むつ市川内町の寒村にポツンと佇む湯野川温泉。当地の日帰り温泉入浴施設である「濃々園」は、ヒバと漆喰により建てられた建物が、公営でありながらまるで老舗の和風旅館のような落ち着いた雰囲気を醸し出しており、周囲の山や清流と絡めてカメラに収めてみますと、絵葉書のような良い絵柄にまとまります。私は5~6年前に一度こちらへ訪れたことがあるのですが、当時の記憶が薄れつつあったので、下北半島へ旅した先日、改めて湯浴みして記憶を補完すべく立ち寄ってみることにしました。
施設の前を流れる川の対岸にある小さな集落で、源泉井戸と思しき施設を発見。温泉分析表に記載されている源泉の所在地から推測しますと「濃々園」のお湯もここから引かれているものと思われます。
玄関を入った正面に設置されている券売機で料金を支払い、左手にある受付のおじさんに券を提出します。受付から浴室へ向かう廊下の壁には、映画「飢餓海峡」にまつわるスチール写真が展示されていました。
ウッディーな脱衣室は建物の大きさの割にはこぢんまりしており、棚も9つほどしかありませんが、観光客向けの施設ですから、必要最小限のものは用意されています。なおドライヤーはコインタイマー式です。
壁や浴槽などにヒバ材を多用しており、川を臨む大きなガラス窓が印象的な浴室。
室内の左右に分かれてシャワー付き混合水栓が計6基シンメトリに設置されており、また室内手前側にはサウナも設けられています(水風呂はありません)。
頭にチビのカエルを載せた石造りのカジカガエルの口からお湯が吐出され、ヒバ造りの湯船には無色澄明のお湯が満たされており、浴槽縁からふんだんに溢れ出ています。ヒバの浴槽におしりを沈めると実に心地よい肌触りです。お湯を吐き出すカエルの口の下部(顎)には白い析出がビッシリ付着していました。館内表によれば内湯のお湯は加水されているそうですが、れっきとした放流式の湯使いとなっており、薄っすらと石膏の味と匂いが感じられるとともに微かな甘味も有していました。また実際に入浴しますと優しいフィーリングが全身を包んでくれ、湯上がりもサッパリ爽快です。
内湯浴槽の左脇にあるドアを開けて屋外に出て、澄み切った川と対岸の木々を眺めながら階段を下りると、内湯の下に半分潜るような構造の露天風呂が据えられています。ちょっとした洞窟風呂みたいですね。ヒバの質感を存分に活かした内湯と異なり、こちらは全面的に石のイメージを打ち出しています。なお浴槽の手前側のスペースにも湯船から溢れ出たお湯が浅く浸されており、ここで足の裏を濯いでから湯船へ入るような感じになっています。
露天風呂でもカジカガエルが佇んで入浴客を見つめており、そのカエルの下からお湯が槽内供給されていました。内湯と異なりこちらでは塩素による消毒が行われており、実際にお湯からは鼻を突く塩素臭が放たれていました。また外気の影響か、この日はぬるめの湯加減でした。
露天風呂に浸かりながら景色を眺めると、玉石敷きの向こうに清らかな渓流と紅葉が広がっており、しばし時間を忘れてその光景をボンヤリと眺め続けてしまいました。これでお湯から塩素臭がしなければ最高なんですが…。
ヒバの浴槽の感触といい、お湯の質感といい、ここでは内湯の方が優れているように思えましたので、私は露天ゾーンで体をクールダウンさせる時以外は、ひたすら内湯に浸かっていました。内湯からも大きなガラス窓を通して渓流を眺められますからね。無色透明の優しいお湯は、森林に囲まれた当地の静かな環境と実にマッチしており、木のぬくもりとお湯の清らかさに抱かれながら湯浴みをしていると、心身ともに浄化されてゆくようでした。
湯野川2号泉
アルカリ性単純温泉 54.4℃ pH不明 溶存物質0.680g/kg 成分総計0.680g/kg
Na+:108.5mg(40.00mval%), Ca++:139.9mg(59.15mval%),
Cl-:84.9mg(20.19mval%), SO4–:437.7mg(76.94mval%),
H2SiO3:69.1mg,
内湯は加水あり(源泉温度が高いため)
露天風呂は塩素系薬剤使用(衛生管理のため)
青森県むつ市川内町湯野川68 地図
0175-42-5136
9:00~19:00 火曜定休
350円
ロッカー(貴重品用)・ドライヤー(10円/2分・有料)あり、基本的な入浴道具販売あり
私の好み:★★
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