姫川温泉 ホテル白馬荘

長野県


長野県の北端、小谷村の姫川温泉には2軒の旅館が並んでおり、そのうちの1軒である「朝日荘」に関しては以前拙ブログで取り上げておりますが、今回はもう1軒の「白馬荘」にスポットライトを当ててみたいと思います。


 
「白馬荘」の目の前では、崖の上のタンクから余剰源泉が垂れ流されています。拙ブログでも何度かこの光景を紹介しておりますが、湯けむりを上げながら滝のように落ちるその様は、姫川温泉の象徴と言っても過言では無いでしょう。

 
さて玄関に入って日帰り入浴を乞いますと、年配の男性スタッフさんが快く受け入れてくださり、料金を支払いますとその場ですぐに台帳へ記載していました。500円の売上でもどんぶり勘定にしない細やかな姿勢が伝わってきます。
裸婦の石膏像が見つめるロビーの右側から階段を下って、浴室へ向かいます。

露天風呂
 
お風呂には露天と内湯があって両方利用できるのですが、両者は位置が離れていて入口のある階層が異なっています。フロントやロビーがあるフロアから一階層下りると、薄暗い廊下の壁に「露天風呂→」と記されたプレートが貼ってあったので、まずはそれに従って露天風呂へ向かうことにしました。

 
露天風呂の入口扉を開けると、その先は倉庫か機械室のような薄暗い勝手口となっており、本当にここで良いのかという不安を抱きつつ、足元に並べられているツッカケを履いて屋外に出て、クーリングタワーの裏を通りながら、更に階段を下ってゆきます。温泉入浴というより、ビルメンテナンス業者になって点検作業をしているような気分です。


階段下の正面には露天風呂の脱衣室がありました。姫川の川岸に位置しているようです。ちゃんと男女別に分かれているんですね。


階段を下りている途中に振り返って建物を眺めてみました。全体的に老朽化が著しく進んでいるようですね。先日(2013年11月25日)には改正耐震改修促進法が施行されましたが、こちらのお宿はその対象(旅館の場合は床面の積5000平米以上)に該当するのでしょうか。もし該当するのであれば、経営に致命的な打撃となるでしょうけど…。

 
一部に屋根が掛けられている岩風呂は、姫川に向かって開けている…と言いたいところですが、それでは周囲から入浴姿が丸見えになってしまうためか、川側には岩や植栽によって目隠しされており、川沿いというロケーションにもかかわらず眺望はいまいちのようです。でもその場で立ち上がると、クリーム色に塗られた大糸線のガーター橋がばっちり見えました。タイミングが良ければ入浴しながらコトコト走る大糸線の車両を眺められるのでしょうね。
パイプの湯口から源泉が落とされていましたが、残念ながらこの時はお湯がほとんど溜まっておらず、くるぶし程度の嵩しかなかったため、入浴できませんでした。

●内湯
 
上述の露天入口があるフロアから、更にもう一階層下りると(つまりロビーのフロアから2階層下りると)、内湯ののれんが掛かっていました。左側が男湯です。

 
ウナギの寝床のように奥へ細長い造りの脱衣室には、山側から巨大な岩盤がせり出ており、この旅館が荒々しい断崖の急斜面に建てられていることを物語っています。この印象的な岩の前後に棚と籠が用意されていて、床には茣蓙が敷かれています。


洗面台は昔懐かしいタイル貼りです。水栓金具はかなり錆びていますが、ハンドルを回したらちゃんと水が出てきましたよ。


姫川を臨む川岸という立地を活かした浴室は、川側が全面ガラス窓となっていて、昼間でしたら照明が無くとも外から降り注ぐ日の光だけで十分明るい環境が生み出されていました。でもせっかくのガラス窓も、万遍なく付着している汚れのこびりつきによって眺望が妨げられているのは残念なところです(一番下のガラスは目隠しのための曇りガラスなので致し方ありませんが)。

 
女湯との仕切りにはガラスブロックが用いられており、その下にシャワーが並んでいます。洗い場はこのガラスブロック下の他、反対側の壁際にも設けられており、シャワー付き混合水栓が2基、お湯と水のスパウトのセットが2組、ホースに接続されているカランが1基、この5組がシンメトリに配置されて、計10組の水栓が取り付けられています。
室内には自由に使えるアカスリが用意されているのですが、私は他人が使ったアカスリを使う気にはなれませんので、今回は(いやどんなときでも)ノータッチです。

 
浴槽はタイル貼りで、ひさごを半分に割ったような形状をしており、12~13人サイズです。底の左半分と右半分では用いられているタイルが異なっているのですが、これはおそらく修繕の際に元々のタイルが調達できなかったのでしょう。

窓側の中央にある石の湯口から源泉が注がれており、浴槽縁の左右にある切り欠けから排湯されています。湯船に湛えられたお湯は暗い灰色を帯びて笹濁りで、湯中では白い湯華がチラホラ浮遊しています。豊かな湧出量のおかげか、加水加温循環消毒の無い完全掛け流しを実現しており、しかも飲泉許可も得ています。湯口そばに置かれたコップでお湯を飲んでみますと、はじめは甘味が舌に載り、続いて薄い塩味とはっきりした茹で卵の卵黄味、そして渋味が感じられました。またコップからは刺激的な硫黄臭が立ち上り、鼻孔をくすぐってきました。味・匂いともに刺激のある硫黄感が明瞭であり、しかも湯中ではツルスベ浴感もしっかり肌に伝わってきます。

はっきりとした硫黄感を有する良泉を完全掛け流しで提供している点は大いに評価したいのですが、お風呂を含めた建物の全てから寂寥感が漂っており、しかもそれをリカバリするお手入れも追いついていないので、せっかくの良泉も、建物が放つ陰鬱な雰囲気に隠れてしまっているようでした。非常に勿体無いのですが、失礼を承知で申し上げますと、改修する余裕が無いのかもしれません。フロントの方はきちんとなさっていたので、決して手を抜いているわけではないのでしょうけど、何とかしたいし方法もわかっているが前に進めないという隔靴掻痒の苦しみを目の当たりにした感がしました。これって日本全国の温泉業界共通の懊悩だったりするんですよね…。

姫川温泉大網共有温泉源泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 45.2℃ pH6.48 蒸発残留物1040mg/kg
Na+:240.8mg, Ca++:83.8mg,
Cl-:331.4mg, HS-:0.06mg, SO4–:61.6mg, HCO3-:421.6mg,
H2SiO3:71.8mg, HBO2:29.8mg, CO2:205.1mg, H2S:0.2mg,
加水加温循環消毒なし(清掃時のみ塩素系薬剤を使用)

(※)上記データは平成9年11月28日分析の数値であり、それよりも新しい平成20年11月11日分析の資料によれば、泉質名は含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉、源泉温度64.5℃、と記載されています。今回入浴した体感から申し上げれば、明らかに硫黄泉の特徴を有していたので、現在の泉質名は後者であるかと思われます。源泉の泉質が変わったのか、あるいは使用源泉を変更したのか、詳しい事情は存じ上げませんが、当地は平成7年に未曽有の大水害に遭っていますし、その後も大規模な河川改修工事が行われていますから、そうしたことを機に源泉を切り替えている可能性がありますね。

JR大糸線・平岩駅より徒歩5分(490m)
長野県北安曇郡小谷村北小谷9922-5  地図
025-557-2231
ホームページ

日帰り入浴13:00~20:00
500円
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品は帳場預かり?(ロッカー見当たらず)

私の好み:★★

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