温泉が好きな方でしたらお馴染みの有名旅館、鉛温泉「藤三旅館」で一泊してきました。こちらの旅館は本格的な旅館サービスが受けられる旅館部と、とてもリーズナブルな湯治部(旧自炊部)の二部に分かれており、爪の先で火を灯すわびしい生活を送っている私にとって、旅館部のお値段は清水の舞台までは高くないにせよ、渋谷警察前の歩道橋の上から新橋駅行の都バスに飛び乗るぐらいのちょっとした勇気が必要なのですが(自分でも意味のわからない喩えになってしまいました、ゴメンナサイ)、公式サイトを調べたところ、普段なら1.5~1.7万円はする旅館部木造本館2or3階のお部屋を、ほぼ半額の1泊2食付8,500円で宿泊できるプランを見つけたので、こんな好機は滅多にないと即時に予約し、三陸方面へ所用があった2012年5月某日、わざわざ三陸から花巻まで岩手県を横断して、この宿でお世話になったのでした。
以前は立ち寄り入浴で名物「白猿の湯」を利用したことがあるのですが、今回は宿泊して利用できるお風呂をすべて巡ってみました。既に多くの温泉ファンをはじめ、数々の文豪によっても表現されてきたこの温泉を、私如きがあれこれ申し上げるのはおこがましいので、蛇足な文章とならないよう、簡潔にまとめてゆく所存です。でも内容が膨らみそうなので、その1(今回)とその2(次回)の2回に分けて投稿します。
●館内やお部屋の様子、そしてお食事
ロビーや階段に敷かれている紅色の絨毯が、老舗旅館らしい重みのあるラグジュアリ感を醸し出しています。宿帳へ記入している間に、男性スタッフが荷物を部屋へと運んでくれました。
玄関近くにあるお座敷には、木を刳りぬいてつくった火鉢が真ん中に置かれていました。
階段や廊下も赤い絨毯が敷かれています。女中さんがお部屋まで案内してくれますが、赤絨毯の上を歩いていると、それだけで気分が高揚しますね。
今回案内されたのお部屋は3階の川に面した7畳の和室です。本館の館内は改修を重ねているようで、外観のような渋く重みのある感じではなく、いかにも和風旅館らしい綺麗で快適なお部屋でした。
テレビ・冷蔵庫・金庫・ポットなど基本的な備品類は一式揃っています。
窓の外のには豊沢川が流れ、ちょっと遠くに目を遣ると白い滝が落ちているのも見えます。
お食事は部屋出しです。
夕食は・・・お茶を食べて育った豚のしゃぶしゃぶ・刺身・鰆の照り焼き・ごま豆腐・こごみといちじくの和え物・温泉卵を添えたサーモンのマリネ(バジルソース掛け)などなど、これでもかというほど豪華絢爛で、何を口にしても頬が落ちっ放し。8500円なのにこんなにいただいちゃって良いのかしらと申し訳なくなっちゃうほどの品数とボリュームでした。
こちらは朝食。ベーコンエッグ(ベーコンが厚切りで好食感)・ポテトサラダとハムの他、焼き魚・切り干し大根・昆布の煮しめなど、和洋折衷な献立となっており、ワンパターンになりがちな旅館の朝食とは似て非なる個性的な美味しい食事をいただけました。
さて、腹が満たされたら、次はお風呂だ!
お風呂の数が多いので、当ブログでは上述のように2回に分けて取り上げます。本館1階帳場から左右に廊下が伸びており、右の方へ向かうと、この旅館の名物である「白猿の湯」や露天風呂「桂の湯」、そして湯治部の「河鹿の湯」が、左へ向かうと「白糸の湯」と「銀の湯」にそれぞれ行き着きますが、今回は左の廊下を進んで「白糸の湯」と「銀の湯」に入ってみましょう。「白猿の湯」、「桂の湯」、「河鹿の湯」は次回(その2)で。
●白糸の湯
帳場から左手に伸びる廊下を進んだ突き当たりが「白糸の湯」と「銀の湯」の入口です。いずれも一室ずつで男女別にはなっていないため、時間帯による男女入れ替え制が採られており、「白糸の湯」は15:00~翌朝6:00が男性専用時間、朝6:00~15:00が女性専用時間です。
夕食直後に利用したためか、他の利用客はおらず、ひたすら独占することができました。老舗旅館の矜持が伝わってくる、綺麗で整然とした脱衣所は、床が畳敷きなので足元がとっても快適です。また広々としているため、ストレスを感じることなく着替えることができました。
脱衣所内には一通りのアメニティ類が揃っていますが、T字カミソリやシャワーキャップは用意されていませんので、これらが必要な場合は帳場に申し出れば無料でいただけるそうです(ただし旅館部宿泊客のみ)。
浴室にはまるでプールのような大きな浴槽が据えられています。川に面して横長な造りになっており、大きな窓を開ければ半露天になるような構造となっていますが、この日は虫の侵入を防止するためか、窓は閉め切られていました。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が4基設置されており、1ブースずつにセパレートされているため、隣で他のお客さんが豪快にシャンプーしていたとしても気にならずに利用できるかと思います。なお水栓から出てくるお湯は源泉らしく、お湯からは微かにタマゴ的な味と匂い感じられました。
浴槽の隅にある湯口から注ぎ込まれるお湯はややぬるめなのですが、この湯口以外にも浴槽内部側面から熱めのお湯が投入されており、これによって広い浴槽の湯加減が全体的に均一になるよう図られていました。またこのような複数の湯口から注がれるお湯の総量はかなり多いのか、浴槽縁からふんだんにオーバーフローしていました。そのお湯は「桂の湯」源泉を単独使用したもので、無色透明でほぼ無味無臭、肌がスベスベするスッキリとした優しい浴感です。
窓を開けてみると、豊沢川の対岸には、浴場名の由来となっていると思しき白糸を垂らしたような一条の滝が落ちていました。
●銀(しろがね)の湯
翌朝二つの浴場の入口へ行ってみると、きちんと男女の暖簾が入れ替わっていました。暖簾に従い、今度は「銀の湯」へ入ってみましょう。お隣の「白糸の湯」と異なり、こちらは貸切利用もできるお風呂として設計されているためか、この旅館のお風呂の中では最も小さな造りとなっており、脱衣室もご覧のように民宿の浴室みたいなこじんまりとした感じですが、貴重品用ロッカーやアメニティ類が揃った洗面台、バリアフリーなトイレなど、諸々の設備が充実していました。
浴室もかわいらしく、方形の浴槽は3~4人サイズ。湯口は「白糸の湯」の湯口と同じ形状をしており、湯船のお湯の鮮度を維持するに十分な量のお湯が投入され、縁から洗い場へ向かってしっかりオーバーフローしています。また、洗い場にはシャワー付き混合栓が2基設けられています。
このお風呂で使われている源泉は「白糸の湯」と同じく「桂の湯」源泉を単独使用。お湯のフィーリングも「白糸の湯」と大差ないようでした。窓の外のすぐ傍では豊沢川の流れが迫っています。
・白糸の湯および銀の湯
桂の湯
アルカリ性単純温泉 59.1℃ pH8.5 溶存物質0.6223g/kg 成分総計0.6227g/kg
Na+:173.8mg(91.41mval%),
Cl-:56.4mg(20.08mval%), SO4-:215.0mg(56.56mval%), HCO3-:80.1mg(16.54mval%),
H2SiO3:61.5mg,
(成分に影響を与える項目、該当事項無し)
次回(その2)へつづく…
コメント
Unknown
KーIさん、こんにちは。
例のクーポンですね。
私もチェックしていましたが、なにぶん交通費の方まで手が回らず、泣く泣く諦めたのでした。(笑)
震災の前の年にここを訪れた時にあれこれ話した湯治出来ていたおじさんおばさん、皆さん三陸の漁師だって言っていたけれど、御無事だったかな~、って思い出しちゃいます。
私も今度行く時は、おもて玄関から出入りしたいものです。(笑)
Unknown
野暮天さん
こんにちは。半額なのに表玄関から正々堂々と入って、正規料金並みのお食事とお部屋で宿泊できたのでとっても助かりました。こういう機会でもないと、私のように年中オケラな輩はなかなか利用ないので、今後も他のお宿でも実施してくれないかなぁとひそかに期待しております。
>三陸の漁師
どうかご無事でありますよう。
震災から4回ほど三陸へ足を運んでおり、去年の5月と今年の5月で、大船渡・高田・気仙沼(鹿折)・志津川で、定点観測(撮影)しているのですが、各地とも去年と大して変わっていない場所が多く、復興が遅々として進んでいない現状に嘆息が出るばかりでした。
Unknown
こんばんは、この間の温泉旅で駒の湯山荘三代目との雑談で藤三旅館が日本秘湯の会の提灯を降ろした事を知りました(ビックリ)!!
三陸の...復興が進んでいない現状と!!現在気仙沼でがれき処理用の処理場が建設されているようです、稼動にはまだ時間が掛かりそうですが!
群馬の温泉話ですが、漣温泉のぞみの湯の湯船が新しい物に成りましたよぉ!湯温は先日伺った時は38~39℃位でした
そうなんですよね
ぱとさん
こんばんは。のぞみの湯の湯舟が新しくなったんですか!? てことは、あの湯小屋にはまだ当分の間は入れそうですね。ご存じのような佇まいの湯屋ですから、いつか閉鎖されちゃうんじゃないかと心配していたのですが、杞憂に済んで安心しました。実は先日北毛地域に行っていたのですが、そのことは全く知らかなったので、思いっきりスルーしちゃいました。また今度行ってみたいと思います。情報、ありがとうございます。
>日本秘湯の会の提灯
藤三旅館は半年ほど前に退会したみたいですね。拙ブログで載せている玄関の写真には、いかにも秘湯の会のような提灯が写っていますが、似て非なるものです(新日本百名湯って書いてありました)。
加盟旅館のスタンプを集めている方にとって、こちらのお宿の退会は残念でしょうね(正直なところ、私は「秘湯を守る会」にあんまり興味が無いので、特に気になりませんでしたが…)。
秘湯の会は、母体である朝日旅行会(現朝日旅行)の経営が左前になってJTBに呑まれちゃってから、体質が本格的に変わっちゃったみたいですね。会の設立当初は非常に意味のある組織だったかと思いますが、今となっては旅行業界もさることながら、客も旅館側も、社会全体が大きく変化しているわけですから、果たして会を持続させてゆく意義があるのかどうか…。現行のスタンプをクレジット機能を付帯させたポイントカード制に切り替えようとする動きも水面下ではあるようですが、オンライン前提のそんな制度を導入しちゃったら、秘湯が秘湯じゃなくなるわけで…。スイマセン、酔っているので余計なことを書いちゃったかも