フォッサマグナの西端、糸魚川静岡構造線に沿って北上して日本海に注ぐ姫川は、古から翡翠を産することで有名ですが、1995年7月11日に発生した水害によって流域は大きな被害を蒙り、界隈の温泉もその例外ではなく、なかでも新潟県側にあった蒲原温泉は建物の一部を残して壊滅してしまいました(源泉は残っており、今では野湯になっているようです)。
川を挟んで新潟・長野両県に跨る姫川温泉もやはり被害を受け、温泉街で軒を並べていた民家が全半壊となってしまいました。温泉街を形成する宿は長野県側の旅館2軒と新潟県側の旅館1軒の計3軒のみ。今回取り上げる「ホテル朝日荘」は長野県側にある2軒のうち平岩駅側に位置する宿です。
宿の軒数は少ないものの湯量は豊富のようで、宿の前の崖上に設置された源泉貯湯槽からは、来客者に見せ付けるかのように源泉から引いたお湯を滝のように流下させており、その量も結構多くて、いますぐにでもそのお湯を浴びてみたくなるほどです。
源泉のお湯を滝のように垂れ流しています。余剰分でしょうか。
河岸に這うように建てられたこの宿の内部通路は入りくんでおり、案内板に従ってくねくね曲がったり階段を下りたりするうちに大浴場へ到着。脱衣所は広く、河岸に建設したことを証明するかのように、岩盤が剥き出しになって壁の一部となっていました。でも天井が狭いからか建物の老朽化のためか、広さの割にちょっと窮屈さを感じたことは否めません。
浴室へ出ると、その途端、やさしいタマゴのような硫黄臭が香り、おのずとお湯への期待が高まります。2フロア分ある高い天井は透光性の材質を用いているため、浴室内はとても明るく、また元々ここが川の崖だったころから存在していると思われる大きな岩がせり出していて、独特の景観をつくりだしています。大きな岩に目を奪われていると、その向こう側にある扉へ、体をタオルで巻いた人が入っていくのが視界に入りました。それを見てようやく気づいたのですが、あの人は女性、つまりここは混浴で、浴室を中央にして男女の脱衣所がシンメトリに設けられており、大きな岩が実質的な男女の領域の境界になっているようです。
崖の上からはパイプを通ってきたお湯が打たせ湯のようにドボドボと勢いよく注がれ、それに押し出されて、曲線を描く浴槽からは止まることなくオーバーフローしています。
左:大きな岩がせり出した大浴場は混浴
右:打たせ湯のようにお湯が上から落とされています
かつて源泉が通っていたと思われるパイプの切断面。析出物がスケールとなって内部に詰まってしまっています。これでは流れが悪くなるのも当然
お湯は無色透明、微かな塩味と微かな甘み、そして弱い炭酸味と弱いタマゴ味が感じられ、上述のようにタマゴの匂いが香ります。お湯の中では明るい灰色で羽根のような形状の湯の華がたくさん舞っています。分析表を見ると重曹が含まれているようですが、その割には少々引っ掛かる浴感がありました。カランは男側と女側それぞれ3ヶ所あり、硫黄分の影響で金具が真っ黒に変色していました。
お風呂はこの他に露天風呂もあります。露天風呂に入るには一旦着衣してからロビーの方へ戻り、専用のドアから表に出て、サンダルを履き替えて階段で屋上へ上がる必要があります。こちらはちゃんと男女別になっており、木製で5~6人サイズの浴槽が据えられています。こちらのお湯ももちろん掛け流し。屋上だけあって見晴らしがよく、姫川の流れや大糸線の線路が一望できます。
含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉(硫化水素型)
64.5℃ pH6.3 掘削自噴(量不明) 成分総計1958mg/kg
JR大糸線・平岩駅 徒歩5分(490m)
長野県北安曇郡小谷村姫川温泉 地図
0255-57-2301
ホームページ
立ち寄り可能時間はお問い合わせ下さい
600円
シャンプー類あり
私の好み:★★
コメント
Unknown
テキトーなこと言って休みとって、こちらに泊まってきました。
お湯は上質だけど総合評価はちょっと下がる、でも泊まって見てちょっと見直した。みたいなところありませんか?
ここは、私にとってそんなところでした。
仕事人間のK-Iさんが多少でも食いついてくれそうな写真貼っときます(笑)部屋からです。
葛葉峠もいつの間にか復旧したようですし、機会があれば是非!
Unknown
国民温泉さん、こんにちは。
そちらの雪はいかがですか? 北陸は大変なことになっているようですね。
姫川を渡る大糸線のお写真、いいですね。旅情が駆り立てられます。鉄の端くれとして、仕事を放り出したくなりました(笑)。
おっしゃるように、泊まってこそお宿の本当の評価ができるように思います。もともとの期待値がどのくらい(高い低い)によっても左右するのかもしれませんね。
ちなみに、私は今週末、休みなしです(涙)
返信の返信申し訳ありません
11日の午前中までしかいなかったので、雪は平気でした。
でも今年は雪多いですね!夜のR406長野(戸隠)〜白馬区間、怖かったです(><)
仕事やプライベートが充実してると温泉に行ってる暇ないですよね?
K-Iさんはきっとそんな心の適応症がない状態なのでは?(^ ^)
※写真右下、白馬荘の露天です。鉄の方御用達ならこちらですかね?温泉マニア的には朝日荘ですが・・・
Unknown
>国民温泉さん
ここ数日は必ずと言ってよいほど豪雪関連のニュースが報じられていますね。でも青森の津軽地方に住む私の知人曰く、大した雪ではないとのことなので、同じ日本海側でも地域によって違うようですね。
私は秋田県で夜の雪道を走行中に大事故を起こしたことがあり、それ以来雪道の運転は慎重になっています。くれぐれもご注意を。