先月(2013年2月)の連休に列車とバスを乗り継いで信州の霊泉寺温泉で一泊したのですが、乗り継ぎの都合で路線バスの起点となる上田駅には少々早く到着してしまったため、同じ路線バスで近所の鹿教湯温泉に寄り道してひとっ風呂浴びてまいりました。今回訪問したのは表に「源泉かけ流し 立ち寄り入浴」の札が下がっていた「ふぢや旅館」です。温泉街の中央部にあたる湯端通りに面しており、公衆浴場「文殊の湯」にも近い、比較的わかりやすい立地ですね。
失礼ながら、昭和40年代に建設されてそのまんま営業を続けているような、全体的にかなり草臥れた感のある旅館です。玄関の上がり框には日帰り入浴に関する案内が置かれており、呼び鈴(ブザー)を鳴らすと奥の方からご主人と思しき法被姿の男性が現れ、「シャワーのお湯は飲めます」などお風呂に関する案内口上を立て板に水の如くスラスラをお話になりました。
ご主人の淀みない説明を聞きながら、その後を追って廊下をどんどん進み、厨房の前から階段を下りて浴室へと向かいます。階段を下りきった前に広がるホールの右側が露天、左側が男女内湯の入口でして、ホール内には有料のロッカー(比較的大きめ)も設置されています。
まずは露天をのぞいてみようとドアのノブに手をかけたところ、残念ながら鍵がかかっていたため今回は利用することができませんでした。なお露天は一つしかないため、時間によって男女の交替制となっており、その時間割はドアや入口前に置かれている編笠などで案内されていました。
さて男湯の内湯へとまいりましょう。ちなみに以下で取り上げた浴室は男湯側でして、女湯はこれに比べるとかなりこぢんまりとした造りなんだそうです。脱衣室は棚があるだけの至ってシンプルなレイアウトですが、広くて清掃も行き届いているため気持ちよく使えました。余程お湯のクオリティには自信があると見え、棚の上にはお湯に関する諸々の説明とともに、温泉の薀蓄がまとめられたファイルが置かれていました。
ガラス張りの浴室へ一歩踏み入った途端、石膏泉ならではの匂いに包まれました。泉質名では単純温泉ですが、石膏が比較的多く含まれているため、湯気と一緒に室内に篭っているんですね。
室内に貼られているタイルが色褪せていたり、ガラスの一部にヒビが走っていたりと、全体的に相当年季が入っているのですが、清掃はきちんと行われているようで、古いお風呂にありがちな汚ならしさは全く感じられず、むしろ丁寧にお手入れすることによって古臭さを払拭しようと頑張っているようでした。
窓の下には内村川が流れ、その対岸には文殊堂境内の木立を縫うように伸びる遊歩道、そして屋根つきの橋として有名な五台橋も望めます。
鹿なのか牛なのかよくわからない動物を象った湯口には、まるでヒゲのように白い析出がビッシリと付着しており、そこからドバドバと無色澄明の源泉が落とされていました。お湯の投入量と浴槽の容量がバランスとれているのか、加水せずとも実に丁度良い湯加減がキープされています。加水加温循環消毒のない完全掛け流しという非常に嬉しい湯使いでして、それゆえに非常に鮮度感の高いシャキっとした気持ち良い浴感が楽しめました。飲める温泉に入れるんですから、この上なく贅沢ですね。
また排湯に関しては、この地域の温泉でしばしば見られる貫通穴、すなわち浴槽の縁を乗り越えることなく、洗い場にあいた穴と直結している槽内の穴を通じて排湯されてゆく方法が採用されています。
主浴槽に並んで一人サイズの小さい浴槽も据えられており、こちらにも完全掛け流しで同じ源泉が注がれているのですが、こちらは浴槽サイズが小さいためか、湯加減はかなり熱めでした。好みに応じて二つの熱さの湯船を使い分けられるのは嬉しいですね。
洗い場に設けられている各シャワーの水栓ハンドルには、お湯を飲めとアピールするかのようにコップが被せられていますし、ご主人も「飲めます」と仰っていたので、飲まなきゃいけないような義務感に駆られながら実際にチビチビと飲泉してみますと、ほんのり石膏の匂いと味が感じられるのですが、特に濃厚というわけでもありませんから、普通の白湯のような感覚で軽やかに飲めてしまい、この時は気づけばコップ2杯くらい飲泉していました。温泉は入浴の利用がほとんどですが、「飲むビタミン」という表現があるように飲泉すると効能が覿面に顕れてくるんですよね。なお、お湯はペットボトルに詰めて持ち帰っても良いんだそうです。
飲んでよし、入ってよし。鮮度の良いお湯がたっぷり注がれているお風呂って素晴らしいですね。
鹿教湯温泉混合泉(2・3・4・5・6号)
単純温泉 47.1℃ pH8.19 溶存物質542.2mg/kg 成分総計547.8mg/kg
Na+:86.4mg, Ca++:69.8mg,
Cl-:53.7mg, SO4–:251.6mg,
H2SiO3:41.5mg,
上田駅より千曲バスの鹿教湯線で「鹿教湯温泉」バス停下車、徒歩1~2分
長野県上田市鹿教湯温泉鹿教湯1373
0268-44-2204
ホームページ
立ち寄り入浴10:00~16:00(受付15:30まで)
500円
ロッカー(有料100円)・シャンプー類あり(ドライヤー見当たらず)
私の好み:★★★
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