昭和温泉 しらかば荘

福島県

福島県昭和村と聞いてピンと来る方は余程の会津通でしょう。某インターネット百科事典によれば、合併等によって消滅したものを含めると、「昭和村」と称する村は日本全国に12ヶ所あったんだそうです。元号を村名にしていることからもわかるように、いずれの「昭和村」も昭和の時代に複数の村が合併して誕生した村であり、当事者になる村同士の面子を潰さないため、敢えて抽象的で時代感を背負っているこの元号を名乗ったことは想像に難くありません。そのため各地で昭和村が誕生するのは、昭和という元号が始まった昭和一桁か、あるいは戦後しばらく経ってからのいずれかに大分でき、半数以上は昭和一桁に生まれているのですが、その中でも最も早い昭和2年に誕生したのが、福島県の昭和村なのであります。他の昭和村は過去帳入りしているか、あるいは戦後生まれの新参者ですから、昭和2年に全国に先駆けて誕生してから現在も存在し続けている福島県会津の昭和村は「Top of 昭和村」と言っても過言ではありません。

 
そんな昭和村は全国屈指の限界自治体。村が消滅してしまわないよう、県や村など関係者の方々は懸命の努力を重ねていますが、そんな働きかけの一環として、村屈指の収容客数を誇る昭和温泉「しらかば荘」は乾坤一擲のリニューアルを図り、2014年7月、綺麗に生まれ変わりました。そこで、どんな変貌を遂げたのか確かめるべく、2015年晩秋の夕暮れ時に、日帰り入浴利用で立ち寄ってみることにしました。
以前は緩やかな傾斜の三角屋根を頂く鉄筋コンクリ造の建物で、いかにも公共の保養施設らしい装飾性に欠けるお宿でしたが、リニューアル後はモダン和風で黒基調のシックな外観に変貌し、山奥の閑村らしくない立派なファサードからは、村が宿に対して賭けている本気が伝わってきます。

 
 
館内へお邪魔する前に、駐車場の真ん中に立つこの特徴的な施設をちょっと見学しましょう。屋根から白い湯気が上がっているこの施設は「湯雨竹」と称するもので、大分県別府の「ひょうたん温泉」が特許を持っている、温泉用の冷却装置です。以前拙ブログでも長崎県小浜温泉の「雲仙荘」で同じものを紹介しましたが、竹箒のように末広がりになっている竹の枝を幾重にも吊り、その上から熱い温泉を滴らせることによって、外気によって熱交換が行われ、加水することなくお湯を適温に冷ますことができるという、非常にわかりやすい構造をした冷却装置なのであります。温泉の熱交換装置は他にもいろんなタイプがありますが、この「湯雨竹」は構造が単純であるがゆえにメンテナンスが比較的容易なんでしょうし、なによりも訪問客に対するビジュアル的なアピール効果が大きそうですね。ちなみにこの昭和温泉では、この「湯雨竹」によって湧出温度60℃以上の源泉のお湯を48~9℃まで下げてから、浴室へ供給させているのだそうです。



さて館内へお邪魔しましょう。間口の広いエントランスを入って右手にあるフロントで日帰り入浴の料金を支払います。村民と村外では料金が異なるので、支払い時には「村外です」と一言告げた方がスムーズに対応してくれるかと思います。
フローリングのロビーは広々しており、モダン和風の落ち着いた内装でありながら、高い天井や大きな窓のおかげで大変開放的です。またお座敷もあり、休憩することもできます。ホールの一角にはWifiのフリースポットがあり、利用客用のタブレットやプリンターも用意されていました。

 

玄関ホールから左手に進むと男女別の浴室です。脱衣室内は熊本県黒川温泉の各旅館を彷彿とさせるような、黒塗りの木材を多用した内装となっており、洗面台には仕切り板が設置されていました。私が利用したのは当然ながら男湯ですが、この浴室を女湯として使用した際に女性客が湯上がりの化粧をしやすいように配慮したのかもしれません。浴室入口には大きなデジタル温度計が取り付けられていたのですが、これって後述する内湯の大きな浴槽の温度を示しているのかな。

 
リニューアル前のお風呂は実用的な全面タイル張りでしたが、新しく生まれ変わった内湯は機能性と現代和風の意匠を織り交ぜた、いかにも現代的な空間構成になっています。窓から外光が降り注いでいる他、間接照明を採用することによって程良い照度が保たれているほか、床には十和田石が敷かれているので、足元から伝わる感触も良好。気取った価格帯の他旅館にも負けず劣らずの、寛ぎの場にふさわしい雰囲気です。
浴室の片側にはシャワー付きカランが5基並んでおり、その反対側には温度別に分けられた2つの浴槽が据えられています。6~7人は入れそうな大きな浴槽は、どなたでも入りやすい湯加減となっており、浴槽縁の切り欠けから絶え間なくお湯を溢れ出させていました。なおこの大きな浴槽のお湯は、後述する小さな浴槽から流れてくるお湯を受けており、専用の湯口は無いようです。

 
一方、その隣にある小さな浴槽は2人入るのが精一杯。丸い焼き物の湯口から熱いお湯が注ぎ込まれており、私の体感で46~7℃はあったはずです。おそらくこの焼き物から出てくる温泉こそ、上述の「湯雨竹」で冷却されたばかりのお湯なのでしょうね。小さい上に篦棒に熱い湯船なのですが、熱さを堪えて肩まで浸かった時に全身を走るシャキッとした感触もまた気持ち良く、「風呂ってもんは熱くなきゃいけねぇ」と意地を張っちゃう江戸っ子の爺さんも、このお風呂なら納得すること間違いありません。

 
露天風呂は日本庭園風の設えになっていますが、敷地内に植栽は無く、石が敷き詰められたモルタル床の奥に、屋根掛けされた岩風呂がひとつ据えられているばかりで、やや色彩の多様性に欠けるような感じがします。でも植栽が無い代わりに周囲の山々が借景になっていますから、ちょっと引いて全景を捉えると、昭和村の自然美が活かされた風情ある露天風呂だと言えるでしょう。

 
露天の岩風呂は3人サイズ。やや茶色く色づいた岩の湯口からお湯が落とされ、その反対側の湯尻からオーバーフローしていました。でも熱いお湯を温度調整のするためか、私が訪問した時のお湯の投入量はやや絞り気味でした。

お湯は潮汁のような微濁を呈しており、わずかに山吹色を帯びているように見えます。外気による冷却の影響を受けやすい露天風呂では、赤茶色の浮遊物(湯の華か)がチラホラと舞っていました。お湯を口に含むと甘塩味と共に芒硝の味と匂いが感じられ、湯口に華を近づけると僅かながらタマゴ感も得られました。お湯に浸かると食塩泉らしいツルスベ感とトロミが肌に伝わり、とても良く温まって、湯上がり後もしばらくは外套要らずで体の芯からポカポカとした温まりが持続しました。

リニューアルによって洒脱になった「しらかば荘」。私が訪れた夕刻には地元の方が続々やってきて、その日の汗を流しながら湯に浸かって談笑していらっしゃいました。地元の方のふれあいの場としてもしっかり機能しているようです。山村らしい清らかな空気と静かな環境の中で掛け流しの温泉に浸かれますから、地元の方のみならず、観光客でも時間を忘れてのんびり寛げることでしょう。

昭和温泉しらかばの湯
ナトリウム-塩化物温泉 61.0℃ pH7.8 147L/min(動力揚湯) 溶存物質2462mg/kg 成分総計2543mg/kg
Na+:866.1mg(95.68mval%), Ca++:29.2mg(3.71mval%), Fe++:0.6mg,
F-:6.8mg, Cl-:1066mg(79.47mval%), Br-:2.3mg, SO4–:249.3mg(13.72mval%), HCO3-:133.4mg(5.79mval%),
H2SiO3:58.9mg, HBO2:42.5mg, CO2:81.1mg,
(平成24年2月28日)

福島県大沼郡昭和村野尻字廻り戸1178  地図
0241-57-2585
ホームページ

日帰り入浴9:00~20:00
500円
貴重品用の小ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

コメント

  1. hiro より:

    Unknown
    ちょうど10年前に出張で泊まったことがあるのですが、私の知らない「しらかば荘」に変貌しているのに驚きました!
    ご紹介ありがとうございました!
    さっそく来週行ってみます!(笑)

  2. hiro より:

    Unknown
    ちょうど10年前に出張で泊まったことがあるのですが、私の知らない「しらかば荘」に変貌しているのに驚きました!
    ご紹介ありがとうございました!
    さっそく来週行ってみます!(笑)

  3. hiro より:

    Unknown
    ちょうど10年前に出張で泊まったことがあるのですが、私の知らない「しらかば荘」に変貌しているのに驚きました!
    ご紹介ありがとうございました!
    さっそく来週行ってみます!(笑)

  4. Dan より:

    Unknown
    「しらかば荘」は昨年秋の奥会津湯巡りツアーで
    訪問致しました
    とても温まるお湯で、最後は小さい方の浴槽に
    ガッツリ入って締めとしました
    お湯の味が「旨味成分のような味がする」って
    当時のメモにはありました
    結構お気に入りのお湯でしたよ

  5. Dan より:

    Unknown
    「しらかば荘」は昨年秋の奥会津湯巡りツアーで
    訪問致しました
    とても温まるお湯で、最後は小さい方の浴槽に
    ガッツリ入って締めとしました
    お湯の味が「旨味成分のような味がする」って
    当時のメモにはありました
    結構お気に入りのお湯でしたよ

  6. Dan より:

    Unknown
    「しらかば荘」は昨年秋の奥会津湯巡りツアーで
    訪問致しました
    とても温まるお湯で、最後は小さい方の浴槽に
    ガッツリ入って締めとしました
    お湯の味が「旨味成分のような味がする」って
    当時のメモにはありました
    結構お気に入りのお湯でしたよ

  7. K-I より:

    まとめてレスします
    ・hiroさん
    そうなんですよ。一昨年、すっかり雰囲気良く生まれ変わったんです。今回は立ち寄り入浴だけでしたが、落ち着いた内装と綺麗なお風呂に感心しました。次回は是非宿泊してみたいと思っています。

    ・Danさん
    あの小さな熱い浴槽のお湯はガツンと効きますよね。適温の風呂ももちろん良いんですが、あのような熱いお湯は心身がキュって引き締まるので、おっしゃるように、締めにはもってこいです。玉梨・湯倉・大塩など近隣の温泉とは似て非なる、若干毛色の異なるお湯である点も、湯めぐりにアクセントを加える意味で貴重な存在かと思います。

  8. K-I より:

    まとめてレスします
    ・hiroさん
    そうなんですよ。一昨年、すっかり雰囲気良く生まれ変わったんです。今回は立ち寄り入浴だけでしたが、落ち着いた内装と綺麗なお風呂に感心しました。次回は是非宿泊してみたいと思っています。

    ・Danさん
    あの小さな熱い浴槽のお湯はガツンと効きますよね。適温の風呂ももちろん良いんですが、あのような熱いお湯は心身がキュって引き締まるので、おっしゃるように、締めにはもってこいです。玉梨・湯倉・大塩など近隣の温泉とは似て非なる、若干毛色の異なるお湯である点も、湯めぐりにアクセントを加える意味で貴重な存在かと思います。

  9. K-I より:

    まとめてレスします
    ・hiroさん
    そうなんですよ。一昨年、すっかり雰囲気良く生まれ変わったんです。今回は立ち寄り入浴だけでしたが、落ち着いた内装と綺麗なお風呂に感心しました。次回は是非宿泊してみたいと思っています。

    ・Danさん
    あの小さな熱い浴槽のお湯はガツンと効きますよね。適温の風呂ももちろん良いんですが、あのような熱いお湯は心身がキュって引き締まるので、おっしゃるように、締めにはもってこいです。玉梨・湯倉・大塩など近隣の温泉とは似て非なる、若干毛色の異なるお湯である点も、湯めぐりにアクセントを加える意味で貴重な存在かと思います。

  10. 旅好きゴー より:

    ガッカリ
    部屋最高!
    温泉は狭いが湯質がいい!
    食事最低!冷めたアユの塩焼き!冷たいフライ!
    とどめは、やる気がない仲居さん!
    何を聞いても的はずれ回答!メインのお蕎麦は
    ご飯を食べた後に出す。
    お腹一杯で美味しい蕎麦もマズクなりますね!
    施設は最高!中身は最低!特に仲居さんは?

  11. 旅好きゴー より:

    ガッカリ
    部屋最高!
    温泉は狭いが湯質がいい!
    食事最低!冷めたアユの塩焼き!冷たいフライ!
    とどめは、やる気がない仲居さん!
    何を聞いても的はずれ回答!メインのお蕎麦は
    ご飯を食べた後に出す。
    お腹一杯で美味しい蕎麦もマズクなりますね!
    施設は最高!中身は最低!特に仲居さんは?

  12. 旅好きゴー より:

    ガッカリ
    部屋最高!
    温泉は狭いが湯質がいい!
    食事最低!冷めたアユの塩焼き!冷たいフライ!
    とどめは、やる気がない仲居さん!
    何を聞いても的はずれ回答!メインのお蕎麦は
    ご飯を食べた後に出す。
    お腹一杯で美味しい蕎麦もマズクなりますね!
    施設は最高!中身は最低!特に仲居さんは?

  13. K-I より:

    Unknown
    旅好きゴーさん、こんばんは。
    お食事やホスピタリティの面でお気に召さなかったのですね。それはお気の毒です。冷めた食事は美味しくないですもんね。ぜひとも施設へその声をお届けになっては如何でしょうか。せっかく良いお湯を活かし続けるためには、お客さんの声がとても大切だと思います。

  14. K-I より:

    Unknown
    旅好きゴーさん、こんばんは。
    お食事やホスピタリティの面でお気に召さなかったのですね。それはお気の毒です。冷めた食事は美味しくないですもんね。ぜひとも施設へその声をお届けになっては如何でしょうか。せっかく良いお湯を活かし続けるためには、お客さんの声がとても大切だと思います。

  15. K-I より:

    Unknown
    旅好きゴーさん、こんばんは。
    お食事やホスピタリティの面でお気に召さなかったのですね。それはお気の毒です。冷めた食事は美味しくないですもんね。ぜひとも施設へその声をお届けになっては如何でしょうか。せっかく良いお湯を活かし続けるためには、お客さんの声がとても大切だと思います。

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