前回記事「その2 二つの内湯」の続編です。
引き続き鉄輪温泉「陽光荘」のお風呂を取り上げてまいります。本館からちょっと離れたところには別館があり、本館の宿泊客は別館のお風呂にも入ることができます。一見すると生け垣に囲まれた民家のようですが、路地に面して立っている看板が、民家ではなく宿であることを示していました。門扉を開けて中へお邪魔します。
別館では特に常駐している人はいないようです。広いお庭を擁するこの平屋の建物に沿って左側へ回ってゆくと内湯の岩風呂、庭を突っ切って右側へ進んで行くと露天風呂になります。まずは岩風呂から見てゆくことにしましょう。
●岩風呂
別館の建物と湯屋に挟まれた隙間を入って内湯である岩風呂へ。
岩風呂には2つのお風呂があり、その名の通りの岩風呂の他、手前側には「小浴室」と称する浴室も付帯していました。上画像がその「小浴室」の様子です。アクリル波板で囲まれた質素な浴室は、お宿のお風呂というより、どことなく地元民向けの浴場を想像させますが、浴槽自体はなかなか大きく、本館浴室の湯船よりもゆとりのあるサイズを有しています。壁から突き出た配管より熱いお湯がチョロチョロと注がれているのですが、この湯口とは別にバルブ付きの湯口もあり、もし継ぎ足したい場合は各自でコックを開けるとお湯が吐出されるようです。お湯自体は無色透明ですが、石造りの浴槽は長年にわたって温泉成分がこびりつくことにより赤茶色に染まっていました。
「小浴室」の隣が岩風呂です。「家族湯」として貸切利用することができ、その際にはドアにある札を提げて、占有中である旨を知らせます。天井が低くて殺風景な脱衣室は、まるで倉庫のようですが・・・
「岩風呂」の室内は本館にある2つの浴室よりはるかに大きく、名前の通り岩もたくさん用いられていますので、こちらの方が温泉旅館の風情を感じることができるでしょう。窓側には扇子のような形状をした浴槽が設けられ、「小浴室」と同じく無色透明のお湯が張られています。石材の関係で湯船の中は瀝青色に輝いていますが、石板の目地などを中心として赤茶色に染まっています。
私が訪れた時は溜め湯状態でややぬるく鈍り気味でした。源泉のお湯をそのまま注ぐと熱くなってしまうため、湯加減には苦労するところなのでしょう。洗い場側にはバルブ付きの湯口がありましたので、利用時はこれを開けて新鮮なお湯を継ぎ足しました。なおコックから出てくるお湯は79.8℃という激熱。投入の匙加減に気をつけないと、湯船がすぐに熱くなってしまうため、決して開けっ放しにしないことが肝要です。
お湯は中野屋源泉を引いており、薄い塩味とほのかな出汁味、そして少々の金気味が感じられ、ツルスベとしっとり感が同時に肌へ伝わってきました。
●露天風呂
一方、別館のお庭を突っ切って右の方へ向かうと露天風呂です。「岩風呂」同様に貸切利用することができますので、利用の際には出入口にロープをかけて、他のお客さんが入らないようにしておきます。ロープの先には簡素な扉があり、その扉を開けると・・・
いきなり露天風呂が目に飛び込んできました。画像では写っていませんが、この手前側には簡素な棚があります。当地は市街地であるため、周囲を生垣や既製品の鎧戸などで目隠ししており(あまりに手作り感が強いため、目隠しというよりバリケードに見えちゃいます)、それらの向こう側には路地のミラーや電柱が立っていて、いまいち風情には欠けますが、頭上を覆う屋根や影になるような高い建物は無いため、そこそこの開放感が得られました。ただ緑豊か庭先で潅木に囲まれているという環境ゆえ、蚊がやたらに多く、ここで湯浴みをしている時に、大腿や腕など何箇所も刺されてしまいました。従いまして、この露天風呂を利用する際には、あらかじめ蚊対策をしておくと良いかと思います。
リーズナブルに宿泊できる上に、いろんなお風呂に入れ、しかも地獄釜で当地ならではの蒸し料理を楽しめる、鉄輪の魅力を凝縮したような素敵なお宿でした。余計なサービスは不要だ、自炊して誰にも気兼ねなくマイペースで過ごしたい、という旅人にもってこいですね。
(以下、別館のお風呂に関するデータ。使用源泉は岩風呂・露天風呂共通)
中野屋源泉
ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉 源泉温度およびpH表記なし 溶存物質4.098g/kg 成分総計4.155g/kg
Na+:1160.0mg(85.51mval%), Ca++:94.51mg(7.99mval%),
Cl-:1446.0mg(69.81mval%), SO4–:745.6mg(26.58mval%), HCO3-:110.7mg(3.10mval%),
H2SiO3:336.0mg, CO2:57.2mg,
(昭和52年12月26日)
岩風呂:加水あり(源泉の温度が高いため)
露天風呂:夏季に加水することあり(夏季は露天風呂清掃後、速やかにお湯を満たすため加水することがある)
加温循環消毒なし
大分県別府市井田3組 地図
0977-66-0440
ホームページ
日帰り入浴不可(1泊のみ4000円、2泊以上3500円)
備品類なし
私の好み:★★★
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