ニセコ湯本温泉の有名施設「雪秩父」は、拙ブログにおいても2014年2月に記事にしておりますが(前回の記事はこちら)、その後一旦閉館を経て2015年に全面リニューアルされ、日帰り入浴施設として新たな道を歩み始めましたので、どのような姿に生まれ変わったのか自分の目で確かめるべく、営業再開から3ヶ月が経った同年(2015年)12月某日に訪問してみました。
私がリニューアルオープンした「雪秩父」を訪れたのは冬の日没後。旧施設はいかにも昭和の公共宿泊施設らしい渋くて地味な建物でしたから、その姿を想い抱きながら現地へ向かったのですが、駐車場入口に立つ電照看板を目にした時は、ここが本当に「雪秩父」なのかと我が目を疑いました。完全にゼロから建て直したのですね。駐車場へ向かうアプローチの側溝から湯気が上がっていました。
エントランス部分です。旧施設の面影は全くありませんね。以前は宿泊施設でしたが、現在は日帰り入浴専門施設として営業形態が変更されたため、建物は平屋となり、以前と比べてかなりコンパクトになりました。そのかわり外壁には木材が用いられて、周辺環境と馴染むような配慮がなされていました。また、玄関にはスロープが設けられ、バリアフリーが図られていました。
先に述べたように私が訪れたのは夕方の日没後でしたが、こちらではお昼時に限り、食堂でお蕎麦などの軽食がいただけるみたいですよ。そんな食堂や休憩用のお座敷を横目にしながら、物販品が陳列されている通路を進んで受付へと向かい、券売機で料金を支払います。なお貴重品類は受付前にあるロッカーへ預けましょう(脱衣室にロッカーはありません)。
受付前にある階段を下りて浴室へ。そういえば旧施設もフロントから階段を下って行きましたね。
脱衣室は旧施設と比べて半分以下の空間に縮小されてしまいましたが、まだ新しいだけあって隅々までピカピカに輝いており、明るく清潔感に満ちていて、使い勝手も問題ありませんでした。
お風呂は内湯と露天がありますが、まずは内湯から。
浴室は新しくて清々しく、以前と比べれば利便性ははるかに向上したのですが、極めて実用的且つ現代的で、温泉風情を感じさせてくれるような飾りは無く、御影石っぽい石板タイルと白い壁が無機質でお役所的。温泉というより公衆浴場といった佇まいのように思われました。男湯の場合は、向かって右手に浴槽が2つ並び、左側に洗い場が配置され、シャワー付き混合水栓が10基、そして立って使うシャワーが1つ、計11基のカランが1列に並んでいます。
浴場において硫黄泉と鉄鉱泉という2つの源泉が使われているのは以前と同様です。窓側に配置されている浴槽は大小2つに分かれており、手前側の大きな浴槽は、すぐそばの湯沼からお湯を引いている硫黄泉です。浴槽のサイズは(目測で)6m×3mで、湯加減は42〜3℃前後に調整されていました。湯船のお湯はグレーに強く濁り、透明度は10cmにも満たないほどで、はっきりとした硫化水素臭とともにツーンとくる刺激臭を放ち、酸味と口腔に残る苦みや痺れを有しています。泥湯を思わせるクリーミーなお湯であり、足裏やお尻など槽内に触れた肌には、硫化鉄の黒い筋が付着しました。
なお、館内に掲示されている温泉分析書は旧施設当時のものがそのまま流用されていました。
小さな浴槽は鉄鉱泉で、大きさは3m四方。ジャスミン茶のような淡い色を帯びたお湯は、ややぬるめの長湯仕様になっており、湯中では褐色を帯びた羽根状の湯の華が浮かんでいました。また湯口はクリーム色に染まっていましたが、お湯自体が持つイオウ感は弱く、まさに名前の通りの金気のお湯といった感じです。
内湯の硫黄泉・鉄鉱泉ともに完全放流式の湯使いですが、浴槽のお湯は全量が窓側の溝へ落ちて流れる構造になっているため、洗い場側へはオーバーフローしません。
つづいて露天風呂へ。カギ状に曲がる木造覆いのコリドーもリニューアルに伴って新しく作り直されたのですが、でもその造りや雰囲気は旧施設の面影を残しており、ここに至ってようやく「あ、俺はいま雪秩父にいるんだ」と実感することができました。
リニューアルされた露天風呂で大きく変更された点は、男湯と女湯で浴槽の数が異なることです。上画像は露天の構内図なのですが、女湯には硫黄泉と鉄鉱泉の両源泉を用いた4つの浴槽(そして泥湯と上がり湯)があるのに対し、男湯は硫黄泉のみで浴槽も2つだけと大幅縮小されてしまいました。男としては残念ですが、でも日本には男湯の方が大きくて立派な古いタイプの温泉施設がまだまだたくさん残っていますし、何よりも女性のハートを掴むことが利用者の増加には必須ですから、このような措置はむしろ自然な流れではないかと思われます。もしメニニズムの野郎共が騒ぎ立てたとしても、黙殺しちゃえば良いのです。
男湯の露天風呂は、楕円形の「ふれあいの湯」と四角形の「檜風呂」の2つ。「ふれあいの湯」は旧施設時代のものを流用しており、以前と同様に屋根付きの浴槽にはグレーに濁った硫黄泉が張られていました。ただ、この日の当浴槽は44〜5℃近くあり、熱い風呂に慣れているはずの私でもあまり長くは浸かっていられませんでした。湯沼のお湯を直接引き、投入量を調整することで湯加減をコントロールしているのでしょうけど、湯沼のお湯はその時々によって温度が変化しますから、私が訪れた時のように熱い場合もあれば、逆にぬるくなっちゃう時もあるのでしょうね。その不安定さこそ完全掛け流しである証と言えましょう。
一方「檜風呂」は、旧施設時代には一段上がったところに設けられていましたが、現在では「ふれあいの湯」と同じ高さに移されていました。こちらにも硫黄泉が張られているのですが、42℃前後で入りやすく、しかも屋根など浴槽を覆う構造物がないので、今回私はこの「檜風呂」に入り続け、空を見上げて冬の星々をひたすら眺めていました。なお「ふれあいの湯」「檜風呂」ともに完全掛け流しです。
露天風呂に関しては暗くて全然写りが悪いため、蘭越町公式サイト内にある紹介ページから画像を拝借させていただきました。上画像が男湯の様子です。画像中央に移る楕円形の浴槽が「ふれあいの湯」。柱に隠れてあまり見えないのですが、奥に設けられている四角い木のお風呂が「檜風呂」です。
参考までに、同じページには女湯の露天風呂の画像も掲載されていたので、こちらも拝借致しました。明らかに女湯の方が充実していますね。こんなバラエティーに富んだ露天風呂に入れる女性が羨ましいなぁ。
新しく生まれかわった内湯はかなり実用的になり、使い勝手が格段に向上した反面で個性が失われたような気もします。その一方、露天風呂は開放的で旧施設の面影を残しており、特に女湯に関しては充実していますから、当地を旅行なさる女性は是非こちらを訪れて、泥湯で美肌効果を試してみてください。
硫黄泉
単純硫黄温泉(硫化水素型) 56.8℃ pH3.9 湧出量未記載(自然湧出) 溶存物質0.161g/kg 成分総計0.557g/kg
H+:0.1mg, Na+:8.5mg(25.17mval%), Mg++:5.7mg(31.97mval%), Ca++:8.4mg(28.57mval%), Al+++:0.4mg, Fe++:0.6mg,
Cl-:4.3mg, S2O3–:1.0mg, SO4–:64.2mg(90.54mval%), HSO4-:0.3mg,
H2SiO3:65.4mg, CO2:380.7mg, H2S:14.6mg,
(平成20年11月10日)
鉄鉱泉
単純温泉 62.8℃ pH6.2 湧出量未記載(動力揚湯) 溶存物質0.746g/kg 成分総計0.841g/kg
Na+:58.3mg(36.87mval%), NH4+:0.7mg, Mg++:25.1mg(30.04mval%), Ca++:33.8mg(24.53mval%), Fe++:3.9mg,
Cl-:8.7mg, SO4–:53.5mg(16.95mval%), HCO3-:315.5mg(78.93mval%),
H2SiO3:227.6mg, CO2:95.0mg, H2S:0.2mg,
(平成19年9月10日)
北海道磯谷郡蘭越町字湯里680番地 地図
0136-58-2328
ホームページ
10:00~20:00 火曜定休(祝日の場合は翌日)
500円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★+0.5
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