前回記事「赤湯温泉 丹波館 前編(客室など・丹波の湯)」の続編です。
●羽衣の湯
前夜は女湯の暖簾が掛かっていた「羽衣の湯」ですが、深夜0時から5時までのお休み時間を挟んだ翌日からは男湯に入れ替わりますから、翌朝に早起きして行ってみることにしました。中庭を見ながら帳場前を通過。ロビーには色とりどりの浴衣が並んだショーケースが置かれていました。女性客は浴衣を選べるんですね。
帳場前を通過してちょっとステップを下った先の突き当たりが「羽衣の湯」。出入口の前には健康器具が置かれていました。アットホームな温泉宿ではしばしば見かけるグッズですが、実際に使う宿泊客っているのかな。
前回記事で取り上げた「丹波の湯」と同じく、脱衣室は大変きれいに管理されています。特に朝一番の清掃直後でしたから、隅々までピッカピカでした。この脱衣室で不思議なのは、棚が左右に分かれて設置されている上、なぜか出入口まで2つ並んで設けられていること。かつては何らかの目的で使いわけていたのかな?
2つの出入口のどちらから入っても、1つの同じ浴室へとつながっているのですが、洗い場が左右に分かれて配置されているので、やっぱりこのお風呂はかつて分割されていたのかもしれませんね。なお左右の洗い場には合計して7基のカランが取り付けられています。
石材と木目によって落ち着いた和の風情が漂うこちらの室内は、「丹波の湯」よりもはるかに大きな空間があり、おそらく倍近い広さが確保されているのではないでしょうか。天井が高くて露天風呂に面する窓もあるため、床面積以上の奥行きがあるようにも感じられます。
浴槽は(目測で)5m×2.5m。槽内はグレーのタイル張りですが、縁には木材が用いられ、柔和で暖かなイメージを生み出しています。隅の湯口から注がれるお湯は大変熱いのですが、湯量をコントロールすることによって湯加減を調整しており、清らかに澄み切った浴槽のお湯は、私の体感で42℃前後という実に入りやすい状態になっていました。赤湯の温泉ですから、底に白い湯の華が多少沈殿していても良さそうなものですが、清掃直後であるためか、沈殿は一切見られませんでした。槽内における吸引や投入等は見られず、縁から静かに溢れ出ていましたので、掛け流しの湯使いかと思われます。
少々低い戸を開けて露天風呂へ。4~5人サイズの岩風呂です。すぐ目の前に裏山の斜面が立ちはだかっており、頭上は屋根で覆われているため、露天という言葉から想像するような開放感に乏しく、限られた敷地内で無理矢理拵えたような感も否めませんが、全体的に和のイメージを大切にしているので、風情はまずまず。この日は岩風呂の奥にある小さな和の庭には真っ白な雪が積もっていて、冬の温泉の醍醐味でもあるも雪見風呂が楽しめました。
岩風呂に向かって左手には上画像のような石垣や大きな岩があるのですが、この岩(石)は古来から赤湯にある七石のひとつ「羽衣石」で、天人が羽衣を掛けたことからその名で呼ばれるようになったんだとか。「羽衣の湯」という浴場名はこの石に由来しているわけですが、説明によれば「入浴することにより天人の様に美人になると申されております」とのことですから、関心のある方は是非ここで入浴し、ご自身でビフォーアフターを比較してみてください。ちなみに私は残念ながら微塵の変化も見られませんでした…。
筧から落とされるお湯は内湯と同じくアツアツですが、やはり湯量調整によって湯加減を適温に保っており、湯船では内湯とほぼ同程度の温度になっていました。お湯は縁から溢れ出ることなく、隅っこに開口された穴から全量が排出されています。状況から推測するに、おそらく掛け流しでしょう。内湯と同じくこちらでも湯の華の沈殿は全く見られず、槽内のお湯は無色透明でとってもクリア。湯口では薄い塩味と弱タマゴ味、そして焦げシブ風味が感じられ、お焦げ感を伴うふんわりとしたタマゴ臭が香ってきました。湯船に浸かるとトロミと一緒に食塩泉的なツルスベ浴感が全身を覆います。雪見風呂を堪能しながらの湯浴みはとっても気持ち良く、なんだかんだで朝食の時間ギリギリまで浸かり続けてしまいました。湯上がりは体の芯までよく温まり、保温効果が長続きしました。
伝統的な和の風情を大切にしながも、随所にモダンな風を取り入れて、現代にニーズにマッチさせているところは、さすが老舗旅館だと感心させられます。しかもお部屋は綺麗でリーズナブルですし、雪見の露天風呂を含めて2つの浴場も利用できましたので、とても充実した一晩を過ごせました。
森の山源泉・森の山2号源泉
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 61.2℃ pH7.5 蒸発残留物2241mg/kg 溶存物質1972mg/kg
Na+:531.0mg, Ca++:168.1mg,
Cl-:975.4mg, Br-:2.9mg, I-:0.3mg, HS-:2.1mg, SO4–:155.1mg, HCO3-:66.3mg,
H2SiO3:49,3mg, CO2:14.6mg, H2S:0.7mg,
JR奥羽本線(山形新幹線)・赤湯駅より徒歩20分強(1.7km)
山形県南陽市赤湯1014 地図
0238-43-3000
ホームページ
日帰り入浴9:00~21:00(受付20:00まで)
丹波の湯(内湯のみの中浴場)400円、羽衣の湯(露天併設の大浴場)600円
シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★
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