鉄輪温泉に点在する共同浴場のひとつ「すじ湯温泉」は、昭和初期に開湯して以来の長い歴史を有していたにもかかわらず、赤字などのため2015年11月に閉鎖されてしまったのですが、閉鎖を惜しむ声が集まって新しい組合が組織され、今年(2016年)4月、見事に復活と相成りました。そこで先日(6月)鉄輪を訪れた際、復活後の「すじ湯温泉」へ立ち寄ってみることにしました。
なお拙ブログでは2009年10月に取り上げており(その時の記事がこちら)、それ以来の再訪となります。
私が訪れたのは復活から2ヶ月経った6月の某日。湯屋の建物自体は以前のままとほとんど変わりないようですが、細かく見てゆくと、筋湯通り側に袖看板が取り付けられていたり、以前は単なる温泉の中継枡だったところに小さな湯雨竹が設けられていたりと、いくつかの小変化が見られました。
出入口のドアには入浴時間が掲示されていました。6:30〜20:00とのことです。
ドアを開けた正面に祀られている神様仏様に手を合わせてから、賽銭箱に湯銭を納めて男湯へ進みます。
浴室も以前とまったく変わっておらず、以前のままの姿が保たれていることにホッとしました。浴場内は脱衣スペースと入浴スペースが一体化している、別府の共同浴場で良く見られる典型的な構造です。
お湯の供給方法も別府の共同浴場によく見られる典型的な構造です。具体的に説明しますと、浴室の隅っこに湯壺があり、そこから伸びる配管が床をもぐって浴槽内でお湯を注ぐ仕組みです。湯壺の温度は59.1℃という高温なのですが、「すじ湯温泉」には洗い場を含めて冷水の類が一切ないため、加水をすることができず、このアツアツのお湯の投入量を絞って浴槽へ供給しています。このため大量掛け流しという贅沢な湯使いはできませんが、加水加温循環消毒は一切ない完全放流式であり、お湯は薄まっていない100%源泉そのものです。絞り加減は絶妙なのか、はたまた新設された湯雨竹の効果が発揮されているのか、私が利用した時の湯船は42℃前後の入りやすい湯加減になっていました。
目測で1.2m×2.4mというサイズの浴槽は、縁は石材で浴槽内はタイル張り。以前とまったく同じ浴槽がそのまま使われており、タイルの目地や浴槽のコーナー部分などを染める赤茶色は、湯屋が歩んできた長い歴史を物語っているようでした。なお湯船のお湯は無色透明ですが、澄んでいるわけではなく、ぼんやりと霞んでいるように見えます。お湯を口に含むと、塩味。薄出汁味、そして弱金気が感じられ、湯中では少々の引っ掛かりと伴いつつも、食塩泉らしいツルスベ感が肌に伝わりました。
なお上述のように、湯船・洗い場を含め浴場内には水道やそれに類するもの(井戸水など)がなく、水を使うことができません。その影響により、浴場内では石鹸やシャンプーの類が使用禁止です。風呂に浸かって湯にじっくりと対峙するのがこちらの浴場での流儀なのでしょう。
ちなみに「すじ湯」という浴場名は、神経痛や筋肉痛に効能があると言われている湯船の熱いお湯がその由来なんだとか。熱いお湯がもたらす効能を維持するために、あえて湯船に水道を引いていないんだそうです。永年にわたって湯治客を癒しつづけてきた「すじ湯温泉」の復活は、一介の温泉ファンとして実に嬉しいニュースでした。今後も末長く続いていただきたいものですね。
温泉分析書見当たらず
大分県別府市鉄輪井田4組 地図
鉄輪旅館組合公式サイト(サイト内に鉄輪の外湯を案内するページあり)
6:30〜20:00
100円
備品類なし(石鹸やシャンプーなど使用禁止)
私の好み:★★
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