川底温泉 蛍川荘

大分県

 
宝泉寺温泉口バス停から路線バスに乗車。廃止された国鉄宮原線の代替バスですけど、宝泉寺から先へ向かう便数は少ないので、プランニングには苦労しました。

 
川底温泉バス停で下車。バス停の傍にはワンコが繋がれていたのですが、この子が矢鱈とけたたましく吠え立ててくるので、石もて追われる罪人のように慌ててその場から離れざるを得ませんでした。日頃の行いの悪さがワンコにはお見通しなのかな。

 
今回の目的地は、足元湧出の浴槽が温泉ファンを魅了しつづけている川底温泉「蛍川荘」です。川岸にせり出すような構造の建物と、そこから川へ湯気を上げながら落ちてゆくお湯の筋が、なんとも言えない温泉風情を醸し出しています。現在「蛍川荘」は宿泊業をやめており入浴のみの営業となっているそうですが、国道の路傍には「入浴」と書かれた目立つ看板が立てられており、私が撮影している時もこれを目にして車を止める方がいらっしゃいました。

 
紅色の橋を渡って対岸へ。名湯には温泉犬あり。渡りきったところには老犬のダックスフンドがじっと黙ってこちらの様子を伺っています。バス停のワンコとは異なり、このダックス君は無駄な体力を使いたくないのか、声ではなく眼力で私を警戒してきます。


趣きのある玄関まわり。自販機はちょっと艶消しですけど、周囲には店がないので、この一台は湯上りの水分補給にとって重要な役割を果たしているんです。

 
玄関前には四角と丸のつくばいが1つずつ並んでおり、四角い方には触ったら刃のように肌を鋭く裂きそうなほどキリリと冷たい清水が、それとは正反対に丸い方には触れたら火傷確実の80℃という超激熱の温泉がそれぞれ落とされていました。無色澄明なそのお湯を柄杓にとってフーフーしながら飲んでみますと、ほぼ無味無臭ながらほんの僅かに塩味を帯びているように感じられました。


スピーカーからFMラジオが流されている玄関に入ると、目の前の受付は無人状態。でもカウンターに電話機が置いてあり、内線電話で呼び出してほしいとのこと。実際に受話器をとってコールしてみますと、すぐに自販機横の別棟のドアから施設の方がやってきたので、その方に料金を支払いました。


お風呂は混浴と女性浴室に分かれており、男性は必然的に混浴を利用することになります。

 
ウナギの寝床というかウナギ捕獲用の魚籠のように、全体的に細長くて口が狭く奥のほうが広い脱衣室。手前側にはロッカー(100円有料)があり、またロッカーの前には女性用スペースが区切られていて一応カーテンで仕切られていますが、実際にカーテンをしめると狭くて暗いので、布一枚隔てたその中で着替えるのは心理的に厳しいものがあるかもしれません。


ドライヤーが用意されているのは有難いですね。

 
これが温泉ファン垂涎の川底温泉だ!・・・と言いたいところですが、浴室内は思いっきり曇っており、視界は10メートルも無いほどで、私の安物デジカメではとてもじゃないが歯が立たずに、ただ画像が真っ白くなるだけでした。こちらのお風呂は内湯なのですが、川側の窓にはガラスが嵌められていない半露天状態となっており、谷川に沿って吹き降りる冷たい風がその窓から浴室に入り込んで熱いお湯に触れ、朦々とした湯気を室内に充満させてしまっていたのでした。冬のお風呂では仕方のない現象ですね。従いまして、もしクリアな画像をご希望の方はお手数ですがググッて他の素晴らしいサイトをご覧いただくとして、今回は私の拙い文章でレポートを進めていきます。

浴室内には川に沿って上段・中段・下段と3つの浴槽が据えられており、いずれも正方形に近い四角形で、底には綺麗な玉砂利が敷かれています。上段が最も熱く、中段はやや熱め、上2つよりやや広い造りの下段が万人受けする湯加減となっていました。昔ながらのタイプの浴室なので、シャンプーなどの備え付けはあるもののシャワーなどの設備は無く、掛け湯擦る場合は桶で湯船からお湯を汲むことになります。

  
浴室の上流側にはゴツイ岩の水飲み場や湯だまりがあり、湯だまりにはアツアツのお湯が落とされていました。後述するようにこちらの温泉は足元湧出なのですが、玄関前のつくばいやこちらの湯だまりなどへ引かれているお湯など、浴槽の底以外でもお湯が湧いていることが察せられます。湯量豊富なんですね。


最上流側の浴室妻面には2本の打たせ湯が、滑らかな放物線を描きながら優しく落とされています。やや熱めのお湯なのですが、その筋が細いために、まるでツボにお灸を据えているかのようにピンポイントに当てることができました。

 
湯口などが無い上段の浴槽をじっと見つめていますと、湯面がユラユラとしており、その直下の玉砂利から源泉が足元湧出していることがわかります。足元湧出、あぁ何て素晴らしい響きなんでしょう…。温泉入浴するには最高の源泉供給方法ですね。お湯は底の玉砂利が美しく映える無色澄明でサラサラスベスベのすっきりさっぱりした癖の全くない浴感です。玄関前のつくばいでは塩味をほんの極僅かながら感じ取れましたが、浴槽や上述の湯溜まりでは全く感じられず、ほぼ無味無臭と言って差し支えありません。当然ながら湯使いは完全放流式であり、底から湧き出たお湯は静かに浴室の石畳へと溢れていきます。

なお浴槽の上中下で効能が違うそうですが(上段:打ち身・捻挫・婦人病、 中段:リューマチ・神経痛、下段:切り傷・美白)、これは単に湯温の違いによるものでしょう。また全ての浴槽で足元湧出しているわけではないようでして、下段の浴槽は中段から受けたお湯が張られているようでした。お湯自体は綺麗に澄んでいますが、よく見ると浴槽内の玉砂利から剥がれた苔のような細かな茶色い破片がお湯の中を浮遊しており、かなり神経質な人でしたら気になっちゃうかもしれません。

川底温泉は大宰府へ飛ばされた菅原道真が、刺客から逃れてこの地へやってきたときに発見されたという伝説があり、現在の浴槽は安政年間に旅館が開業した当時に造られたものをそのまま使い続けているんだとか。そんな歴史を持つお風呂に入れるだけでも貴重なのに、その上足元湧出なんですから、個人邸には歴史的な遺産として保存しても良いんじゃないかと衝動的に思ってしまいますが、いやいや、こうしたものは使ってこそ味わいが増してゆくのですよね。日帰りのみの営業となっており、この先いつまで営業を続けていけるのか聊か心配ではありますが、この湯船が末永く人々を癒し続けることを祈らずにはいられません。

源泉名:旅館蛍泉荘
ナトリウム-塩化物泉 88.3℃ pH6.7 湧出量測定せず(掘削自噴・70m) 溶存物質1.058g/kg 成分総計1.060g/kg
Na+:232.0mg(84.65mval%),  
Cl-:383.0mg(84.91mval%), HCO3-:82.5mg(10.61mval%),
H2SiO3:256.3mg,

豊後森駅より玖珠観光バス(小国行・麻生釣行・菅原行)で川底温泉下車すぐ
(時刻表検索は大分交通HPを参照のこと)
大分県玖珠郡九重町菅原1453  地図
0973-78-9636

(参考)宝泉寺温泉口バス停から川底温泉までは歩いて30~35分(約2.5km)、同じく壁湯温泉からは35~40分(3.6km)です。宝泉寺から先はバスの本数が減るので、歩いちゃっても良いかと思います。ちなみに私は川底から壁湯まで35分で歩いて帰りました。


8:00~21:00
500円
ロッカー(有料100円)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

●おまけ
 
川底温泉にはもうひとつ「せせらぎの湯」という入浴施設もあります。さすがに設備面重視の方や家族連れの方はこちらもおすすめ。

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