前回記事に引き続き青森県の温泉を巡ります。復活した「温川山荘」のお風呂から出た私は、そのまま国道102号を北上して黒石市に入り、黒石温泉郷の一角をなす板留温泉へ向かいました。今回訪ねるのは「旅館あずまし屋」です。津軽弁で「落ちつく、安心する、気持ちいい」といった場面で使われるあずましいという形容詞を宿名にしているこちらのお宿は、つい最近まで老舗「丹羽旅館」として営業していましたが、経営者が入れ替わり、新たな宿として再スタートを切ることになりました。なお以前の「丹羽旅館」時代にも私は日帰り入浴でお邪魔しているのですが(その時の記事はこちらをご覧ください)、名前が変わった今回も日帰り入浴で訪うことにしました。
板留温泉は浅瀬石川に沿って数軒の旅館が軒を連ねる小さな温泉地ですが、その中でもこちらのお宿は最も規模が大きいのではないでしょうか。リニューアルに伴い看板が掛け替えられ、また駐車場の看板もわかりやすく掲出されていました。
こけしが左右に侍らう玄関の前には、立ち寄り入浴の案内が掲示されていました。青森県の温泉では珍しいのですが、板留温泉の各旅館は日帰り入浴のハードルが比較的高く、私も他のお宿でいままで何度か断られていますので、こうした案内はとても嬉しく助かります。
ジャズが流れる館内に入り、帳場で入浴をお願いしますと、スタッフの方が快く対応してくださいました。なお日帰り入浴客は玄関でスリッパに履き替えます。
リニューアルに伴って階段を上がった屋上に星空露天なるものが設けられたのですね(以前もありましたっけ?)。でも今回はそちらへ入っておりません。以前と同様に内湯へ向かいます。例えオーナーが代わって宿のコンセプトが一新されたとはいえ、建物自体は基本的に以前と同じ状態ですから、女湯の隣に男子トイレが、そして男湯の隣に女子トイレが、というあべこべな構造は変わっていません。しかもトイレの壁紙が妙に派手。これらは丹羽旅館時代の名残と言えるでしょう。
自動ドアの開閉ボタンが、ドアではなく壁に固定されている不思議な構造も丹羽旅館時代のまま。
脱衣室の様子も、多少綺麗になったものの殆どは以前とあまり変化ありませんが・・・
壁にはあずまし屋オリジナルの板留温泉説明プレートが掲出されていました。室内に掲示されている保健所の許可証によれば、このお宿の運営主体は株式会社ツガルサイコーという会社。この社名は以前拙ブログでもご紹介したことがあるのですが、覚えていらっしゃいますでしょうか。この宿と同じく板留温泉にあり、一度は廃墟になってしまったユースホステルを見事に蘇らせた「森のあかり」という素敵なお宿もツガルサイコーが運営しています。この他、川の対岸の落合温泉にある「津軽こけし館」や大川原の「お山のおもしえ学校」なども手がけており、黒石エリアの観光業によって地域振興を頑張っている素敵な会社なんですね。ネットで「丹羽旅館」が「あずまし屋」として生まれ変わったことを知った際、お風呂のお湯の使い方が改善されたという情報も同時に得たのですが、私が泊まってとても良い時間を過ごせた「森のあかり」を運営している会社なんですから、良くなるのは当然だと納得。期待に胸を膨らませつつ、内湯の扉を開けました。
内湯は特に大きく改修されることなく、以前の設備がそのまま使われており、壁に沿ってL字型にシャワー付きカランが7基設置されています。主浴槽は(目測で)1.8m×3.5mの四角形です。
かつて循環と源泉のお湯がミックスして吐出していた浴槽角の湯口からは、この日も熱めのお湯が浴槽へ供給されていましたが、再出発後の現在、ここから出ているお湯はおそらく源泉のお湯のみかと思われます。
内湯のOFの全量は露天へ流れる。
「丹羽旅館」時代に取り上げた拙ブログの記事でもご紹介していますが、内湯の浴槽には大きな穴が露天風呂側に向かってあいています。内湯浴槽のお湯はここから露天風呂へ流れているのですね。つまり内湯が上流で露天が下流なのです。
さて、その露天風呂に出てみました。
周囲を石材で固め、床や浴槽内をグレーで統一したた日本庭園風の露天風呂。目の前に法面が立ちはだかっているため、景色を眺めながら入浴を楽しむことはできませんが、空間自体はゆったりしているので、露天ならではの開放感を得ながら湯あみを満喫できるかと思います。
内湯の浴槽にあいた大きな穴は、↑画像のように露天浴槽の内部につながっており、その穴を流れてくる内湯のお湯によって露天の浴槽が満たされていました。またこの他↑画像の手前側に写っている塩ビのパイプからもチョロチョロとお湯が供給されていました。
露天風呂にも内湯のような湯口があり、蓋には白い析出がびっしり付着していますが、私の訪問時にはお湯が全く出ていませんでした。丹羽旅館時代はここからも熱いお湯が出ていましたが、現在は湯使いを変更し、掛け流しにする代わり、内湯を上流、露天を下流とするフローに統一させているのかもしれません(あくまで私の勝手な推測なので誤っていたらゴメンなさい)。
露天の浴槽も内湯とほぼ同じ大きさのタイル貼り。下流である露天でお湯はオーバーフローし、排水溝へと流れ去っていきます。
こちらに引かれている源泉は板留3号泉ですから、当温泉地の他施設と同じです。無色透明で石膏系の香りと甘みがあるほか、芒硝の味も含まれています。湯中では弱いツルスベと引っかかり浴感が混在し、肌にしっとりと馴染んでくれます。「丹羽旅館」の頃は塩素消毒されていたはずですが、再出発後の現在は無くなり、その代わり加水により適温に調整されるようになりました。私の訪問時は、内湯で適温、露天でややぬるい感じの湯加減になってい、あしたが、人によっては内湯の適温もぬるく感じるかもしれません。とはいえ長湯仕様の湯加減ですから、体への負担が軽くて済みます。お湯を大切にするツガルサイコーさんならではの湯使いと言え、改めて板留のお湯の良さを実感することができました。
板留3号源泉(代替泉)
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉 60.6℃ pH7.39 438L/min(動力揚湯) 溶存物質1.861g/kg 成分総計1.871g/kg
Na+:238.1mg(42.58mval%), Ca++:265.4mg(54.42mval%),
Cl-:176.5mg(20.39mval%), SO4–:873.6mg(74.49mval%), HCO3-:71.1mg,
H2SiO3:102.4mg, CO2:10.0mg,
(平成23年10月12日)
青森県黒石市板留宮下23
0172-54-8021
ホームページ
日帰り入浴11:00~15:00
500円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカーなし
私の好み:★★+0.5
コメント
Unknown
ぬる湯マスターさん、こんばんは。
そのご意見、私も完全に賛同します。掛け流しのお湯が溢れて行く様を見ているだけで、実に愉快爽快豪快。ウキウキしますね。大地の恵みを贅沢に楽しめる幸せを実感できます。設備面や接客などで多少難があっても、豪快にオーバーフローしてくれたら、そうしたことなんてすっかりお湯に流せちゃいます。