鳴子から川渡にかけての鳴子一帯の温泉は、大雑把に言えば鳴子カルデラを中心にしながら江合川に沿って各温泉地が分布しているのであり、私はいままで、川渡から東側の岩出山方面へ外れてしまうと温泉は湧かないものという固定概念を抱いておりました。それゆえ、これまでは大崎平野で温泉を探そうと発想することがなかったのですが、地表面近くの地形云々とは関係なく、地下深くまでボーリングしちゃえば日本国内でしたら大抵の場所で温泉が湧いちゃうわけでして、今回取り上げる旧三本木町(現大崎市)の「豆坂温泉 三峰荘」の存在を初めて知ったときには、大崎平野にも掛け流しの温泉があるのか!?と半信半疑でしたが、この温泉が650mのボーリングによって揚湯されていることがわかると、自分の固定概念という呪縛がとても愚かしく、くだらない思い込みと浅学由来の薄っぺらい知識が自分の行動範囲を狭めているのだ、と猛省するに至りました。
ま、そんな前置きはとにかく、「豆坂温泉三峰荘」はだだっ広い水田が広がる大崎平野の真ん中に位置しており、すぐ西側を東北道が、また東側を国道4号が南北に貫いていて、三本木や古川の中心部からもアクセスしやすい便利な立地です。旅館を思わせる平屋の和風建築には個室(和室)も用意されているそうですが、料金表には宿泊に関する項目が見当たらないことから、おそらく日帰り入浴専門の施設かと思われます。
駐車場の片隅に源泉関係とおぼしき設備を発見。画像右(下)は館内に掲示されている温泉に関する説明なのですが、これによると地下650mから汲み上げた源泉は、炭酸の発散を防ぐために圧力タンクへ通した上で、そのタンクから直接浴槽へと給湯していると書かれています。ということは画像中央に移っている円筒形の物体が圧力タンクなのかもしれませんね(躯体には源泉タンクと書かれています)。
旅館あるいは和風レストランを思わせるエントランスでは、スタッフが丁寧に挨拶しながら出迎えてくれました。100円コインリターン式の下足箱に靴をおさめ(鍵は退館時まで自分で管理)、カウンター手前に置かれた券売機で料金を支払います。時間帯や曜日によって料金が異なりますから、よくわからなければスタッフに尋ねましょう。
受付カウンターの手前にはステージやカラオケ装置が設けられた休憩用の大広間があるのですが、残念ながらあまり広くないために、浴室入口前に広がる空間も第二の休憩スペースに転用されており、訪問時には湯上がりでグッタリしているたくさんのお客さんがここでトドのように横たわっていました。なお館内では食事を注文することができるのですが、噂によれば中華料理がおいしいそうんだです。
脱衣所は(男湯の場合は)入口を頂点にして裾を広げる扇のような形状になっており、左側の壁には一般的な棚が、右側には100円リターン式ロッカーがそれぞれ据え付けられていました(混雑のため撮影自粛)。
広々とした浴室は高い天井と大きな窓のおかげで開放感がしっかりと確保されています。室内にはみなさん大好きなサウナと水風呂があるほか、室内の左右に分かれて配置されている洗い場にはシャワー付き混合水栓が計7基設けられています。浴槽は一番奥の湯口を中心にした扇状に広がっており、右側のガラス窓からは日の光がたっぷり降り注がれています。湯船もかなり大きな造りとなっており、湯加減もちょうど良い塩梅であったため、明るく広いこの内湯で私は悠々と入浴させていただきました。
岩の湯口から源泉が落とされており、その流路は鮮やかで明るい色調の山吹色に染まっていました。また内湯のオーバーフローが流れる床は赤っぽく染まっていました。湯船のお湯は山吹色に笹濁りで、泉質しては単純泉ですが重炭酸土類泉のような匂いと味が感じられ、湯口では更にミシン油のような香りも嗅ぎ取ることができました。湯中ではツルスベの中に少々引っかかりが混ざるような浴感が得られます。加水加温循環消毒なしの完全掛け流しであり、浴槽縁からはお湯がしっかりとオーバーフローしていました。
浴室内で(個人的に)最もインパクトが強かったのは、入口すぐ左側にあるこの掛け湯でした。源泉がドボドボ注がれているこの掛け湯枡は、表面積が広い主浴槽のように熱を奪われることがないため、湧出温度にほぼ等しいかなり熱い状態がキープされており、しかも暗い黄土色に濁った源泉が泡立って白濁しているのです。匂いや味も湯船より明瞭なものが感じられました。単純泉という名前からは想像できない自己主張の強いお湯なんですね。
露天エリアは広々とした日本庭園風になっており、周囲は竹を模造した樹脂板によって目隠しされています。露天の中央には木の主浴槽があるほか、樽風呂が左右に分かれてひとつずつ、そしてその間に打たせ湯が設けられています。いずれも源泉を使用しているのですが、打たせ湯は浴室内の掛け湯同様に冷めること無く源泉が直接落とされてきますから、かなり熱いお湯に打たれることになり、それゆえ長い間お湯に打たれているお客さんはほとんどおらず、みなさんちょこっと打たれるものの、熱さにおののいてすぐ退散していました。なお、打たせ湯の飛沫が掛かる箇所は赤黒く染まっており、ここからも当温泉が単純泉という泉質名を超越したただならぬ個性を有していることがわかります。
樽風呂は左右で大きさが異なり、一人がジャストフィットする右側より、左側の樽の方がやや大きな造りでした。樽風呂は注がれたばかりのお湯を独り占めできるのが嬉しく、その湯口からはアブラ臭がはっきりと感じられました。
スタッフの対応が気持ちよく、館内設備は整っており、しかも完全掛け流しの個性的なお湯を内湯と露天の両方で存分に楽しめるという、実に素晴らしい日帰り温泉入浴施設でした。ネット上の情報によりますとこちらはいつも混雑しているそうですが、混んでしまうのは至極当然でしょうね。
豆坂温泉四季彩の湯
単純温泉 46.6℃ pH7.1 蒸発残留物669.7mg/kg 溶存物質862.3mg/kg
Na+:195.8mg(90.64mval%),
Cl-:196.9mg(56.40mval%), HCO3-:258.2mg(42.99mval%),
H2SiO3:181.3mg, CO2:38.5mg,
宮城県大崎市三本木新沼字中谷地屋敷4 地図
0229-52-3146
ホームページ
10:00~21:00
4時間券500円(日・祝は設定無し)、1日券800円、夜間券(午後5時以降)500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★
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