小坂町立老人憩の家 あかしや荘

秋田県

 
秋田県小坂町の老人福祉施設「小坂町立老人憩の家 あかしあ荘」には温泉浴場が設けられており、外来者でも利用することができるので、ちょっと立ち寄ってみることにしました。施設としては昔からあるのですが、7年ほど前に完全リニューアルされ、黒基調のシックで綺麗な建物へと生まれ変わっております。


施設の前にはコミュニティーバスの停留所が立っています。バスは小坂町の中心部から某有名野湯の入口にあたる集落までを往復しており、その途中でこのバス停を経由するようです。括り付けてある時刻表によれば、平日は1日4本されるのですが、土曜と日曜祝日は1日2本しか運行されず、しかも午前中のみ。日曜祝日に関しては運行される日とされない日があるという変則的な運転パターンなので、観光目的でバスを使うのはちょっと難しそうです。

  
 
玄関を入り、下足場に設置されている券売機で料金を支払って、窓口に券を差し出します。老人憩の家と称するだけあって、館内は談笑できるようなくつろぎのスペースが広く確保されており、ポカポカな陽だまりのフローリングホールの向かいには、横になって休めそうなお座敷も設けられていました。またホールの一角にはキッチンもあり、公営の福祉施設でありながらアットホームな雰囲気が漂っていました。

 
脱衣室は決して広くないものの綺麗に手入れされており、備品もひと通り揃っているので、使い勝手に問題はありません。この室内で目を惹いたのが、注意喚起の張り紙です。デカデカと「うんち・おなら」と書かれたこの張り紙を小学生が見たなら、大爆笑すること間違いないでしょう。でも老人福祉施設という性質上、笑えない切実な話なんだろうと思われます。私も別の施設のスタッフさんから、お年寄りがお風呂で漏らすので困っているという話を聞いたことがあります。お年寄り本人としても、意図的に漏らしたい訳ではなく、老いた体を自分で制御しきれないのでしょうね。「子供叱るな来た道だ、年寄り笑うな行く道だ」という言葉がありますが、この大きな文字を見て、いずれは自分もこの注意を真剣に受け止めなきゃいけない歳を迎えるのかと想像すると、笑うどころか暗澹たる心境になってしまいました。

 
お風呂は男女別の内湯のみで露天風呂はありません。浴室は実用的なつくりですが、窓から差し込む陽光のおかげで明るく、綺麗に清掃されており、現代的な建材やデザインを採用しているため、快適な入浴環境が保たれていました。
最奧に据えられた浴槽の手前左右両側に洗い場が設けられ、シャワー付きカランが計7基取り付けられています。なおボディーソープなどの備え付けはないため、利用時には各自持参しましょう。

 
浴槽は(目測で)2m×4mの四角形で、大体7〜8人サイズ。上述のように陽光が燦々と降り注いでいるため、日中の浴室はとても明るいのですが、それでも湯船のお湯は強く濁っていて、浴槽内の様子が全く目視できません。このため正面に大きく掲示された注意書きが、浴槽内に段差があることを利用客に案内しています。私もこの掲示が無ければ、2段ステップがあることには気づきませんでした。

 
お湯は御影石で組まれた湯口から注がれており、湯船を満たしたお湯は反対側にある目皿より排湯されていました。館内表示によれば、循環のない放流式の湯使いなんだそうですが、加水や加温は行われているらしく、特に加温によって濃いオレンジ色の濁りが発生するものと推測されます。この湯口をよく観察しますと、下から立ち上がっている配管と上から降りてくる配管が湯口内で合流しており、後者の配管には激熱のお湯が流れているので、この施設においては、源泉のお湯を直接加熱するのではなく、ぬるい源泉のお湯に高温の沸し湯(おそらく水道水)を加えることによって温度調整を図っているのではないかと思われます。つまり先述の加水とは、単に水道水で薄めているという意味ではなく、加温用の沸かし湯を足していると解釈すべきものなんでしょうね。
余談ですが、分析書によれば、湧出温度は36.1℃だそうですから、冬季はしっかり加温する必要がありますが、夏季はむしろそのままの温度の方が気持ち良いので、季節限定で非加温のお湯を提供してくれたら、結構人気を博しそうな気がします(あくまで個人的な見解ですが)。それにしても、こんな濃い濁りが発生しちゃうお湯ですから、配管のメンテナンスには相当ご苦労なさっているものとお察しします。

お湯を口に含むと、はっきりとした金気味と薄い塩味、そして石膏感が得られます。どうしても濁りや色が強いために、金気という特徴に関心を奪われがちですが、分析書によれば硫酸イオンが2463mgも含まれており、この数値は特筆に値するほど多いかと思われます。その一方で、見た目はご近所の超有名野湯や前回記事のビニールハウス浴場のお湯と似ていますが、こちらのお湯からはあまり炭酸らしい特徴は感じられませんでした。
湯中ではギシギシとした引っ掛かりの強い浴感があり、湯上がりにタオルで体を拭おうとすると、白いタオルがオレンジ色に薄く染まってしまいました。個性的なお湯が楽しめる実力派の施設でした。

あかしあ荘源泉
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 36.1℃ pH6.9 溶存物質5534.0mg/kg
Na+:106.7mg(56.69mval%), Mg++:110.7mg(11.13mval%), Ca++:501.5mg(30.56mval%), Fe++:2.9mg, Fe+++:0.9mg,
Cl-:882.4mg(30.12mval%), I-:1.2mg, SO4–:2463mg(62.05mval%), HCO3-:385.8mg(7.65mval%),
H2SiO3:36.3mg, HBO2:36.0mg, CO2:75.5mg,
(平成19年10月30日)
加水あり(温泉の供給量の不足を補うため)
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
循環消毒なし

秋田県鹿角郡小坂町小坂鉱山字渡ノ羽58  地図
0186-29-2434

10:00~19:00(受付18:30まで) 火曜定休
350円
ロッカーあり(100円有料)・ドライヤーあり、シャンプー類なし

私の好み:★★

コメント

  1. へす より:

    イイっすね
    この地域は年に数回訪問したい地域です

    個性のある湯が多く大好きですわ
    これで日景が復活したら(・∀・)ニヤニヤもんですね

  2. へす より:

    イイっすね
    この地域は年に数回訪問したい地域です

    個性のある湯が多く大好きですわ
    これで日景が復活したら(・∀・)ニヤニヤもんですね

  3. K-I より:

    Unknown
    へすさん、こんばんは。
    >年に数回訪問したい地域
    ですよね。この辺りは東西南北へちょっと移動するだけで、いろんなタイプの温泉に出会えるので、湯めぐりに飽きることはありませんよね。それにしても、日景の復活はいつなのでしょう。願わくば津軽湯の沢も蘇ってほしいのですが(ま、こちらは無理でしょうけど…)。

  4. K-I より:

    Unknown
    へすさん、こんばんは。
    >年に数回訪問したい地域
    ですよね。この辺りは東西南北へちょっと移動するだけで、いろんなタイプの温泉に出会えるので、湯めぐりに飽きることはありませんよね。それにしても、日景の復活はいつなのでしょう。願わくば津軽湯の沢も蘇ってほしいのですが(ま、こちらは無理でしょうけど…)。

  5. ぬる湯マスター より:

    Unknown
    こんばんわ。
    いよいよ10月分の記事の突入します^^b
    いきなりの先頭が、またしても良い感じの濁り湯で^^!
    と思ったら、張り紙がとてもショッキング!!!!!
    このお湯の色合いからしたら、とてもマズいですね(><)
    発見が遅れ、二次災害の危険も予測されます、、、。
    私もここ数日、小旅行に行っておりまして
    人工ながらも温泉にも入りました。が・・・!!
    やはり天然掛け流し温泉に二時間浸からねば満足できないのです!
    いつ読んでも、羨ましい限りです^^b

  6. ぬる湯マスター より:

    Unknown
    こんばんわ。
    いよいよ10月分の記事の突入します^^b
    いきなりの先頭が、またしても良い感じの濁り湯で^^!
    と思ったら、張り紙がとてもショッキング!!!!!
    このお湯の色合いからしたら、とてもマズいですね(><)
    発見が遅れ、二次災害の危険も予測されます、、、。
    私もここ数日、小旅行に行っておりまして
    人工ながらも温泉にも入りました。が・・・!!
    やはり天然掛け流し温泉に二時間浸からねば満足できないのです!
    いつ読んでも、羨ましい限りです^^b

  7. K-I より:

    Unknown
    ぬる湯マスターさん、こんにちは。
    このお風呂で二次災害はヤバいですね(笑)。ここではありませんが、某老人施設のスタッフさん曰く、実際にそうした事件が発生するんだそうですから、ちょっと怖いです。とはいえ、いずれは自分の体も、衰えとともに筋肉や神経が弛緩して、本人の意識しないところで粗相してしまうのかと思うと、他人事と笑えなくなってきました(涙)。

  8. K-I より:

    Unknown
    ぬる湯マスターさん、こんにちは。
    このお風呂で二次災害はヤバいですね(笑)。ここではありませんが、某老人施設のスタッフさん曰く、実際にそうした事件が発生するんだそうですから、ちょっと怖いです。とはいえ、いずれは自分の体も、衰えとともに筋肉や神経が弛緩して、本人の意識しないところで粗相してしまうのかと思うと、他人事と笑えなくなってきました(涙)。

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