伊香保に来たなら、やっぱり温泉街の一番上にある露天風呂は外せませんね。
だってお湯はここが一番良いですから。
まずは露天風呂の手前にある飲泉所でお湯を胃袋に流し込みます。私は伊香保の露天を利用する際には必ずここに立ち寄って飲泉するのですが、これは自分で勝手に流儀を決めている一種の儀式みたいなもので、いわば神社の手水と同義であります。
うぇぇっ、まじぃ・・・。このお湯を初めて飲んだのは、まだ大学生だった今から15年以上前のこと。当時は温泉なんてちっとも興味がありませんでしたが、その当時からここのお湯は(変な表現ですが)今も昔も安定した不味さを保っています。口から落とされているお湯は、黄金の湯に含まれる源泉のひとつ「5号泉」の単独利用ですが、総合湯とは異なり泉質名は「単純温泉」で、明らかに浴用の黄金の湯とは毛色の違った特徴を有しており、鉄錆の味と匂いが強く、炭酸味の他に渋味やエグミもはっきりしており、そこに弱塩味と弱出汁味が混じって感じられます。とてもじゃないけど単純泉とは思えない個性的な味ですね。掲示されている分析表の一部を抜粋させていただきます。
Na+:56.5mg, Mg++:23.6mg, Ca++:105mg, Fe++:16.8mg,
Cl-:44.6mg, SO4–:192mg, HCO3-:299mg,
H2SiO3:170mg, CO2:410mg,
(平成20年2月18日)
飲泉所の傍らに5号泉の泉源があるのですが、この源泉は飲泉所のみに使われ、他施設には供給されていないという話も聞きます。真偽の程はいかに?
さてさて露天風呂の受付へとやって来ました。観光名所ですから週末は大混雑しますが、今日はどのくらい混んでいるのかな?
料金を支払う前に、目の前にある2号源泉を見学。黄金の湯の主力源泉です。いまからこのお湯に入らせてもらいますよ。ガラスドーム越しに湧出口の様子を観察することができるのですが、湧出したてのお湯は酸化しておらず無色透明であることがわかります。
2号源泉の傍らには、文明開化直後の日本における医学の発展に大いに寄与したベルツ博士の胸像が観光客を見守っていました。ベルツ博士が説いた温泉利用法を、現代の日本人はどれだけ実践できてることやら…。日本って温泉や入浴文化に関してはもの凄い誇りを持っているにもかかわらず、その活用方法は生活色の強いものか歓楽性の高いものかのいずれかに分かれてしまい、しかもいずれにおいてもワンパターンで保守的であるような気がします。
今さら私が申し上げるまでもありませんが、露天風呂の脱衣スペースはお風呂に対してオープンになっており、お風呂のすぐ横でずらりと並ぶロッカーを目の前にし、入浴客の視線に晒されながら着替えなきゃいけないのかと戸惑いながら辺りをキョロキョロする観光客の方をしばしばお見受けします。たしかにパブリックなお風呂に慣れていない都会の現代人にとって、入浴エリアと脱衣エリアが一体化された開けっぴろげな造りには、男でも躊躇してしまうのでしょうね。一方で私など温泉慣れした人間は見ようが見られまいが一向にお構いなしだったりしますから、羞恥心は習慣により形成されることを再認識させられます。
やった! 誰も居ないぞ! 幸運なことに露天を独占することができました。
楕円を真ん中で2つに分けたコンクリの露天風呂。
左側は7~8人サイズで女湯側に洞窟口を塞いだような仕切りがあり、そこに張られているお湯はやや赤みを帯びた黄土色に濁り、浴槽周りも全体的に赤茶色に染まっています(お湯がかからない岩は苔むしていました)。この露天は加温加水循環消毒が無い完全掛け流しの湯使いですが、左側の浴槽は湯口から注がれるお湯をダイレクトに受けており、且つ源泉からの距離が短いがゆえに湧出時の温度がほとんど損なわれていないため、非加温であっても浴用に適したやや熱い状態で利用できるのが嬉しいですね。
それに対して、右側は10人ほど入れそうな一回り大きなキャパがあり、左側の槽から流れてくるお湯を受けているため、柔な若い兄ちゃんでも入れそうなややぬるめの温度になっています。お湯は赤みよりも黄色みの方が強い色合いを呈しており、特にお湯が排出される一番端っこでは濁り方も強くて、誰でも入れる湯加減である反面、鮮度感は左側と比べるとかなり劣ります。
湯口からお湯が注がれる左側の槽はお湯の鮮度感が抜群で、けだし伊香保のお風呂では随一ではないでしょうか。酸化があまり進んでいないため濁り方が弱く、また湯華や沈殿なども極めて少なく、底が見える程の透明度があります。また金気に関しても、いかにも酸化した鉄錆ではなく、シャキっとした新鮮な鉄の味と匂いが感じられ、そこに土類や炭酸の知覚も加わります。訪問時には湯面に薄い油の膜が浮いていました。
一般的に観光客向けのお風呂はお湯のクオリティに期待できないケースが多いのですが、こちらの場合は温泉地内の他のどの施設よりも泉源に近接しており、しかも完全掛け流しという湯使いなのですから、有難いことこの上ありません。とりわけ伊香保のようなお湯はすぐに劣化していき、それが知覚面ではっきりとわかってしまいますから、シャキっとした新鮮な状態のお湯に入れるこの露天風呂の存在意義は、単に温泉地のランドマークとして以上のものがありますね。
総合湯
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物温泉 42.0℃ pH6.3 蒸発残留物1.05g/kg 成分総計1.39g/kg
Na+:115mg, Ca++:138mg, Fe++:7.34mg,
Cl-:127mg, SO4–:313mg, HCO3-:278mg,
H2SiO3:181mg, CO2:174mg,
JR渋川駅より関越交通バスで伊香保温泉バスターミナル下車、徒歩12分(約1.0km)
群馬県渋川市伊香保町伊香保582 地図
0279-72-2488
渋川市HP内紹介ページ
4月~9月→9:00~19:00、10月~3月→10:00~18:00、毎月第1・3木曜定休(祝祭日の場合は営業)
450円
ロッカーあり(タオル販売あり)
私の好み:★★★
コメント
Unknown
まだ自分が高校生だった頃は、伊香保の露天は混浴で夜中にタダ風呂に忍び込んで楽しんでましたけど、あれから30年近く経ちました(汗)
Unknown
ぱとさん、こんばんは。
まさにご当地ならではの青春の思い出ですね。地元に温泉がある環境が羨ましいです。