平治温泉 逢友荘

群馬県

※残念ながら2015年に廃業し、建物も解体され更地になってしまったようです。

群馬県の平治温泉と言えば、農機具の納屋を思わせる掘っ立ての湯小屋が印象的な、私を含む一部の温泉ファンを魅了してやまない名湯ですが、このお湯を引いているお宿が吾妻川の対岸あるので、正月休みの某日に立ち寄り入浴をお願いしてみることにしました。


噂には聞いていましたが、とってもわかりにくい場所です。駅から大して離れておらず、しかも駅に入線する列車の窓からも建物の姿や看板を確認できるので、難なく辿りつけると高をくくっていたのですが、ちょっと迷ってしまいました。唯一、路地の途中に立っているこの小さな看板が目印。

 
とても宿へのアプローチとは思えない集落の狭隘な路地を進んだ先に、突如として屋根の上に掲げられた「逢友荘」の看板が目に入ってきました。玄関先ではご主人がお仕事中。入浴を乞うと、どうぞどうぞと快く迎え入れてくださいました。玄関脇には「嬬恋すっぽん養殖場」の札もさがっており、そのすっぽんはお宿の名物になっているようです。


横に長い建物の左端が玄関や帳場。そこから伸びる廊下をまっすぐ進んだ突き当たりが浴室です。つまり建物の端から端まで移動するわけですね。お風呂は男女別の内湯が一室ずつ。脱衣室はいかにも民宿らしくこじんまりしており、必要最低限のものしかありませんが、小さい温風機が用意されていたのは嬉しい配慮でした。

 
浴室内です。こちらも特に飾り気のないシンプルな造りで、右に浴槽、左に洗い場が配置されています。洗い場はシャワー付き混合栓が1基と、湯と水の蛇口が1セット設けられていました。

 
浴槽は長方形の3~4人サイズで、縁はモルタル、槽内はタイル貼り。縁からはザブザブ音を立てながらお湯が大量にオーバーフローしており、その部分の床が濃い赤茶色に染まっています。


獅子が塩ビの管を銜えた湯口から、お湯が絶え間なくドバドバ注がれています。加水加温循環消毒なしの完全掛け流し。大量投入された源泉が惜しげもなく浴槽から溢れ出てゆく様は、見ているだけでも豪快な気分に浸れ、入浴への期待が高まります。

 
さっそく全身入浴してみると、源泉地にある湯小屋ほどではありませんが、全身に気泡が付着し、数分で泡まみれになりました。湯加減は40℃以下、訪問時は多分38℃くらいだったかと思います。
ごく薄い橙色透明、口に含むとはっきりした金気味(鉄味ではない。舌や喉の奥にえぐみが残る金気)に石膏味とごく薄い塩味や苦みが感じられ、金気臭と土気の匂いが混じって湯面から漂っていました。お湯自体はキシキシと引っかかる浴感なのですが、全身を覆う泡付きのおかげでスベスベ感の方が勝り、しかもぬるめの湯加減なので、じっくり長湯することができました。心地よい浴感+アワアワ+ぬる湯+大量掛け流し、という温泉好きにはたまらない要素が揃っているので、長湯&まどろみは必至でしょう。かくいう私もお風呂でウトウトしちゃいました。そして湯上りもさっぱり爽快。夏に入浴したらかなり気持ち良いかと思います。
源泉からお湯を数百メートルも引いているにもかかわらず、その隔たりを感じさせない泡付きは素晴らしいですね。分析表によれば陰イオンでは塩素イオン・硫酸イオン・炭酸水素イオンがミリバル%換算でそれぞれ仲良く約3割の量をシェアしており、また陽イオンでもナトリウムやカルシウムの他、マグネシウムもあともう少しで泉質名に載せることができる19.78mval%という数値を有しているので、数値が示す通り、それぞれのイオンにより現れる温泉の特徴が盛り沢山で感じられる、とっても欲張りなお湯でした。

笹の湯
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩温泉 41.4℃ pH7.3 286L/min(掘削自噴) 溶存物質1.41g/kg 成分総計1.43g/kg
Na:236mg(54.37mval%), Mg:45.4mg(19.78mval%), Ca:78.2mg(20.67mval%),
Cl:239mg(36.65mval%), SO4:286mg(32.40mval%), HCO3:344mg(30.61mval%),
遊離CO2:25.3mg,

JR吾妻線・万座鹿沢口駅より徒歩5分(でも迷うこと必至なので数分余計に考えておくべき)
群馬県吾妻郡嬬恋村三原145-2  地図
0279-97-3586
ホームページ

日帰り入浴時間不明
300円
シャンプー類あり、他の備品類なし

私の好み:★★★

コメント

  1. kama より:

    Unknown
    2015年夏に廃業となりました・・・。
    近いうちに近くまで行くので確認して来ます。

  2. K-I より:

    Unknown
    >kamaさん
    ええっ!! 驚きました。残念です。kamaさんのコメントを頂戴してから、群馬県の情報に詳しい温泉ファンのブログをいくつか拝見したところ、やはりその件について触れていらっしゃる方がおり、その事実を受け入れざるを得ませんでした。
    ということは、あの源泉に入れる施設は、あの鄙びた湯小屋だけということになりそうですね。
    温泉施設の休廃業が相次いでいますね。今年も何度胸を痛めたことか…。情報、ありがとうございました。

  3. kama より:

    Unknown
    平成27年の3月末で終了との事ですね。
    随分前に閉館の話しは聞いていたのですが、はっきりしておりませんでした。m(__)m

    http://www.tsumagoi-kankou.jp/stay/jr_syuhen/member.html

    このページにも出てました。

  4. K-I より:

    Unknown
    kamaさん
    観光協会のサイトでもアナウンスされていはとは…。
    閉館してもう半年以上経っているんですね。本当に残念です。
    情報、ありがとうございます。

  5. kama より:

    Unknown
    11/3にあわよくば・・・と思って現地に行って来ました。

    残念な事に更地になってて、跡形も無くなってて悲しい気持ちになりました。。。

  6. K-I@仙台 より:

    Unknown
    >kamaさん
    閉館どころか、すでに更地になってしまっていたとは…。その光景を目にして愕然となさったかと思います。現地で受けた悲しき衝撃、お察しします。
    わざわざご報告くださりありがとうございました。

  7. Unknown より:

    Unknown
    こんにちわ。本当に残念です。
    この事実を、偶然に今さっき知りました。
    昨年の夏に、今年も行こうと思ってサイトを見たら、
    逢友荘が無くなってて、変だなぁと思っていましたが、、、
    とても良い思い出を作れたので感謝していますよ。

  8. K-I@台湾 より:

    Unknown
    休業ではなく、廃業の上、完全解体されてしまったそうですから、本当に残念ですね。吾妻エリアの代表的な草津や万座といった個性の強い温泉とは対照的な、ここのなめらかでアワアワなお湯は体に優しいので、心身が穏やかに癒されました。私もあの記憶を大切にしていきたいと思います。コメントありがとうございます。

  9. ぬる湯好き より:

    Unknown
    こんばんわ。突然の書き込みに、返信を頂いて恐縮です。
    私は万座じゅらくが大好きで、毎年行くんですが、
    逢友荘で2泊、じゅらくで4泊が定番なんですよ。
    先程まで、こちらのブログを色々見て回りましたが、
    49度のお湯に、歯を食いしばって耐えた記事など、
    とても面白おかしく読ませて頂きました^^。
    私も神奈川在住、婚期を逃した一人者ですので、
    休みばかり取っては一人旅へと出掛けております。
    先日も乗鞍高原温泉の硫黄臭に癒されて来ました。
    以後、こちらのブログを読ませて頂きたく思います。
    ちなみに私は、38度~40度のお湯が大好きです!

  10. K-I@台湾 より:

    Unknown
    ぬる湯好きさん、こんばんは。
    万座のじゅらくは良いですよね。あの濃厚な硫黄泉と眺めの良い露天は最高ですね。
    私もぬる湯に長く浸かっているのが好きです。関東界隈ですと、山梨県のぬる湯には心が惹かれます。
    神奈川在住・ぬる湯好き・そして婚期を逃したという共通項を持っているとは、なにかのご縁でしょうか(笑)。独り身は時間も可処分所得も余裕がありますから、自由に旅ができて良いですよね(半ばヤケですけど)。至らぬ内容ばかりのブログですが、今後とも何卒宜しくお願い致します。

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