※こちらのお宿は2013年10月27日を以て閉館されました。
私がまだ温泉に対して今ほど関心を抱いていなかった20代前半の頃、嶽きみ(トウモロコシ)を買うために嶽温泉へ行って、そのついでに物見遊山気分で露天風呂に入るべく訪れたのが、当時のガイドブックに掲載されていた「山楽」でした。その後数年経ってから1度再訪しておりますが、それきり利用する機会がなく、先日何気なく青森県内の温泉情報を漁っていたら、今年(2013年)10月27日でこの「山楽」が閉館するという情報を得て驚きました。実際にお宿のホームページを拝見しますと「10月27日で閉館します。じぇじぇじぇじぇじぇじぇじぇじぇじぇー。永年のご愛顧ありがとうございました。さよならー」と、「あまちゃん」用語を織り交ぜながらお宿の歴史に幕を下ろすことが案内されていたのですが、その表現からは閉館に伴う悲壮感や切迫感が感じられず、本当に閉館してしまうのか信じることができませんでした。とはいえ、これが事実とするならば、嶽温泉随一のあの大きな露天風呂にもう入れなくなってしまう…。そう思うと居た堪れなくなり、また、たまたま閉館日の数日前に西津軽郡鰺ヶ沢町へ赴く所用があったので、嶽温泉へちょっと寄り道して、惜別入浴してまいりました。
館内はすっかりクロージングモードに入っており、訪問時は玄関が真っ暗だったのですが、引き戸を開けて声を掛けますと、帳場からご主人が現れて対応して下さいました。帳場の脇には「山楽」名物である野天風呂の説明やお湯の温度が掲示されていました。こちらの露天風呂は露天ではなく野天と称しているように一般的なお風呂よりもワイルドであり、混浴(タオル巻き可能)で湯加減がぬるく、場所も離れたところにある、など一般的な観光客にとっては入浴に対するハードルが高いので、予めこのように説明しておく必要があったのでしょう。
●野天風呂
まずは名物の野天風呂に入ることにしました。帳場から奥へ進んで内湯の前を通り過ぎ、廊下の突き当りにある勝手口から一旦外へ出ます。
勝手口から路地の緩やかな坂を数十メートル下ってゆくと、路地が左へカーブする途中の茂みに紅と紺の暖簾が掛かっていました。お風呂自体は混浴ですが脱衣室は男女別なんですね。
こちらが脱衣室となっているプレハブ小屋です。室内は腰掛けや籠が用意されているだけで至って質素ですが、プレハブの無味乾燥とした雰囲気を極力排除すべく、壁や天井は葦簀で覆われ、床には茣蓙が敷かれていました。
久しぶりにこの露天風呂とご対面です。岩木山の紅葉に彩られた獄の白濁湯が実に美しく映えており、無理してここへ立ち寄って正解だったと、思わずニヤついてしまいました。またこの日は朝から雨がしとしと降り続いていたためか、閉館日間近だというのに私の他にはどなたもいらっしゃらず、ひたすらこのお風呂を独占することができました。
混浴とはいえ、体にタオルを巻いて入浴することができますし、湯船自体の形状も屈折しており、衝立も設けられているので、混浴が苦手な方でも決してハードルが高くないお風呂ではなかったかと思われます。
樋から嶽のお湯が落とされ湯船を満たしており、湯船ではターコイズグリーンを帯びた強い白濁を呈していました。貯湯槽からこのお風呂までは隔たりがある上、湯船の表面積が広く、かつ外気温も低かったため、帳場脇の掲示では38℃とアナウンスされていましたが、私の体感ではそれより更に低い温度だったように感じられ、一度湯船に浸かると出られなくなっちゃいましたが、寧ろこれを幸いに、じっくり肩まで浸かって長湯をし、嶽温泉随一のキャパを擁する露天風呂との別れを惜しみました。
●内湯
露天を存分に満喫した後、体をしっかり温めるべく、宿へ戻って内湯にも入ることにしました。露天は混浴でしたが、内湯は男女別であります。
脱衣室に設けられている洗面台の蛇口は、硫化して真っ黒に変色していました。黒くなっちゃった水栓を目にしますと、硫黄の温泉地へ来ていることをビジュアル面で実感できますね。
なお、この脱衣室内には当旅館が売出中の物件であることが掲示されていましたが、後日知った情報によりますと、どうやら買い手が決まったようでして、来春(2014年春)には新たなオーナーの手によって再出発するんだそうです。
ウッディーな浴室には浴槽がひとつ、そしてシャワー付き混合水栓が2基設けられています。床にはすのこが敷かれており、その下は耐腐食性と思しき水色の塗装が施されています。そして浴槽にも同じくこの塗装が施工されていました。この浴槽は4~5人サイズで、木筒に守られたパイプから温泉が供給されて、湯船ではやや灰色掛かった白濁を呈していました。露天風呂ほど外気に触れていないためか、濁り方は然程強くありません。
硫黄臭を放つお湯を口にしてみますと、柑橘類を彷彿とさせるミョウバン味が口腔を収斂させるとともに、若干の甘味と塩味も感じられました。そして湯上がり後は体にイオウの匂いがこびりつきました。これだけ明瞭にイオウの特徴が現れているので、てっきり硫黄泉であるかと思いきや、分析表を確認しますと総硫黄が2mg以下であるため、硫黄泉を名乗れないんですね。しかもこちらのお宿の場合は、露天風呂と内湯で掲示されている分析表が異なっており、内湯の方は何と総硫黄がゼロなんです。嶽温泉のお湯は集中管理されたものを各旅館に対して供給しているので、両者の違いについては、分析時期の違いによって使用源泉が異なっていただけと解釈すれば納得できますが、総硫黄の少なさについてはオツムの弱い私にはよくわかりません。似たようなことは福島県高湯温泉の「玉子湯」でも見られましたので、配湯の過程で何らかの手が加えられることにより、硫黄分の数値に変化がもたらされるのでしょう。それだけ硫黄のお湯は繊細なのかもしてません。
上述のように来春には新たなスタートを切るそうですから、どのように生まれ変わるのか(あるいはそのままなのか)、期待したいものです。
またひとつ、湯けむりの宿が過去帳入りしてゆく…。
露天風呂に掲示されていた分析表
嶽温泉旅館組合4~8号集湯槽
酸性-カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 45.5℃ pH2.0 1020L/min(動力揚湯) 溶存物質2.405g/kg 成分総計2.405g/kg
H+:10.1mg(23.82mval%), Na+:135.5mg(14.00mval%), Mg++:49.3mg(9.65mval%), Ca++:265.7mg(31.51mval%), Al+++:68.0mg(17.97mval%), Fe++:10.5mg,
Cl-:1118mg(76.45mval%), S2O3–:0.5mg, HS-:ND, HSO4-:128.9mg, SO4–:382.7mg(19.32mval%),
H2SiO3:168.7mg, H2SO4:3.3mg, CO2:ND, H2S:ND,
(平成10年2月2日)
内湯に掲示されていた分析表
嶽温泉旅館組合4~5号集湯槽・6~8号集湯槽
酸性-カルシウム-塩化物温泉 46.9℃ pH2.05 動力揚湯 溶存物質2.283g/kg 成分総計2.959g/kg
H+:9.0mg(23.36mval%), Na+:137.6mg(15.67mval%), Mg++:51.2mg(11.01mval%), Ca++:258.7mg(33.77mval%), Al+++:48.6mg(14.13mval%), Fe++:7.2mg,
Cl-:1061mg(77.34mval%), S2O3–:0.0mg, HS-:0.0mg, HSO4-:108.5mg, SO4–:361.4mg(19.43mval%),
H2SiO3:200.3mg, H2SO4:2.4mg, CO2:676.2mg, H2S:0.0mg,
(平成14年12月19日)
青森県弘前市大字常盤野字湯の沢9-1
0172-83-2136
ホームページ
日帰り入浴時間不明
400円
※残念ながら2013年10月27日を以て閉館
私の好み:★★★
コメント
Unknown
またひとつの歴史が終わってしまうみたいな東北の温泉の悲しさを感じたけど 新しいオープンが次にあるという情報は楽しみ!
その時は立ち寄りたいです。情報ありがとう
Unknown
またひとつの歴史が終わってしまうみたいな東北の温泉の悲しさを感じたけど 新しいオープンが次にあるという情報は楽しみ!
その時は立ち寄りたいです。情報ありがとう
Unknown
またひとつの歴史が終わってしまうみたいな東北の温泉の悲しさを感じたけど 新しいオープンが次にあるという情報は楽しみ!
その時は立ち寄りたいです。情報ありがとう
Unknown
あごちゃんさん、こんばんは。私もはじめは閉館という話を知って一抹の淋しさを覚えましたが、その後、来春に新たなオーナーによる再スタートが予定されているという情報を得て、ホッとしました。現状の姿が維持されるのか、はたまた変貌を遂げるのか、どうなるんでしょうね。
Unknown
あごちゃんさん、こんばんは。私もはじめは閉館という話を知って一抹の淋しさを覚えましたが、その後、来春に新たなオーナーによる再スタートが予定されているという情報を得て、ホッとしました。現状の姿が維持されるのか、はたまた変貌を遂げるのか、どうなるんでしょうね。
Unknown
あごちゃんさん、こんばんは。私もはじめは閉館という話を知って一抹の淋しさを覚えましたが、その後、来春に新たなオーナーによる再スタートが予定されているという情報を得て、ホッとしました。現状の姿が維持されるのか、はたまた変貌を遂げるのか、どうなるんでしょうね。
ショックでした
そうだったんですか!
去年2回嶽温泉に行ったのに、「山楽」さんには入らずに帰ってきてしまいました。
この露天風呂を、次のオーナーさんが引き継いでくださることを祈りたいと思います。
ショックでした
そうだったんですか!
去年2回嶽温泉に行ったのに、「山楽」さんには入らずに帰ってきてしまいました。
この露天風呂を、次のオーナーさんが引き継いでくださることを祈りたいと思います。
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この露天風呂を、次のオーナーさんが引き継いでくださることを祈りたいと思います。
Unknown
hiroさん、こんばんは。仙台帰りの昨日はオフでしたので、雪の奥会津で湯めぐりし、帰路の途中に郡山へ寄って、私の大好物であるロミオ(パン屋さん)の「クリームボックス」を買い込んできました。
私は青森県へ赴く直前に偶然にも閉館の情報を知り、現地へ向かった折に嶽温泉へ寄る時間が作れたので、嶽温泉随一の露天風呂とお別れ入浴してまいりました。青森県では次々に温泉施設がクローズしていますので、次はどこなのか心配でなりませんが、こちらのお宿の場合は新たな買い手が見つかったそうですので、是非期待したいものですね。
Unknown
hiroさん、こんばんは。仙台帰りの昨日はオフでしたので、雪の奥会津で湯めぐりし、帰路の途中に郡山へ寄って、私の大好物であるロミオ(パン屋さん)の「クリームボックス」を買い込んできました。
私は青森県へ赴く直前に偶然にも閉館の情報を知り、現地へ向かった折に嶽温泉へ寄る時間が作れたので、嶽温泉随一の露天風呂とお別れ入浴してまいりました。青森県では次々に温泉施設がクローズしていますので、次はどこなのか心配でなりませんが、こちらのお宿の場合は新たな買い手が見つかったそうですので、是非期待したいものですね。
Unknown
hiroさん、こんばんは。仙台帰りの昨日はオフでしたので、雪の奥会津で湯めぐりし、帰路の途中に郡山へ寄って、私の大好物であるロミオ(パン屋さん)の「クリームボックス」を買い込んできました。
私は青森県へ赴く直前に偶然にも閉館の情報を知り、現地へ向かった折に嶽温泉へ寄る時間が作れたので、嶽温泉随一の露天風呂とお別れ入浴してまいりました。青森県では次々に温泉施設がクローズしていますので、次はどこなのか心配でなりませんが、こちらのお宿の場合は新たな買い手が見つかったそうですので、是非期待したいものですね。
どうも~
閉館前に間に合ってよかったですね~。
出来れば自分も昼間に露天に入りたかったです・・・。
新オーナーになってからもまた気軽に入れるようになってほしいですね。
いつの間にブックマークありがとうごさいます!
私のブログにもお気に入りブックマークさせてもらいますね!
どうも~
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出来れば自分も昼間に露天に入りたかったです・・・。
新オーナーになってからもまた気軽に入れるようになってほしいですね。
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出来れば自分も昼間に露天に入りたかったです・・・。
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Unknown
マーズれい郎さん、こんばんは。
幸いにもスケジュールの都合がついたので、クローズ直前に入湯することができました。
「新オーナーになってからも」という希望は私も同感です。どういう営業形態になるかは、全くわかりませんからね。
Unknown
マーズれい郎さん、こんばんは。
幸いにもスケジュールの都合がついたので、クローズ直前に入湯することができました。
「新オーナーになってからも」という希望は私も同感です。どういう営業形態になるかは、全くわかりませんからね。
Unknown
マーズれい郎さん、こんばんは。
幸いにもスケジュールの都合がついたので、クローズ直前に入湯することができました。
「新オーナーになってからも」という希望は私も同感です。どういう営業形態になるかは、全くわかりませんからね。