土湯温泉 サンスカイつちゆ こけし湯

福島県

※残念ながら2019年3月末を以て閉館しました。


土湯温泉は狭い谷あいに旅館が犇めき合っているため、ちょっと立ち寄りで入浴しようと思っても駐車場のスペースがなかなか確保できずに難渋することがしばしばですが、温泉街から離れた山中に位置する「サンスカイつちゆ」は広い駐車場が利用でき、かつ掛け流しのお湯が安い料金で楽しめるため、私は土湯峠を通過する際にこれまで何度かお世話になっています。こちらは福島県観光開発という第三セクターによって運営されている会議室や研修室などを擁するハコモノでして、その施設のひとつとして温泉浴室「こけし湯」が一般へ開放されているわけです。


玄関でスリッパに履き替え、券売機で料金を支払い、常設なのに臨時カウンターのような印象を受ける簡素な受付台にて券を差し出します。玄関ホールには土湯の名物「こけし」が展示されていますが、その様子は工芸品を陳列というよりホリマリン漬けの標本を並べているようであり、施設全体としても病院や学校にも似たような、いかにも公営らしい無機質で実用本位な雰囲気ですから、ここだけで捉えちゃうと「温泉もハズレなんじゃねぇの?」という疑念を抱いてしまうのですが、まぁまぁ早計な判断は措いておき、ここはとにかく先に進みましょう。

 
カップラーメンやお菓子類が販売されている受付をまわりこみ、暖簾を潜った先でスリッパを脱ぎ、別棟になっている浴室へと向かいます。貴重品は浴室入口前にたくさん並んでいるロッカーへ。


無味乾燥としたロビーまわりと異なり、浴室はぬくもりのあるウッディな雰囲気。室内には棚の他に洗面台が1台設置されています。でも棚は小さいためにほとんどのお客さんは備え付けのカゴに衣類や荷物を入れ、床や棚の上に置きっぱなしにしています。なおドライヤーは受付に申し出れば貸し出してくれます。

 
お風呂は内湯のみ。浴室に入った途端、ふんわりとした優しい硫黄臭に包まれます。ログハウスのような造りで天井は高く、むきだしの梁には立派な材木が用いられています。また窓からは梢越しに温泉街を見下ろせます。床はグレー単色の鉄平石のような石材敷きです。浴槽も本格的な総木造で、温かみのある外観と優しい肌触りが温泉風情を盛り上げてくれます。膝を曲げれば5人、伸ばせば3人サイズといったところでしょうか。

 
洗い場にはシャワー付き混合水栓が5基並んでいます。シャンプーやソープ類の備え付けはないので、利用の際は事前に用意を。

 
温泉街や混合源泉を供給する中継槽からここまではちょっと離れていますが、そんな隔たりをものともせず、湯口からは触れないほどアツアツの混合源泉が注がれており、そのままではさすがに入浴に不適であるため、水道のホースが湯口まで伸ばされ、水と一緒に浴槽へ落とされていました。加水されているものの温度計の針は47℃を指しており、入浴客はみな茹でダコのように全身を真っ赤にしていました。湯使いは加水こそあるものの加温循環消毒は無い放流式の湯使いであり、浴槽の縁から絶え間なくお湯がオーバーフローしています。


土湯温泉では多くの施設で混合源泉が用いられており、この風呂でも同様です。土湯のお湯は蒸気造成泉に湧出泉をブレンドさせた上で配湯しており、造成泉のボリュームが大きいために、硫黄感を伴うけれどもあっさりとしたいかにも造成泉らしい特徴を呈しています。具体的には無色澄明で湯中には消しゴムのカスのような白い湯の華がたくさん浮遊あるいは沈殿しており、火山の噴気孔から出るガスのような刺激を伴う硫化水素感と砂消しゴム感と足して2で割ったような硫黄の味と匂いが感じられます。造成泉の単純泉ですから浴感に特筆すべき個性はありませんが、熱いながらも肌への当たりはやさしく、湯上りはサラサラサッパリです。造成泉は邪道だと仰る温泉ファンも少なからずいらっしゃいますが、私個人としては、体への当たりがマイルドなのにしっかりと硫黄等の知覚を有している造成泉は意外と好みだったりします。

最近では11月下旬の平日昼間に利用させていただきましたが、そんな時間帯にもかかわらず、利用者は多く、常時3~4人、最大で7人が湯浴みしていました。半数以上はお風呂道具を詰め込んだバスケットを持参していましたから常連さんも多いのでしょうね。

2号泉・15号泉・新1号井・16号泉の混合
単純温泉 60.4℃ pH7.2 溶存物質412.8mg/kg 成分総計421.2mg/kg
Na+:73.8mg, Ca++:13.2mg,
Cl-:55.3mg, SO4–:95.4mg, HCO3-:51.9mg,
H2SiO3:88.5mg,
(cf. S2O3–:0.0mg, HS-:0.0mg, H2S:0.0mg)

新1号井:単純温泉 69.5℃ pH7.6 800L/min(掘削時造湯量・自然湧出・200m掘削・中継槽まで約1800m)
2号泉:硫黄泉 70.2℃ pH8.7 448L/min(掘削時造湯量・自然湧出・100m掘削・中継槽まで約1700m)
15号泉:単純温泉 43℃ pH7.3 200L/min(現状・動力揚湯・3m掘削・中継槽まで約1700m)
16号泉:硫黄泉 63℃ pH6.5 380L/min(掘削時造湯量・自然湧出・113m掘削・中継槽まで約2000m)

福島駅東口7番ポールより福島交通バスの土湯温泉行で「土湯温泉入口」下車、徒歩10分(0.7km)
福島県福島市土湯温泉町字赤坂7-6  地図
024-595-2612
ホームページ

※残念ながら2019年3月末を以て閉館しました。
9:00~20:00(受付19:30まで) 年末年始休業
250円
ロッカー(100円リターン式)・ドライヤー受付貸し出し、シャンプー類は販売

私の好み:★★★

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