秋も深まりはじめてきたというのに、毎度のように季節感のない記事で恐縮です。今回からしばらくは今年(2016年)春に訪問した伊豆の温泉を連続して取り上げます。まずは西伊豆町の「やまびこ荘」から。
昭和48年に廃校になった小学校の校舎を宿泊施設に改装した「やまびこ荘」には温泉が引かれており、日帰り入浴利用も可能です。拙ブログでは2009年に一度取り上げていますので、6年ぶりの再訪です(以前の記事はこちら)。前回記事の画像に写っている外観と現在の姿を比べると、以前は白っぽい塗装であったのに対し、今は焦げ茶色のシックな装いに変わっています。スタッフの方に伺ったところ、2010年頃に耐震補強工事が実施され、その際に外観のみならず館内など全面的なリニューアルが行われたんだそうです。
集落の方から階段であがってくると、かつて登下校する生徒たちを見守り続けていた校門の門柱が立っています。私が訪れた時には旧校庭の外縁部でツツジが綺麗に咲いていました。
学校には欠かせないプール。こちらのプールに張られているのは、水ではなく温泉です。湯量が豊富なんですね。私が訪れたのは4月でしたが、普通でしたら屋外プールの利用には寒すぎるにもかかわらず、ここは温泉で温かいため、この時もプールで悠然と泳ぐお客さんがいらっしゃいました。
昭和の学校に必須アイテムである二宮金次郎像。台座の文字は「以徳報徳」。玄関の庇には鐘が吊り下げられていました。
館内は昭和の木造校舎らしい雰囲気を残しつつも、使い勝手を向上させたモダンでレトロなインテリアにリニューアルされており、廊下はフローリングに変わり、各室のドアも引き戸でありながら、滑りが良い現代的なスライドドアに取り替えられていました。
学級文庫や黒板など、学校らしいアイテムもたくさんありますよ。
かつての教室は客室として使われています。スタッフの方が客室を見せてくださいました。
上述の工事に伴い、教室も綺麗な和室に改装されました。なお部屋に暖房は備え付けられていますが、冷房はありません。
階段で2階へ上がってみました。廊下には共用洗面台が並んでいます。以前はステンレス板の大きな流し台でしたが、現在はデザイン性を高めたセラミック製の洗面台に取り替えられています。
素泊まりの宿ですので、宿泊する際、食事は自分たちで準備します。廊下にはポットや電子レンジ、冷蔵庫など、宿泊客が自由に使える備品が並んでいました。
さて、館内をひと通り見学したところで、本題のお風呂へと参りましょう。浴室出入口前には古いスチールロッカーが置かれており、扉には”5-8″や”5-9″などと書かれていたのですが、もしかしたら以前5年生が使っていたのかな。
脱衣室は簡素ながら綺麗。木製の棚にプラ籠が置かれており、2台並ぶ洗面台の脇にはドライヤーも用意されています。
レンガのようなタイルが貼られている浴室は以前とほとんど変わっておらず、記憶通りの姿を目にしてホッと安心しました。
お風呂は男女別の内湯のみで露天風呂はありません。でも大きな温泉プールが露天風呂の代わりになるかもしれませんね。
壁に沿って洗い場が配置されており、お湯と水の水栓ペアが計5組並んでいます。うち3組にはシャワーが取り付けられています。
窓側に大小2つの浴槽が並んでいます。いずれに対しても温泉が注がれているのですが、大小で加温の加減が異なっており、右側に配置されたタイル張りの小浴槽は1〜2人サイズで、しっかり加温されており、持参した温度計で測ってみたら42.8℃と表示されました。
お湯は浴槽内で熱交換により加温されています。その方法は後述しますが、お湯そのもののは壁に取り付けられた水栓より吐出されており、湯口では38.0℃という温度でした。湯口は硫酸塩の析出で真っ白く覆われていました。
一方、総木造の大きな浴槽は、1.8m×2.7mという寸法で、40.2℃という長湯仕様の湯加減になっていました。源泉温度は40℃未満ですから、多少加温されているものの、その程度が低く抑えられているため、お湯そのものの個性がしっかりと活きているように感じられます。
大きな浴槽にも温泉投入用の水栓があり、こちらの吐出温度は36.6℃でした。この水栓にも析出がこんもりと盛り上がってこびりついていますね。
館内表示によれば冬季は加温されているとのこと。私が訪問した春の某日も加温されていました。浴槽内にボイラーの沸し湯を流す配管を設置し、その熱で浴槽内のお湯を温める(熱交換をする)方法が採用されています。加温以外、温泉に影響を与えるようなことは行われておらず、れっきとした放流式であり、私が湯船に入ると、洗い場が洪水状態になるほどザバーッと豪快にお湯が溢れ出ていきました。
お湯は無色透明で、ほぼ無臭ですが、硫酸塩泉によくあるパラフィン系の風味があり、ほんのりとした塩味や少々の甘みを伴う石膏味も感じられます。まるで化粧水のようなトロミがあり、湯中ではスルスベとキシキシが拮抗する浴感が得られるのですが、まろやかでトロトロな滑らかさは肌への当たりが優しく、特にぬるめの大きな浴槽では体への負担も軽いため、湯浴みしながら思わず微睡んでしまいました。
湯中では優しいフィーリングでありながら、お風呂から上がるとパワフルに温まり、しばらく汗が引きません。優しさと力強さを兼ね備えたジェントルマンのような素晴らしいお湯です。
風呂上がりには、受付前の自販機で販売されていた伊豆産の牛乳「おおきモーモーみるく」を一気飲み。うん、うまい!
久しぶりの再訪でしたが、改めてこのお湯が西伊豆屈指の名湯であることを実感しました。昭和に戻ったような雰囲気や、周囲の緑豊かで静かな環境も実に素晴らしい。冬季以外は非加温なんだそうですから、ぬるめのお湯にじっくり浸かることができますね。一度宿泊して、子供の頃を思い出しながらのんびり過ごしてみたいなぁ。
大沢里3号
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉 39.1℃ pH8.9 成分総計1.758g/kg
Na+:127.9mg, Ca++:387.6mg,
Cl-:43.1mg, OH-0.1mg, SO4–:1153mg, CO3–:7.5mg,
H2SiO3:31.9mg,
(平成24年5月28日)
加温あり(冬季のみ入浴に適した温度に保つため)
加水循環消毒なし
静岡県賀茂郡西伊豆町大沢里150 地図
0558-58-7153
ホームページ
日帰り入浴12:00〜17:00(受付16:30まで。宿泊客がいない場合は16:30で閉館)
600円
貴重品受付預かり、シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★
コメント
Unknown
こんばんは。年々健康診断の結果が悪化しているあんちゃんです。毎年”要治療”で返ってくる結果を無視していましたが、いよいよ自力回復は困難と判断し、今日病院へ行きます。温泉へ行けなくなると寂しいので。
さて、やまびこ荘へは当方1回だけ行ったことがあります。再訪したいと思いつつ果たせていません。かつてこの辺りの銭湯的な公衆浴場は”温泉博士”のクーポンにも掲載されいたのですが、最近は全く載らなくなってしまいました。
Unknown
あんちゃんさん、こんばんは。
>かつてこの辺りの
知りませんでした。一部ならともかく、全く載らなくなってしまったのですか? なぜなのでしょう…。
温泉巡りは健康な体があってこそ。私も然りですが、若い頃のような自己回復力が望めなくなっているかと思いますので、病院でしっかり養生なさってください(^^)
Unknown
こんばんわ^^。
このエリアからは私の大好きな伊豆方面ですね!
西側には天窓胴を見に行っただけの一度きりですが、、、。
この様に、浴槽の温度を分けるのは本当に素晴らしい。
万座の聚楽もそうですが、是非この方式が広まって欲しいです。
やはり私は38度を希望しますね。2時間入れます^^b
この学校も、取り壊されずに済み、喜んでいるでしょう。
この様に、古き良き時代の足跡を残して欲しい物です。
余談ですが、先日 地元の古淵温泉に行ってみました。
生意気に炭酸泉で、掛け流し槽は思いの外良かったです!
灯台下暗しとはこの事でした。しばらくは地元で我慢します。
Unknown
ぬる湯マスターさん、こんにちは。返信が遅くなりまして申し訳ございません。
昔ながらの校舎を活かしたノスタルジックなこの施設。雰囲気のみならずお湯も良いので、西伊豆の温泉といえば、私はまずはじめにここが思い浮かびます。温度別の浴槽も良いですね。
>古淵温泉
16号の旧道沿いにある「おふろの王様 町田店」のことですか? まだ行ったことないのですが、良いと聞いたら行ってみたくなりました。なお同じ「おふろの王様」の相模原店(淵野辺公園の近く)でしたら、旧称(ざぶん相模原の湯)時代に二度ほど利用しており、そこそこ面白いお湯だったと記憶しています。
Unknown
こんばんわ^^。
どうかお気になさらず。
私もマイペースで読み進んでおりますので^^。
そう、お風呂の王様町田店です。我が地元なんですよ。
行ってみたら、お湯がぬるい炭酸泉ではないですか!
露天風呂は結構な量の掛け流しでさらにびっくり!
ご飯食べても2千円程度でしたので、リピ確定です。
K-1様は、内風呂は無視してまっすぐ露天へ向かうと良いですよ!
内風呂、ジャグジーはカルキ臭が結構します(><)
Unknown
>ぬる湯マスターさん
やはりあの場所でしたか。「灯台下暗し」でしたね(^^)
以前はたしか「やまとの湯」でしたよね。数年前の週末に、16号の渋滞を回避すべくあの道を通ったら、駐車場が満車で驚いたことを覚えています。そんなに良いのでしたら、ぜひとも今度行ってみます。洗い場で体を洗ったら、露天へ直行ですね(^^)