花岡温泉 2016年7月再訪

秋田県

※残念ながら花岡温泉は2020年末を以て閉館しました。

今回記事より日本の温泉に戻ります。でも、相変わらず1年前の古いネタが連続してしまいます。
いつも鮮度の悪い話題ばかりで申し訳ございません。

 

秋田県北部の大館市周辺では、かつて各所で鉱山開発が行われていましたが、資源枯渇や経済状況の変化などにより、現在では全てが閉山してしまいました。花岡鉱山はその代表的な存在であり、黒鉱を露天掘りで採掘していましたが、平成6年に閉山され、現在では鉱山跡地でリサイクル工場が稼働しています。さて、黒鉱が眠っている地下には温泉脈が一緒に存在している場合があり、この大館周辺の温泉の多くは黒鉱採掘や試掘の際に発見されたものですが、花岡の公衆温泉浴場である「花岡温泉」もそのひとつであり、鉱山が閉じられた後でも、温泉は引き続き汲み上げられ続けており、いまでも大地の恵みに浴することができます。「花岡温泉」は、建物こそ地味ですが、お湯の質は素晴らしく、多くの温泉ファンが太鼓判を押しています。かく言う私も以前入浴した時には、その素晴らしいフィーリングに感動ましたので(以前の記事はこちら)、昨年夏に再訪する機会に恵まれたので、喜び勇んで行ってまいりました。
集落の外れの川沿いにぽつんと佇む、知る人ぞ知る渋い公衆浴場です。

 
券売機で支払い、番台のおばちゃんに券を手渡して中へ入ります。左手にはカーペット敷きの休憩室があり、私も湯上がりに汗が引くまでこの部屋でひと休みさせていただきました。

 
浴室の様子は以前訪問時と全く変わっていませんでした。タイル張りのコンパクトな室内には浴槽がひとつ据えられ、壁に沿って洗い場が配置されています。洗い場に設けられているシャワーは5基。カランから出てくるお湯はボイラーの沸かし湯ですが、ボイラーに問題があるのか、たまに熱いお湯が出てきてしまうんだとか。脱衣室には使用上の注意が掲示されていましたので、利用の際は念のためにご一読を。

 
浴槽は台形を逆さまにしたような形状をしており、最大寸法で幅2m強×奥行3m強。浴槽はタイル張りですが、縁には御影石が用いられており、その縁からお湯が惜しげもなく大量に溢れ出ていました。

 
温泉の供給口は2つあり、ひとつは焼き物の獅子、そしてもうひとつは槽内底部まで入り込んでいる塩ビ管です。獅子の口から吐出されるお湯は若干ぬるめである一方、配管から出てくるお湯は適温でした。後者の方が外気に触れないので温度低下しないのかもしれません。なお源泉温度は40℃弱ですので、入浴に適した温度にするため加温されていますが、加水循環消毒は行われていない放流式の湯使いです。


お湯は無色透明でふんわりと石膏臭が香り、お湯を口に含むと石膏甘味や薄い塩味、そして微々なタマゴ味が感じられるのですが、とりわけ石膏甘味がしっかりと味覚に響くのが印象的です。お湯に浸かるとツルスベの中に弱い引っかかりが混在する浴感が伝わってくるほか、肌の細かなシワ一本一本に滲みいってくるようなシットリ感とともに、とても軽い羽毛布団をかぶせられたようなふんわりと包んでくれるような優しい温もりも得られ、目を瞑るとそのまま微睡んでしまいそうになるほど、なめらかで優しいお湯です。また1分以上じっと湯中に浸かっていると、全身に気泡が付着し、浴感がより一層軽やかでまろやかになりました。一般的に硫酸塩泉は、湯船へ入った瞬間に肌がピリッとする刺激や、パワフルな温まりなど、どちらかとえばアグレッシヴな感覚が目立つものですが、こちらの温泉は、少なくとも入浴中はその対極と表現したくなるような優しくまろやかなフィーリングを楽しみことができました。もちろん、硫酸塩泉としての温浴効果はしっかりと働き、湯上がり後は長い時間に及んで汗が引かず、優しさとともに力強さを兼ね備えていることがよくわかりました。

湯屋こそ地味で質素ですが、お湯は大変良質であり、今回の再訪でその素晴らしさを再認識することができました。

カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉 39.6℃ pH8.2 溶存物質2399mg/kg 成分総計2489mg/kg
Na+:243.3mg(30.29mval%), Ca++:481.2mg(68.73mval%),
Cl-:231.4mg(18.31mval%), Br-:0.5mg, HS-:0.2mg, SO4–:1374.4mg(80.27mval%), HCO3-:22.9mg,
H2SiO3:32.7mg, CO2:90.1mg,
(平成26年10月9日)
加温あり(入浴に適した温度を保つため)

秋田県大館市花岡町字長森65-2-1
0186-46-1171
※残念ながら花岡温泉は2020年末を以て閉館しました。

4月~11月→6:00~21:00, 12月~3月→7:00~21:00, 不定休
250円
ドライヤー(有料10円)・ロッカー(有料100円)あり、石鹸やタオルなど販売あり、

私の好み:★★★

コメント

  1. ぱと より:

    Unknown
    こんばんは、K‐Iさんの記事を見てると今年も東北に行きたくなってしまいますね、けど昨日10泊11日39湯の北陸、山陰、山陽、紀伊半島、中部の旅から帰ってきたばかりなので無理ですね(涙)色々有りましたけど中々の温泉旅でした

  2. K-I@アメリカ より:

    Unknown
    ぱとさん、こんにちは。
    >10泊11日39湯
    すごい!! しかもそのルートも本州の真ん中から西側をグルッと回る、かなりの長距離ですね。色々あったとのことですが、総じて捉えればきっと充実した湯めぐりになったのではないでしょうか。特に西日本はなかなか行きにくいので、私も行きたいものです。印象深い温泉があれば今度教えてください。

  3. ぱと より:

    Unknown
    こんばんは、日本海側廻りで花岡温泉に来ちゃいました!なんだかんだ4日目です、青森入りして久吉たけのこ温泉で全身和彫りのお兄さんに碇ヶ関の三笠食堂の味噌ラーメンが美味いと教えて貰い行ったのですが当たりでした、碇ヶ関に通過の時は一度如何ですか?まだまだ旅は続きます!

  4. K-I より:

    Unknown
    ぱとさん、こんにちは。
    東北4日目ですか!? 先日の西日本、そして今回の東北。旅のスタミナ、すごいですね。花岡温泉は本当に素晴らしいですね。碇ヶ関の三笠食堂は国道7号沿いですよね。何度も目にしていますが、入ったことはありませんでした。今度機会があれば味噌ラーメンを食べてみます。

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