子供のころから私は人様が持っているものが欲しくてたまらなくなる性格であり、成長とともに徐々にその欲張りな性分は落ち着きをみせていましたが、温泉に関しては子供のころより強欲が悪化しているらしく、先日シドさんのブログを拝見していたら、青森競輪場に温泉があることを知り、競輪場と温泉という常識では考えられない極めて意外性の高い組み合わせにものすごい興奮を覚えて居ても立ってもいられなくなり、「何が何でもボクチャンも入ってやる」んだと鼻息荒く、8月某日に実際に現地へ行ってきました。
三内あたりで青森西バイパスから側道へそれて人家の無い道をひたすら南進すると、いきなり視界が開けて広大な駐車場の向こうに競輪場の建物が聳えていました。私は数え切れないほど青森県に来ていますが、競馬のG1を除いて公営ギャンブルとは久しくご縁が無いため、あんなところにこんな広大な施設があったとは全く知りませんでした。
入場ゲート等に立てられている幟には青森競輪場の萌えキャラがプリントされていますが、果たしてこの手のキャラを好みそうな年齢層はどれほど来場するのでしょうか。入場料は無料なので、特に何も手続きすることなくゲートを通過します。ゲート前に置かれたカウンターには小さく「本日オープン日 青森競輪場温泉」と印刷された案内が掲示されています。
競馬場なら何度も、競艇場でしたら数回利用していますが、競輪場は人生初なので、ちょっと興奮気味でメインスタンドやバンクを見学しながら場内をウロウロしてしまいました。この日は青森でのレースは開催されず、静岡競輪等の場外販売のみとなっていましたが、バンクでは数人選手たちが練習のために自転車を漕いでいました。
温泉入浴には車券の購入が必要とのこと。最低金額である100円で済ませればよかったのですが、せっかくだからお風呂に入ったついでに小銭もいただいて帰ろうと企み、人気順に3点をボックス買いして600円を支払い、背中から哀愁を漂わせながらカップ酒をチビチビやっているおじさんたちと一緒に大型スクリーンを見つめます。場内のスピーカーからアナウンスが流れていざ発走、ガッチガチの無難なレースかと思いきや、私が買った選手は最終の周回時に悉く失速してゆき、気づけば私の企ては水の泡と消えておりました。こんなことなら欲を出さずにはじめから適当に100円で済ませておけばよかったものを・・・。
車券をビリビリに破って屑篭へ叩きつけるように捨ててやろうかと苛立つ自分を懸命になだめ、券を手にしたまま選手管理棟へと向かいます。棟の壁には小さく温泉へと導いてくれる案内が掲示されているので、その矢印に従って階段を上がりました。
そこはドリームスタンドと称される屋内観覧席で、メインスタンドとは異なり、足元にはカーペットが敷かれ室内には空調が効いている快適な空間でした。快適といってもあくまで屋外席と比較した場合の話でして、中央競馬の有料席と比べちゃったら全然話になりませんが、私にとってのドリームは、バンクの男たちの熱き戦いではなく、浴槽に張られた熱いお湯との汗だくの戦い、なのでありますから、この屋内観覧席の様子なんてどうだっていいのです。入口で待機している係員のおばちゃんに券を見せながら「温泉に入りたいのですが」と尋ねると、親切にも途中の通路まで案内してくださいました。
矢印に従って廊下を進んでゆきます。こちらの温泉は選手棟にある選手用の浴室であり、それを月に数日だけ利用者にも開放してるわけですね。女湯は2階、男湯は1階にあり、それぞれ階段を下りてゆくのですが、階段と選手棟との接続箇所には不正防止のために係員が待機しており、みなさん挨拶してくださるものの、その背後には物々しい雰囲気も感じられ、いつの間にやらこちらまで軽い緊張感を抱いてしまいました。
そこそこ広い脱衣室。中小規模の旅館には負けない立派なつくりですね。室内に2台ずつ設置されている洗濯機や乾燥機は選手が使うためのものでしょう。なお基本的に商業用のお風呂ではないので、アメニティー類は期待しちゃいけません。
浴室は天井こそ低いものの、面積はかなり広く、とてもゆとりのある空間です。浴槽は2つあり、洗い場にはシャワー付き混合水栓が13基設置されていました。
二つある浴槽のうち、手前側の槽は空っぽでした。後述する主浴槽が温泉成分により濃い色に染まっているのに対してこちらは白い状態を保っていること、浴槽内は湿っていること、目の前にサウナがあること、などの状況から察するに、おそらくこの空っぽの槽は一般非公開日に水風呂として利用されているものと思われます。
主浴槽は6~7人サイズ。加温された源泉がワインレッドの耐熱塩ビ管を流れて湯面下にて浴槽へ投入されています。見るからに濃厚なお湯でして、浴槽は深紅に染まっています。また、浴槽のお湯は浴槽の隅っこから床へ溢れ出ているのですが、その一体は真っ赤っかに染まっています。着色は浴槽や床のみならず、湯船に浸かって槽内に触れた足の裏、おしり、手などにもオレンジ色が付着しました。
ブラッドオレンジジュースを髣髴とさせる色に強く濁るお湯は透明度僅か15cm程度、強烈に塩辛く、苦味もあり、鉄錆系の金気味も強く感じられます。お湯を手に取って鼻に近づけると鉄錆臭+アブラ臭+ガス臭の痕跡のような匂いが嗅ぎ取れました。食塩泉らしいツルスベ浴感が弱いながらも得られます。源泉温度が30度に満たないために加温されていますが、優しめの加温であるにもかかわらず、濃厚な食塩泉ゆえに火照るパワーは強烈で、良い湯加減だからと呑気に入浴していると忽ち体力を奪われてヘロヘロになってしまうこと必至です。私も湯上りはしばらく汗が止まらず、肌のベタついたままでした。濃厚なお湯に浸かって温泉と格闘したい物好きな御仁にはおすすめ。
こちらのお風呂で気になったのが、浴槽縁の下に樋が設けられていることです。この手のものは他の風呂ではまずお目にかかれませんが、オーバーフローが洗い場まで流れ出て床一面が赤く染まってしまうことを防いでいるのでしょうか。
競輪場でこんな個性的且つ本格的、そしてとんでもなく凶暴な温泉に入れるとは想像だにしていませんでした。青森県の温泉の多様性を改めて知ることができる一湯かと思います。
ちなみに私が競輪場を去った数時間後、メインスタンド3階の食堂でガス爆発が発生し、店員数名が負傷してしまいました(こちらを参照)。現在は平常営業に戻っていますが、私は間一髪のところで爆発に遭遇せずに済んだわけでして、600円は無駄にしたかもしれないが、面倒な事態には遭わなかったのだし、何よりも凄い温泉に無事入れたのだから、結果的にはお釣りを手にしたのも同然と言えるかもしれません。
新城温泉
ナトリウム-塩化物強塩泉 27.8℃ pH7.1 湧出量測定不可(掘削動力揚湯) 溶存物質17.244g/kg 成分総計17.274g/kg
Na+:5567mg(85.37mval%), Mg++:179.8mg(5.22mval%), Ca++:489.7mg(8.62mval%), Fe++&Fe+++:4.4mg(0.08mval%)
Cl-:9070mg(87.71mval%), SO4–:1505mg(10.74mval%), HCO3-:256.1mg(1.44mval%),
H2SiO3:31.3mg, HBO2:37.3mg, CO2:30.4mg,
青森市営バス東部営業所or安方前売SC、五所川原・秋田県大館より無料バスあり
青森県青森市新城平岡1-1
017-787-2020
ホームページ
場外開催日の土曜・日曜・祝日、12:00~17:00
車券購入を要する(最低100円)
委細は青森競輪場の専用ページを参照のこと
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★
コメント
Unknown
青森競輪場温泉 究極の温泉ですね。貴重な情報ありがとうございました! それにしても成分濃そうなお湯ですね。
Unknown
zataro50さん、こんばんは。
こんなところに温泉があるとは思いませんでした。温泉が無ければ私が競輪場へ行く機会は無かったかと思いますので、入浴ついでに面白い体験をさせていただきました。
濃厚なお湯なので夏は体力が奪われちゃいますが、寒い時季には芯から温まって最高だと思います。
Unknown
青森市内の温泉なら三内と肩並べるくらい個性派の湯じゃないかと・・・。
こんなのが競輪場あるとは正直思ってなかったです(笑)
Unknown
シドさんのブログのおかげで、こちらを知ることができました。ありがとうございます。競輪場にあるという立地の他、開放日が限定的なので、意外性とレア度の両方が高い温泉と言えそうですね。それにしても爆発事故に巻きこまれないで良かった…。
Unknown
青森の温泉は素晴らしいのは承知してますが、B級グルメ的な美味しい物を紹介して頂けたらと思ってます!例えば弘前の常寿司の海鮮太巻きとか?無理言ってすみません!
Unknown
ぱとさん、こんばんは。
青森って意外とラーメンが美味いです。というか私好みの味でして、特に魚粉がキラキラしちゃっているような濃厚な魚介ダシ系のスープが気に入ってます。人気店だと「高橋中華そば店」等。拙ブログのブックマーク欄にリンクしているシドさんのブログがとっても詳しいですよ。
その他には、弘前の横綱ちゃんこ鍋(津軽は力士を多く輩出している土地です)、弘前の老舗そば店「高砂」、同じく三忠食堂の津軽そば(好き嫌いわかれますが)、大鰐のもやしラーメン(いこい食堂など)、青森市内のうどん店「安田屋晴右衛門」、鰺ヶ沢で2~3年前からアピールしはじめたヒラメのヅケ丼(結構うまい)、冬限定ですがいろは食堂の白子丼、甘味系だったら戸田うちわ餅(弘前)・揚げ鯛焼き(五所川原、おすすめ)・川口あんぱん(板柳)・アビタニアジャージーファームのアイス(鰺ヶ沢)・・・といったところでしょうか。思いつくまま列挙したのでまとまりがなく、また肝心なものが欠落しているかもしれません。思い出したら後日改めてピックアップしますね。なお青森のB級グルメですと黒石のつゆやきそばがマスコミでよく紹介されますが、個人的には…。でも界隈に点在する昔ながらの大衆食堂は、昭和の懐かしい味わいが楽しめるので大好きです(尾上の大十食堂など)。
Unknown
白子丼と魚介系のラーメンですか気に成りますね!たぶん弘前市辺りで車中泊に成ると思うので色々探してみます!温泉も楽しみですが、食も楽しみです!色々ありがとうございました
時季的に…
車中泊とのことですが、白子丼はたしか12月以降の冬限定なので、時季的には合わないかもしれません。念のためググってみてください。