おおだて温泉 ロイヤルホテル大館

秋田県

 
秋田県大館駅の至近に建つ「ロイヤルホテル大館」で一泊しました。1980年に竣工した7階建てのこのホテルは、一見してわかるように、ごく普通のビジネスホテルなのですが…


高架で支持されている増設部分の出っ張りに展望浴室があり、なんと放流式の温泉に入れるんですね。でも日帰り入浴は受け付けていないため、ここのお湯に入るには宿泊しなければなりません。ということで、今回宿泊したのでした。

 
本館の上層階にあるエレベーターホールから北の方角を眺望しますと、目下には廃止後に完全撤去された小坂線大館駅跡の空き地が広がっており、廃線された線路の跡がJR奥羽本線へ合流してゆく筋道もはっきりと見ることができました。そして、その向こう側には、JR大館駅とその構内も左右に伸びており、線路の上ではEH500形機関車に牽引されているコンテナ貨物列車が停車していました。

 
さて、お風呂へと参りましょう。エレベータで5階に行き、客室が並ぶ廊下を進んでいって、突き当たりを左へ折れると、増設された棟続きの浴場棟へ繋がります。

 
お風呂は男女別の内湯が一室ずつあり、男女区分は固定されています(時間や日による入れ替えは無いようです)。建物自体はそこそこ古いのですが、内部はしっかり改修されており、脱衣室は現代的な内装にリニューアルされ、とても綺麗で使い勝手の良い状態が保たれていました。

 
このお風呂で特徴的なのは、脱衣室の片隅に置かれた小さなメモです(上画像)。説明によれば、浴場のお湯は温泉を用いているため入湯税の課税対象になっている、よって入湯者数を把握するため、入湯の際は備え付け用紙に記入の上、箱に投入してほしい、とのことでした。なるほど、温泉に入る客は宿泊施設を通じて各市区町村に入湯税を納めるわけですが、ビジネスホテルの宿泊客全てが温泉を利用するわけではないので、あえてこのようなスタイルを採用しているのでしょう。温泉宿泊施設のほとんどは、実際の温泉入浴の有無にかかわらず宿泊客から無条件で入湯税を徴収していますが、ビジネスホテルの利用客は必ずしも温泉入浴を目的としているわけではないため、このような手段をとらざるを得ないのでしょう。一見面倒に思えますが、実はお客さんに対して誠実であり、且つホテル側にとっても節税対策になっているわけですね。この説明文を読んでいると、ホテルオーナーと市税担当者との間で繰り広げられたであろう喧々諤々のやりとりが目に浮かびます(あれ? でもフロントでは入湯税を徴収されなかったぞ。ということは、宿泊料に入湯税が含まれているということか。それならば、入浴しなかった客の分の入湯税相当額は、ホテル側の利益になっちゃうのかな? 考えすぎると寝られなくなっちゃうから、ま、いいや…)。

 
浴室の造りは典型的なビジネスホテルの大浴場そのもの。大きな浴槽がひとつ、そして洗い場が設けられているだけで、至って実用的です。
洗い場にはシャワー付きカランが5基並んでいました。

 
お風呂のレイアウトこそシンプルですが、高い高架の上に設けられたお風呂だけあり、浴室からの眺望はなかなかです。男湯の場合は北と東の2方向に窓が設けられており、大館市街のほか、大館の盆地を取り囲む周囲の山々も一望することができました。

 
浴槽は4m×1.5mほどの長方形で、全面タイル張りです。浴槽と接する低い位置に窓が嵌められているため、湯浴みしながら眺望を楽しめるのがこのお風呂の良いところ。外からの視線を気にする必要がない高い位置につくられたお風呂だからこそできる芸当ですね。

 
無色透明のお湯が張られた湯船の底では、窓からお湯へと差し込む陽光を受けて、タイルが黒光りしていました。なお底面にはステンレスの穴あき板が埋め込まれていましたが、特に吸引などの動きは確認できず、浴槽のお湯は窓下の溝へと排水されていました。純然たる放流式の湯使いです。また、この浴槽にはジェットバス装置も取り付けられているようですが、稼働していませんでした。私個人としては騒々しいお風呂が苦手なので、この時のように稼働していない方がありがたく思います。

 
東側の窓際に湯口が設けられているのですが、ここからお湯が出ることはなく、それと並んでいるステンレスの水栓から激熱のお湯がチョロチョロと注がれていました。熱いお湯を加水せずに適温まで抑えるため、投入量をかなり絞っているものと推測されます。それでも湯船のお湯はかなり熱く、私の体感で44~5℃はあったかと思います。実際に、あまりの熱さに湯浴みできず退散していったお客さんもいらっしゃいました。しかも加水できるような水栓が無いため、この温度より下げることはできないのです。お湯の質をキープしようとすると、湯加減の調整が難しくなり、湯加減を優先にすると加水の必要性に迫られる…。加水をするべきか、せざるべきか。このホテルのみならず、高温の温泉を使っている施設でしたら、どこでもこの「ハムレット」的な懊悩を抱えていらっしゃるに違いありません。でも泉質重視の私としては、敢えて安易に加水しない道を進んでいるこちらのホテルの方針を支持したいと思います。

お湯は無色透明でクリアに澄んでおり、微かな塩味と甘味を伴う弱い石膏味、そして石膏臭が感じられました。なお館内表示によれば塩素系薬剤を使用しているとのことですが、消毒臭は特に気になりませんでした。投入量が少ないのでお湯が鈍ってしまうのではないかと心配したくなりますが、ホテル宿泊者しか利用しておらず、しかも幸か不幸か、お湯が熱くて湯船に入れる人が少ないためか、意外にもお湯はクリアで綺麗な状態が維持されていました。湯船に浸かると、食塩泉的なツルスベ感と硫酸塩泉的な引っかかりが拮抗しており、熱い湯加減も相まって、体の芯から力強く温まります。そしてその熱さゆえ、入りしなは肌がピリッとしますが、ゆっくり肩まで浸かると、頭のてっぺんから足の先まで、心身がシャキッと冴えてくれます。湯上がりに客室へ戻って、冷蔵庫で冷やしておいた缶ビールを飲んだ時の美味さったら、もう言葉では言い表せません。本物の温泉だからこそ味わえるささやかな喜びです。大館で缶ビールが一番美味しく飲める温泉ホテルかもしれません。

おおだて温泉
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 56.9℃ pH未記載 溶存物質量未記載
Na+:821.9mg, Ca++:482.0mg,
Cl-:919.0mg, SO4–:1745.0mg, HCO3-:25.3mg,
(平成22年3月12日)
加水・加温・循環ろ過なし
消毒あり(衛生のため。次亜塩素酸ナトリウムを使用)

JR大館駅より徒歩4分
秋田県大館市中道1-2-26  地図
0186-49-4511
ホームページ

日帰り入浴不可(宿泊者のみ)

私の好み:★★

コメント

  1. akira より:

    Unknown
    東龍館や塩原の温泉まつりとかでお会いしているはずのakiraといいます。ここは5/4に泊まりましたが、確か、川向うの社有源泉からグループ3ホテルにローリーで運ばれてると聞きました。

  2. akira より:

    Unknown
    東龍館や塩原の温泉まつりとかでお会いしているはずのakiraといいます。ここは5/4に泊まりましたが、確か、川向うの社有源泉からグループ3ホテルにローリーで運ばれてると聞きました。

  3. akira より:

    Unknown
    東龍館や塩原の温泉まつりとかでお会いしているはずのakiraといいます。ここは5/4に泊まりましたが、確か、川向うの社有源泉からグループ3ホテルにローリーで運ばれてると聞きました。

  4. K-I より:

    Unknown
    akiraさん、こんばんは。コメントありがとうございます。複数回お会いしていたとは存じ上げず、ご挨拶もせずに大変失礼いたしました。

    >川向うの社有源泉から
    ひらがな表記で且つ大雑把な「おおだて温泉」というネーミングから、もしかしたら、という予感はしていたのですが、やはりそうだったのですか…。
    4年前に同グループの「アネックスロイヤルホテル」にも泊まったことがあったので、その時の記録を調べてみたら、源泉名はやはり「ロイヤルホテル大館」と同じ「おおだて温泉」でした。しかしながら、湯使いに関する表記が異なっていました。

    http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/de/140b212b3607dfa40cc98614c2281f93.jpg
    ↑これは「アネックスロイヤルホテル」の浴場内に掲示されていた分析書の画像です。加水:無、加温:有、循環ろ過:有、消毒:無、となっています。

    http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/49/80bb9a8a1719b685c857de6145e3687a.jpg
    ↑こちらは、今回の記事にした「ロイヤルホテル大館」で掲示されている分析書の湯使いに関する表示を拡大したものです。加水加温循環ろ過、いずれも無になっています。

    これらの表示に虚偽が無く、かつ両方ともローリーであるならば、「ロイヤルホテル大館」はなかなか贅沢なことをしているのかもしれませんね。でもローリーにしてはお湯が良いように感じられたので、本当にそうなのか、実際の湯使いや源泉状況はどうなっているのか、ちょっと頭が混乱しております(笑)。

  5. K-I より:

    Unknown
    akiraさん、こんばんは。コメントありがとうございます。複数回お会いしていたとは存じ上げず、ご挨拶もせずに大変失礼いたしました。

    >川向うの社有源泉から
    ひらがな表記で且つ大雑把な「おおだて温泉」というネーミングから、もしかしたら、という予感はしていたのですが、やはりそうだったのですか…。
    4年前に同グループの「アネックスロイヤルホテル」にも泊まったことがあったので、その時の記録を調べてみたら、源泉名はやはり「ロイヤルホテル大館」と同じ「おおだて温泉」でした。しかしながら、湯使いに関する表記が異なっていました。

    http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/de/140b212b3607dfa40cc98614c2281f93.jpg
    ↑これは「アネックスロイヤルホテル」の浴場内に掲示されていた分析書の画像です。加水:無、加温:有、循環ろ過:有、消毒:無、となっています。

    http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/49/80bb9a8a1719b685c857de6145e3687a.jpg
    ↑こちらは、今回の記事にした「ロイヤルホテル大館」で掲示されている分析書の湯使いに関する表示を拡大したものです。加水加温循環ろ過、いずれも無になっています。

    これらの表示に虚偽が無く、かつ両方ともローリーであるならば、「ロイヤルホテル大館」はなかなか贅沢なことをしているのかもしれませんね。でもローリーにしてはお湯が良いように感じられたので、本当にそうなのか、実際の湯使いや源泉状況はどうなっているのか、ちょっと頭が混乱しております(笑)。

  6. K-I より:

    Unknown
    akiraさん、こんばんは。コメントありがとうございます。複数回お会いしていたとは存じ上げず、ご挨拶もせずに大変失礼いたしました。

    >川向うの社有源泉から
    ひらがな表記で且つ大雑把な「おおだて温泉」というネーミングから、もしかしたら、という予感はしていたのですが、やはりそうだったのですか…。
    4年前に同グループの「アネックスロイヤルホテル」にも泊まったことがあったので、その時の記録を調べてみたら、源泉名はやはり「ロイヤルホテル大館」と同じ「おおだて温泉」でした。しかしながら、湯使いに関する表記が異なっていました。

    http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/de/140b212b3607dfa40cc98614c2281f93.jpg
    ↑これは「アネックスロイヤルホテル」の浴場内に掲示されていた分析書の画像です。加水:無、加温:有、循環ろ過:有、消毒:無、となっています。

    http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/49/80bb9a8a1719b685c857de6145e3687a.jpg
    ↑こちらは、今回の記事にした「ロイヤルホテル大館」で掲示されている分析書の湯使いに関する表示を拡大したものです。加水加温循環ろ過、いずれも無になっています。

    これらの表示に虚偽が無く、かつ両方ともローリーであるならば、「ロイヤルホテル大館」はなかなか贅沢なことをしているのかもしれませんね。でもローリーにしてはお湯が良いように感じられたので、本当にそうなのか、実際の湯使いや源泉状況はどうなっているのか、ちょっと頭が混乱しております(笑)。

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