三斗小屋温泉 大黒屋 その3(お風呂)

栃木県

(2020年8月中旬訪問)
前回記事の続編です。
真夏でも清涼の地、那須岳の山中に湧く三斗小屋温泉「大黒屋」で、快適な一晩を過ごした記録を綴っております。


こちらのお宿には大小のお風呂があり、1時間ごとに男女の暖簾を掛け替えています。もちろん両方とも温泉が引かれています。
館内のあちこちに時間割が掲示されていますので、よく見て確認しながらお風呂を利用します。前回記事でも触れましたが、こちらは夜9時が消灯ですので、お風呂の利用も夜9時まで。翌朝は6時から入浴可能です。

●大浴場

大浴場は本館の廊下と直接つながっている総木造の浴舎で、屋根には湯気抜きも設けられ、徒歩でしか到達できない山中の宿とは思えないほど立派な作りです。


窓外の梢越しには遠方の稜線が眺められます。また窓を全開にすることで、実質的な半露天状態にすることも可能です。真夏に自然豊かなロケーションで露天風呂に入ると、往々にしてアブに襲われますが、少なくとも私の利用時にそのようなことはなく、山の清らかで涼しい空気に抱かれながら安心して湯浴みできました。


浴槽はちょっと深めの造りで、(目測で)1.8m×2.4mの浴槽を二分しています。浴槽の縁は木なのですが、槽内は青く黒光りしています(岩盤なのでしょうか)。訪問時、源泉が注がれる湯口側は熱くて入れなかったので、私は手前側に入りました。この手前側は(同じく目測で)1.2m×1.8mで2人~3人サイズでしょうか。湯口側のお湯が流れてくるこちら側もちょっと熱かったのですが、それでも大変気持ち良く、瞑目しながらじっくりゆっくり湯浴みを堪能させていただきました。


二つのお風呂にはそれぞれ異なる源泉が引かれています。大浴場に引かれているのは1号源泉で、湧出温度50℃以上のお湯がそのまま浴槽へ注がれています。山の中ですから加温や循環などの設備など導入できるはずもなく、完全かけ流しの湯使いであり、湯量も豊富です。そんなお湯の見た目は無色透明で、匂いもほとんど無く、口にしてみると薄い石膏や芒硝の風味が感じられます。サラサラとした浴感でありながら、体の芯までよくあたたまり、実に良いお湯です。


脱衣室に掲示されている筆書きの効能説明は明治時代のもの。当然後世に書き直されているかと思いますが、三斗小屋温泉は昔からあるということを伝えてくれます。

●岩風呂(小浴場)

一方、廊下の突き当たりから更に奥へ進んだところにある小さなお風呂が「岩風呂」です。脱衣室には二槽式洗濯機が設置されていましたが、これはあくまで業務用であり、客は使えないかと思います。


浴槽はいびつな円形の2人サイズ。詰めれば3人入れるかもしれません。青く黒光りする岩の浴槽の周りをモルタルで固めており、湯口にも飾りのような岩が置かれています。


岩風呂に引かれているお湯は3号泉。源泉湧出が41℃なので湯船もぬるめです。そして湯温低下を防ぐためか、湯口の塩ビ管を槽内まで伸ばしてお湯を投入しています。私が訪問した日のような夏ですと爽快感を覚える適温ですが、それ以外の季節ではかなりぬるく感じるのではないでしょうか。分析表を見ますと、大浴場の1号源泉とほぼ同じような成分構成および溶存物質量なのですが、実際のお湯を手に取ってみますと1号よりも風味が若干薄く、まさに単純泉といった感じでした。浴槽が小さいためか湯量が相対的に多く、私が湯船に入るとザバっと豪快に溢れ出ていきました。景観や雰囲気を楽しめるような環境ではありませんが、静かで落ち着けるお風呂です。

徒歩でしか行けない温泉である那須岳の三斗小屋温泉には、露天風呂を有する「煙草屋旅館」と、今回取り上げた旅館の風格を有する「大黒屋」の2軒があり、それぞれ趣きが異なるため甲乙つけがたく、いずれも素晴らしいお宿です。無雪期に三斗小屋温泉まで行くなら難易度が低いルートでたどり着けますので、那須岳へ何度も通って、その都度宿を変えてみるの良いですね。今回の「大黒屋」でも大変快適なひと時を過ごすことができました。

1号源泉
単純温泉 51.6℃ pH6.8 17.2L/min(自然湧出) 溶存物質0.642g/kg 成分総計0.666g/kg
Na+:41.9mg(28.00mval%), Ca++:61.4mg(47.11mval%), Mg++:17.0mg(21.55mval%),
SO4–:249.4mg(77.55mval%), HCO3-:90.0mg(22.03mval%),
H2SiO3:172.6mg, CO2:23.9mg,
(2019年8月9日)

3号源泉
単純温泉 41.8℃ pH6.5 35.9L/min(自然湧出) 溶存物質0.443g/kg 成分総計0.462g/kg
Na+:28.9mg(29.54mval%), Ca++:39.0mg(45.62mval%), Mg++:11.2mg(21.66mval%),
SO4–:177.0mg(85.84mval%), HCO3-:35.7mg(13.61mval%),
H2SiO3:145.4mg, CO2:18.9mg,
(2019年8月9日)

栃木県那須塩原市三斗小屋温泉
現地090-1045-4933
予約専用0287-74-2309(平日8:30~18:30)
ホームページ

営業期間:4月中旬~12月上旬(冬季休業)
1泊2食付き税込10,000円(このほか入湯税200円)、子供料金は公式サイトでご確認ください。
入浴のみの利用不可。

私の好み:★★★

コメント

  1. ぬる湯マスター より:

    Unknown
    こんばんわ^^。
    今回は山小屋旅館ですね。
    行灯代わりのランプが大変良い味を出してます。
    21時を過ぎても起きていると、担任の先生風の方が、
    怒気を孕んで躍り込んできそうな気がします^^;
    この様な旅館でこそ、一人旅の醍醐味を味わえますね。
    私は酒を嗜まないのですが、山中で切り株に腰を下ろし、
    そこで食べるオニギリが至高の味に変わるのは良く分かりますよ^^。
    大自然の風景こそ、何にも代えがたいスパイスなのですね。

  2. K-I より:

    Unknown
    ぬる湯マスターさん、こんばんは。
    スマホやPCなどから隔絶された環境だからこそ、自然の気持ちよさを存分に感じられ、心から健康になれました。また、おっしゃるように大自然の風景、そして自分の足で歩いた疲労感が、単なるおにぎりを格別の料理へと変貌させるスパイスになってくれます。最近仕事で疲れ気味なので、再訪して癒されたいものです。

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