東鳴子温泉 勘七湯

宮城県

 
鳴子温泉エリアで宿泊したある日の晩、東鳴子温泉の「勘七湯」で立ち寄り入浴させていただきました。このブログで取り上げるのは初めてですが、私個人としては3回目の再訪です。湯めぐりシールを片手に訪うと、この日も誠実で実直なお人柄が伝わってくるご主人が快く受け入れてくださいました。

 
館内には大きさが異なる二つの浴場(いずれも内湯)があり、日帰り入浴でも両方に入ることができます。まずは男女別の大浴場から。

●大浴場

こちらが大浴場の入口。

 
全面タイル張りで実用的な浴室には、二つにセパレートされた浴槽、そして洗い場が設けられており、洗い場にはシャワー付きカランが4基並んでいます。

 
大浴場では東鳴子エリアの各宿に分配されている共同源泉(赤湯源泉)が使われています。二つに分かれた浴槽は、室内の壁や床と同様にタイル張り。双方には同じ源泉のお湯が張られているのですが、左側の大きな浴槽は適温、右側の小さな浴槽は熱めの湯加減になっていました。

 
小さな観葉植物の鉢が置かれた湯口から熱いお湯が双方へ落とされています。長年にわたって温泉成分が接することにより、浴槽側面などを中心にトゲトゲが発生していました。このお湯の見た目は薄っすら褐色を帯び、光の当たり方によっては黒ずんでいるようにも見えますが、透明度自体は高く、湯中では黒い湯の華がチラホラ舞っています。湯面からは東鳴子のお湯らしい淡いアブラ臭が漂い、重曹泉らしいほろ苦みが感じられます。お湯に浸かるとトロミを伴うツルスベ浴感が肌をすべり、その滑らかさには「さすが東鳴子のお湯は良い」と唸りたくなりました。

●不老泉(小浴場)

大浴場の共有源泉を楽しんだ後は、一旦服を着てから廊下に出て、「不老泉」と名付けられている小浴場の暖簾をくぐりました。温泉ファンの皆さんは、敢えてこの小さなお風呂を好んで入るのですが、その理由は後ほど。

 
家族風呂のようなコンパクトな浴室は、大浴場と同じくオフホワイト系のタイル張りで、やはり実用本位といった趣きです。一応窓はあるものの、壁の上部に取り付けられているため、入室中にはあまり開放感が得られません。貸切利用もできますから、宿泊時には便利かもしれませんが、これだけなら、日帰り入浴でわざわざ小さいお風呂に入らなくても良さそうなものです・・・


洗い場も申し訳程度にシャワー1基取り付けられているのみですが、この洗い場の前に佇む謎の扉の向こうには、小浴場の利用価値を高めているあるものが隠されているんですね。

 

この小さなお風呂に張られているお湯は「勘七源泉」という自家源泉であり、上述の洗い場前のドアを開けるとすぐに貯湯タンクが設置されていて、そのタンクからわずか数十センチという短距離で湯口へお湯が供給されているのです。コンパクトな浴室ながら浴槽は3〜4人サイズを有し、室内面積の半分ほどは浴槽で占められているほど。湯口から注がれるその自家源泉は、淡い麦茶色を呈しており、湯中では黒い湯の華が大量に浮遊しています。中にはワカメの破片みたいな大きなものまで沈殿しています。そして湯口からは東鳴子温泉ならではのアブラ臭が香ってくるのですが、その香りは共同源泉(赤湯源泉)のそれよりはるかに強く、しかも芳しく、ほのかにモール泉のような金気的な匂いすら含まれているようです。口に含むと清涼感を伴うほろ苦味が感じられ、そんな味覚からもわかるように、お湯に浸かると重曹泉らしいヌル・ツル・スベの三拍子が揃った大変なめらかで優しい浴感に抱かれます。少々熱めの湯加減なのですが、お湯がフレッシュなので、むしろその熱さがとても気持ちよく、入浴中は肌がとても滑らかになり、湯上がり後は適度に粗熱が抜けてくれるため、温浴効果を持続しながら爽快感も同時に楽しめます。溶存物質1001.0mgなので、温泉法的にはギリギリのところで重曹泉を名乗れているような状況なのですが(1000mgを下回ると単純泉になっちゃいます)、お湯の新鮮さが数値の低さを補って余りある働きを発揮しているのかもしれません。

建物自体はちょっとお疲れのようですが、念入りなお手入れによって館内は綺麗に維持されており、またいつ訪れてもスタッフの方が気持ちよく対応してくださるため、素晴らしい自家源泉のフィーリングと相まって、こちらのお宿には常に良い印象が残ります。鳴子エリアの優しさと懐の大きさを実感させてくれるお宿かと思います。

(大浴場)
混合泉(新井第2号泉・動力揚湯源泉・新井5号泉・唐竹沢源泉)
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 66.4℃ pH7.4 溶存物質1303.5mg/kg 蒸発残留物1052mg/kg
Na+:269.7mg(84.03mval%), Ca++:24.7mg(8.81mval%),
Cl-:104.8mg(20.23mval%), HS-:0.7mg, SO4–:113.4mg(16.13mval%), HCO3-:565.6mg(63.36mval%),
H2SiO3:180.8mg, CO2:77.0mg, H2S:0.3mg,
(平成25年10月8日)
加水あり(源泉が高温のため)
加温循環消毒なし

(小浴場「不老泉」)
勘七源泉
ナトリウム-炭酸水素塩温泉 51.1℃ pH6.8 10.0L/min(掘削自噴) 溶存物質1001.0mg/kg 成分総計1147.7mg/kg
Na+:182.1mg(82.76mval%), Ca++:8.0mg,
Cl-:38.4mg(11.10mval%), HS-:0.2mg, S2O3–:0.2mg, HCO3-:508.9mg(85.71mval%),
H2SiO3:213.8mg, CO2:146.3mg, H2S:0.4mg,
(平成21年10月2日)
加水加温循環消毒なし

宮城県大崎市鳴子温泉字赤湯18  地図
0229-83-3038
ホームページ

日帰り入浴8:00〜20:00
500円(もしくは湯めぐりシール2枚)
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★

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