今回取り上げるのは新潟県の湯沢温泉。といっても越後湯沢ではなく下越の関川村にある湯沢温泉です。あれ?この文言は以前もこのブログの記事で使ったことあるなぁ…。今回の記事では、前回取り上げた上関共同浴場のある上関集落から歩いて湯沢温泉へ向かう様子を順に追って行きながら、ささやかな旅行記風な体で記事を綴ってまいります。
越後下関駅から上関共同浴場の脇を通り、荒川に架かる橋で対岸へ渡ります。駅からここまで徒歩で15分くらい。欄干に雪がかぶさっているため川面が見えず、対岸の雪景色と同化しちゃっているため、この画像が橋の上で撮ったものであることはわかりにくいですね。
橋の下流側から右岸を眺めると、これから向かう湯沢の集落が一望できます。
橋を渡りきって左折すると湯沢温泉、右折すると高瀬温泉です。
実は私が冬にこの橋を歩いて渡るのは、これで2度目なんですよ。
付近のバス停は、待合室としてホームセンターで扱っているようなスチール物置が置かれていました。ちょっとユニークですが、合理的と言えば合理的ですね。なお土曜と休日は全便運休ですので、観光には使いづらいなぁ。
以前取り上げた湯沢温泉共同浴場を通過。
看板に従ってすぐ右のわき道へそれます。
共同浴場前の分岐をそれてから1分程度で温泉街に到着。駅からは徒歩30分程度でしょうか。この道沿いに旅館などが5軒ほどが肩を寄せるように固まって並んでいます。歓楽要素はおろか、商店すら1~2軒程度しかなく、温泉街と言うより単なる小さな集落と表現したくなる佇まい。
バス停には立派な屋根が設置されていますが、本数は少ない上、土曜休日は全面運休。
バス停に隣接している松岳寺の境内には昨年(2011年)に建立されたばかりの「関鉄之介就縛の碑」が雪に埋もれて、上半分だけをのぞかせていました。関鉄之介といえば、桜田門外の変で井伊直弼を襲撃した首謀者ですが、その後逃亡した彼が追手に捕まったのがこの湯沢温泉なんですね。幕末の歴史の一ページがこんなところにあっただなんて!
温泉街内の老人福祉施設「荒川いこいの家」にも温泉浴室があり、ここでも立ち寄り入浴可能。私はまだこちらを利用したことはありませんが、この日はパスし…
今回立ち寄り入浴でお邪魔したのは、温泉街の一番手前にある「角屋旅館」さんです。
看板が出ていなければ民家と見まがうような佇まい。格子の窓が立派な純和風の建物ですが、窓にはレースのカーテンがかかっており、もしかしたらお休みなのかもしれないと、玉砕覚悟で訪って日帰り入浴を乞うてみると、中から現れた女将さんが笑顔で快く受け入れてくださいました。
とっても整然とした館内の廊下。外観でも申し上げましたが、見方によっては民家のようでもあります。
途中にある洗面台にはフェイスタオルが積んであるのですが、女将さん曰く「タオルは自由に使ってくださいね」とのこと。300円しか支払っていないのにとっても恐縮しちゃいますが、「ご自分の濡れたタオルを持ち歩いて旅するのは不便でしょう」と有難い心遣いをしてくださったので、ご厚意に甘えて1枚使わせていただきました。
洗面所の隣、玄関からまっすぐ伸びる廊下の奥が浴室です。一室のみのため、貸切での利用です。内側から鍵がかけられますから、ロッカーは不要ですね。
やや古めながらも清潔でよくお手入れされた脱衣所。中小規模旅館の一般的な浴室とほぼ同じような広さが確保されていますが、貸切で使えたので、ちょっとした贅沢感が味わえました。
館内に掲示された案内には「加水加温循環消毒一切無し」という旨が記されていました。入浴前から期待に胸が膨らみます。
浴室は内湯の湯船がひとつ。床は石板貼りで、側面は煉瓦色のタイル貼り。入室すると湯気とともに金気の匂いがふんわり香ってきます。
洗い場にはシャワー付き混合栓が一つと、スパウトのみの水栓が2基。水栓金具は硫化して黒く変色しています。
浴槽は3人サイズで、φ75の塩ビの湯口からふんだんにお湯が注ぎこまれており、そのお湯は浴槽の端から常時オーバーフローながら床を赤茶色に染めていました。浴槽の容量に対して源泉投入量が多く、私が湯船に入ると豪快にザバーっと溢れだし、排水が追い付かずに洪水状態になってしまったほどです。
お湯は無色透明、洗い場に着色した色から想像できるように金気の匂いや味がはっきり感じ取れますが、この他にも硫黄らしいタマゴ的な匂いや味もしっかり伝わってきました。知覚面における金気とタマゴ感の混在は共同浴場とほぼ同じです。ま、同じ源泉だから当然といえば当然なのかも。
しかしながら、同じ源泉でありながら全く特徴が現れるとは限らないのが温泉の面白いところで、共同浴場で見られる湯の華は白いものだったのに対し、こちらのお風呂で浮遊していた湯の華は真逆の黒い羽根状のものでした。洗面器で掬うだけでこれだけ採れちゃうほど、湯船の中ではけっこうな数の湯の華がユラユラしていました。
弱いツルスベの浴感で、火照りもしなければぬるくもない、実に絶妙な湯加減です。はっきりとした個性の主張がみられるにもかかわらず、決してその個性が入浴中の体を刺激せず、むしろ優しくフンワリと包みつつ、穏やかに全身を温めてくれました。単純温泉だからといって侮ってはいけません。貸切であるのをいいことに、じっくりゆっくりこのお湯を独占して堪能させていただきましたが、関鉄之介の史跡といい良質なお湯といい、湯沢温泉という場所は無名ながらも山椒の小粒ような存在感を放っているようです。旅館の女将さんのお心遣いにも感謝です。おかげさまで素晴らしいお湯を楽しませていただきました。
1号井・2号井・3号井源泉の混合泉
単純温泉 47.5℃ pH7.5 湧出量測定不能(動力揚湯) 溶存物質969.2mg/kg 成分総計984.7mg/kg
Na:262.3mg(82.50mval%),
Cl:204.2mg(42.60mval%), SO4:286.2mg(44.08mval%),
JR米坂線・越後下関駅より徒歩30分(2.3km)
新潟県岩船郡関川村大字湯沢708 地図
0254-64-2440
日帰り入浴時間不明
300円
シャンプー類あり
私の好み:★★★
コメント