東鳴子温泉 久田旅館

宮城県

 
久しぶりに鳴子温泉郷を取り上げましょう。今回ピックアップするのは、東鳴子エリアの「久田(きゅうでん)旅館」です。鳴子御殿湯駅や国道47号線から行く場合、橋で川を渡って旅館「紅せん」前の丁字路を右折し、線路を潜った先の左側に位置しています。東鳴子エリアの他の宿とは離れているため、まるで一軒宿のようなロケーションです。


今回は日帰り入浴での利用です。玄関に置かれたイーゼルには、日帰り入浴に関する案内プレートが掲げられていました。これによれば内湯と露天で泉質が異なるようですね。詳しくは後ほど。帳場で直接湯銭を支払い、廊下を歩いて浴場へと向かいます。なおこちらでは鳴子温泉郷の各温泉で使える「湯めぐりチケット」の利用も可能ですよ(所要シールの枚数は2枚です)。

 
ファサードこそ渋くて素朴な、いかにも東北の湯治宿を思わせる佇まいですが、館内は部分的に修繕されており、特に浴場やその周辺は和の趣きをコンセプトにして綺麗に改装されていました。紅葉が美しい中庭を見ながら浴室の暖簾をくぐります。

 
脱衣室はややコンパクトなつくりですが、隅々まで綺麗にお手入れされており、またエアコンが設置されているので、四季を通じて快適に着替えられるかと思います。

 
日が傾きかけている時間に訪問したため、薄暗い画像になっちゃいましたが、浴室は2方向が大きなガラス窓になっているため、実際の床面積以上の広さや開放感を得ることができました。一方、室内の壁沿いには洗い場が配置され、シャワー付きカランが4基並んでいました。

 

内湯で使われている源泉は、分析書によれば「久田2号泉」と称し、泉質名としては純重曹泉と記されています。隅っこの湯口からドボドボと大量に供給されているこのお湯の特徴を大雑把に表現すると、東鳴子から川渡にかけての一帯で湧く温泉に共通して見られるモール泉的なタイプであり、湯船のお湯はコーヒーを薄めたような淡い琥珀色を帯びた透明で、少々の清涼感を伴うほろ苦味を有し、モール臭に少々の焦げ臭とアブラ臭的な匂いがミックスされて香っていました。そして湯中では重曹泉らしい大変滑らかなツルツルスベスベ浴感を楽しむことができました。

浴槽は(目測で)2.5m×3.5mの方形で、おおよそ10人サイズ。槽内はタイル貼りですが縁には御影石が採用されており、縁の切欠からお湯がしっかりと溢れ出ていました。湯温調整のため加水されているものの、贅沢に掛け流されている放流式の湯使いです。

 
ドアから屋外に出るとすぐ左手に露天風呂が設けられています。この露天風呂ゾーンは庇に覆われており、庇の先では目隠しの塀が立ちはだかっているため、庭園の木々が視界に入ってくるものの、露天風呂に期待したい開放感よりもむしろ閉塞感の方が強いのですが、温泉風情を醸し出すためか、浴槽の真上だけは東屋が設置されていました。ちなみにこの宿の真裏には陸羽東線の線路が敷かれており、私が入浴していると、タイミングよく仙台行の快速「リゾートみのり」がエグゾーストを響かせながら軽快に走り去っていきました(高い塀は線路に対する目隠しのため?)。

 
 
露天の浴槽は1.8m四方の石造り。こちらに引かれているお湯は「久田1号泉」と称し、泉質名は含食塩重曹-硫黄泉。モール泉系だった内湯とは全く異なるタイプのお湯で、湯船のお湯はわずかに青色を帯びているような灰白色にはっきりと濁っており、湯中では溶き卵のような白い湯の花がユラユラと舞っています。そして私が湯船に入ると沈殿していた湯の花が一斉に舞い上がり、濁り方がますます強くなりました。こちらのお湯も温度調整のために加水されているそうですが、私の訪問時における湯口の温度はかなり高く、その代わり湯量を絞ることによって湯加減を調整しているようであり、実際に湯船では微睡みを誘うような40℃前後の湯加減となっていました。内湯同様に放流式の湯使いであり、浴槽縁の切欠からしっかりと溢れ出ています。
お湯からはタマゴ臭と軟式テニスボール的なゴム臭がミックスされたような硫化水素臭が香り、テイスティングしてみますと塩味・卵黄味・苦味が文字通り三位(味)一体となって口の中に広がりました。私個人の感覚としては、純重曹泉の内湯よりもこの白濁露天風呂の方がツルスベ浴感を強く感じ、ヌルヌルに近いような感触も得られたように記憶しています。

タイプが異なる2つの源泉を一度に楽しめ、しかも両方のお湯ともに良質で掛け流しという、実にユニークで利用価値の高いお風呂でした。

久田1号泉
含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 68.6℃ pH7.4 蒸発残留物2666mg/kg 溶存物質3169.0mg/kg
Na+:914.3mg(96.72mval%),
Cl-:788.3mg(50.71mval%), HS-:2.3mg, S2O3–:0.5mg, SO4–:106.3mg, HCO3-:1164mg(43.50mval%),
H2SiO3:108.5mg, HBO2:46.3mg, CO2:315.3mg, H2S:1.1mg,
(平成20年10月23日)
加水あり(源泉温度が高いため)
加温循環消毒なし

久田2号泉
ナトリウム-炭酸水素塩温泉 57.5℃ pH7.2 蒸発残留物983.2mg/kg 溶存物質1284.5mg/kg
Na+:276.1mg(91.54mval%),
Cl-:88.5mg(18.74mval%), HS-:0.3mg, S2O3–:0.2mg, SO4–:30.2mg, HCO3-:614.0mg(75.41mval%),
H2SiO3:237.9mg, CO2:102.3mg, H2S:0.2mg,
(平成20年10月23日)
加水あり(源泉温度が高いため)
加温循環消毒なし

JR陸羽東線・鳴子御殿湯駅より徒歩10分(約900m)
宮城県大崎市鳴子温泉字久田67  地図
0229-84-7639
ホームページ

日帰り入浴11:00〜18:00
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

コメント

  1. へす より:


    鳴子らしく1宿で2倍楽しめる♪
    ココも好きだなぁ お宿の人の人柄もいいし
    お湯の香りもまた芳しいし(^^)

  2. K-I(異国の地で入院中) より:

    Unknown
    >へすさん
    私が訪れたときには、仙台からの来た老人の団体客が入れ違いにお風呂から上がってゆくところだったのですが、みなさん異口同音に「ここは良い」と頬を緩ませながらおっしゃっていました。
    こちらだけでなく、鳴子は一つのお宿で複数の源泉を楽しめるところがたくさんあって、飽きることがありませんね。

タイトルとURLをコピーしました