竹倉温泉 みなくち荘

静岡県


(2020年3月訪問)
今回記事から再び1年前の訪問記録へ戻ります。
言わずもがな伊豆には大変多くの温泉が湧いていますが、今回訪ねる三嶋郊外の竹倉温泉は極めて異色な存在であり、鄙び温泉ファンから熱い支持を受けています。どんなところが異色なのか、実際に行ってみましょう。
まずは伊豆箱根鉄道駿豆線の三島二日町駅で下車。電車を熱心に見つめる少年の後ろ姿に、同じく電車が大好きだった子供の頃の自分を重ね合わせ、つい想い出に浸ってしまいました。


私は今回駅からの足として、シェアサイクル「HELLO CYCLING」を利用しました。利用には事前の会員登録が必要ですが、一度アカウントを取得しちゃえば、全国どこでも利用が可能なので非常に便利です。


三島二日町から東に向かって県道をひた走り、「竹倉温泉」バス停で路地へ右折。


駅から自転車を漕ぐこと12~3分で、目的地の「みなくち荘」へたどり着きました。竹倉温泉には以前複数の旅館が営業していましたが、現在ではこの「みなくち荘」1軒のみ。


駐車場の片隅に建つ石碑には「昭和三十八年八月吉日 竹倉鉱泉開業記念」と刻まれています。開業当時、「みなくち荘」は旅館だったのですが、現在は日帰り入浴(及び休憩)に限っているんだとか。


自動ドアの玄関を入って左側にあるカウンターで料金を支払います。木造の建物はかなり年季が入っていますが、さすがに旅館だっただけあり、帳場周りのロビーはゆったりとした造りです。なおロビー奥に貴重品用ロッカーが設置されていますので、入浴の際には利用しましょう。

廊下を右手に進んだ突き当りが浴室です。脱衣室は至ってシンプルですが、扇風機とエアコンが用意されており、湯上り後のクールダウン対策は万全です。そして注目すべきは流し台の水。壁には「飲用の湧き水です」と張り紙が掲示されているんです。実際に飲んでみたところ、とっても飲みやすく清冽でおいしい水でした。お風呂上りに是非どうぞ。


窓の外に田園風景が広がる浴室には湯治宿のような長閑な雰囲気が漂っています。
室内は黒くて丸い豆タイル張りで、床も壁も浴槽もみんな同じようなタイルなのですが、部分的に白い筋を入れることによりアクセントをつけています。お風呂は男女別の内湯のみで、浴槽もひとつだけです。


男湯の場合、浴室入って右側に洗い場が配置されており、シャワー付きカランが3つ並んでいます。


窓の外に広がる長閑な景色。訪問時の窓外に見えたのは柑橘類の苗木でしょうか。伊豆と言えば柑橘類の産地ですもんね。


浴槽はUの字を描いた形状で、詰めれば7人、足を伸ばせば4人ほど入れそうな容量があります。こちらのお湯の特徴は見てわかるように、橙色に濃く濁った色。いわゆる赤湯ですね。浴槽のみならずそのまわりもお湯の影響のより赤く染まっています。


加温されたお湯は石積みから出ている塩ビよりトポトポと注がれており、また浴槽内2ヶ所からは気泡も出ていました。源泉温度が14℃なので加温しているほか、循環・消毒も行われています。このため浴槽外へのオーバーフローは見られません。該当する泉質名が無い所謂規定泉なのですが、そんなことが信じられないほど色や濁り方が強く、透明度は30センチ未満。入浴中はまるでオレンジジュースのお湯に浸かっているかのような気分になります。とりわけ鉄分の主張がはっきりしており、お湯を口に含むと鉄分らしい味や匂いが感じられますが、とはいえ強い濁り方から想像できるほど強くなく、比較的マイルドです。鉄分を多く含むためか、温浴効果が実に高く、非常に良く温まりますので、湯上り後は逆上せに注意。洗面台から出る湧き水でしっかり水分補給しましょう。

無色透明なお湯が多い伊豆にあって、こうした赤湯の鉱泉は非常に異色の存在であり、お湯自体も実に個性的です。鄙びた雰囲気も相まって熱心なファンが多いと聞きます。私が訪ねた時も、お客さんが出たり入ったりを繰り返しており、一定の固定客がいらっしゃるようでした。貴重な施設ですので、皆さんで支えながら末永く営業を続けていただきたいと切に願います。

水口荘1号
温泉法の温泉に該当(総鉄イオンの項による)
14.1℃ pH7.1 35L/min(動力揚湯)
Na+:10.2mg(18.36mval%), Mg++:6.6mg(22.47mval%), Ca++:17.3mg(35.09mval%), Fe++&Fe+++:13.0mg(19.26mval%),
Cl-:11.1mg(12.94mval%), HCO3-:120mg(81.28mval%),
H2SiO3:52.0mg, CO2:10.6mg,
(平成21年3月19日)

静岡県三島市竹倉21
055-975-3791
紹介ページ(三島市観光協会公式サイト内)

9:00~20:30(受付19:30まで) 第4火曜定休
600円(2021年1月3日よりこの金額へ変更)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

コメント

  1. あんちゃん より:

    Unknown
    おはようございます。
    自分が温泉巡りを始めた頃、竹倉温泉には3軒の入浴できる宿がありました(当時内1軒は既に休業状態でした)が、現在では残念ながら水口荘のみとなってしまいました。昨年だったか、もう1軒は健在だろうかと思い現地確認に向かったのですが、全く見つけられず。当時の記憶と照らし合わせ、どうやら跡地らしき場所を特定しました。しかし、そこには広い敷地にぽつんと1軒の民家が建つだけでした。当時の旅館は完全に取り壊され姿を消していました。
    このコロナのせいで姿を消す温泉宿も増えていることでしょう。そうでなくとも温泉宿は斜陽ですから……。残念です。

  2. K-I より:

    Unknown
    あんちゃんさん、おはようございます。
    観光名所から外れている鉱泉にとって時の移ろいは残酷なものなんでしょうね。言わずもがなですが、そもそも旅行の形態が変化している一方で、時代の変遷に対し、構造的に対応できにくいのが、規模の小さい鉱泉宿や温泉宿の難しいところなのかと思っています。かつてのように日本経済が右肩上がりで借金しない奴はバカだと言われていた時代はとっくに過ぎ去り、借入金がただひたすら重荷になる今の世の中で、投資できる余裕が無く後継者もいないとなれば、私のような一介の客が感傷的に「頑張って続けてください」と言っちゃうのは、はなはだ無責任なのかな、なんて思ったりもします
    昨年も廃業の情報が相次ぎましたが、今年も続くのかと思うと、いたたまれません。

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