
    コメントありがとうございました。
    私の文章がおかしくて申し訳ありません。
    親類が宿泊する前に全額、宿へは支払を済ませました。
    もし手違いで親類から受け取っても、後で「全額領収済なのでお返しします。」などあれば良かったのですが・・・
    わが家の事情で親類を泊められなかったので、近くに良い温泉の出る評判の良い宿があると知り、紹介しました。
    口コミも良かったので安心していたのですが・・・
    いい温泉なら建物の修繕とサービスを良くしたら、宿泊客も増えると思います。残念です。
    コメントを頂き、今までも怒りが収まりました。ありがとうございました。

  9. K-I より:

    Unknown
    >障子にメアリーさん
    もし私が当事者だったら怒鳴りこんでいるレベルの話です(汗)。だって料金の二重取りじゃありませんか。たとえ数百円でも数千円でもダメなものはダメ。せっかくコメントをお寄せくださったのに大変失礼で申し訳ないのですが、こんな瑣末でどーしょもない泡沫ブログで嘆息する時間があるのならば、きちんと宿側と交渉すべきです。双方に何らかの誤解はないのでしょうか。責任者と連絡して、ことの流れを整理し、きちんとした対応をとってもらうべきです。「もう言う気がなくなりました」だなんて白旗を上げるのでしたら、どうしてこの場でお嘆きになったんですか。
    そもそも、宿側の言い分も聞かないと、私としても事情の良し悪しを判断できませんし、今回の出来事に対し、第三者である私が下手に断罪したり、あるいはマイナス的なコメントを掲載し続けることは、欠席裁判を行っているようなもので、アンフェアかと思います。従いまして、これ以上愚見を申し上げるのは控えさせていただきます。
    きちんと話し合いを重ねてこそ、お互いの事情が理解でき、問題の解決へと繋がってゆくはずです。障子にメアリーさんのご決断と、お宿側の誠意ある対応、両方に期待しております。

  10. 障子にメアリー より:

    Unknown
    私は宿から遠くない所に住んでいるので、これ以上揉めたくないという気持ちもあります。 親類の一人は普段杖をついているのですが、前払いした時にそのことを話したのに何も言わず、宿側は親類に「足の悪い方は事前にお断りしている」と話したり、くい違いが多いです。
    わが家は病人がいて夜、世話で物音を立てて迷惑かと思い、宿を探したのですが、最初から家で泊まってもらえば良かったと思います。
    投稿したのは、誰かに聞いてほしかったからです。

  11. K-I より:

    Unknown
    障子にメアリーさん、コメントありがとうございます。落胆なさっているにもかかわらず、私も怒りを覚えてしまい、ついつい返り討ちをしてしまったような感じになり、申し訳ありません。
    お話を窺えば窺うほど、お金の問題を含め、諸々の対応について、宿側は障子にメアリーさんに対してきちんと説明を尽くすべきだという想いを強くしました。その一方で、客としても宿選びを慎重にしなければならないと、自戒の意味も含め、改めて実感しました。ご親類の方はお体がちょっと不自由とのことで、どうしても一定以上の設備が求められますし(ここに限らず、お湯は良いけどバリアフリーが全くできていないという宿だって、世の中にはいくらでもありますからね。小さい宿はどうしてもマンパワーが足りませんから)、今はネットなどで口コミなどいろんな情報をたくさん確認できますから、もしその地方でその宿しか無いならともかく、他にあるのならば事前によく検討し、宿側が提供できるサービスと、こちらが求めるサービスが合致するか、きちんと納得することが必要なのだろうと、一連のお話を窺っていて思い知らされました。
    ネットの書き込みって、当事者の知らないところで、いつの間にか驚くような影響をもたらしていることがあるので、ブログを管理している私としましては、とりとめのない愚見を述べるとともに、なるべくバランスがとれるような記述を致しました。失礼な発言も多々あったかと存じますが、ご賢察の上、何卒ご理解くださいますようお願い申し上げます。

  12. たっつー より:

    リピーターです。
    名古屋から近く、我が家からは車で15分もかからないほどの
    穴場な温泉宿。
    リピーターとしてはあまり紹介されてしまうと
    予約が取りづらくなるため、迷惑なのですが・・(笑)。

    熱い風呂が大好きな高校生の息子と二人、
    妻さえも連れて行かず、
    二人だけで行く「秘湯」(笑)への小旅行は
    日頃の仕事と部活の忙しさを忘れる密かな楽しみとなってます。

    でもいろんなところへ行かれるのですね。

    それもまた、楽しそうです。

  13. K-I より:

    Unknown
    たっつーさん、こんばんは。
    ご自宅からご近所で、掛け流しの温泉に浸かれる非日常世界があるとは、とても羨ましい限りです。名古屋から近いのに、こんな秘湯然とした宿があるとは、奇跡かもしれませんね。

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