みくりが池温泉は日本最高地の温泉ですが、造成泉で露天は無く冬季は休業してしまいます。一方、今回取り上げる本沢温泉は、通年営業で露天がある自然湧出の最高地点の温泉です。通年営業とはいえ、登山客を相手にしたいわゆる山小屋でして、車では行けず、山道を2時間ほど歩かなければなりません。
ほぼ一本道なので迷うことはありませんが、登山慣れしていない場合は何かと不安ですので、途中の道がどのようなものかを案内しながら、この温泉を訪れたときのことを書きこみます。
・温泉までの道程
まずは車で稲子湯を目指し、そこから南へちょっと行くと、本沢入口へ向かう林道が分岐する丁字路があるので、この林道を入ります(画像左)。幅員は狭いですが舗装路です。4km程で本沢入口に到着(画像右)。前後に駐車スペースがあるので、ここに車をとめ、トレッキングの準備をして出発。
(以下、各ポイントまでの到達時間を書きますが、意外とハイペースな私の脚で計測したものですので、一般の方はそれより若干多く時間を要すると思われます)
さっそく山道です。車1台が通れる幅がありますが、ひたすら登りなので運動不足の脚には堪えます。
本沢入口から20分で天狗展望台。ここにも広い駐車スペースあり。でも本沢入口からここまでの途中にはぬかるみが何ヶ所かあったので、2輪駆動だと泥にハマってしまうかも。本x沢入口に駐車した方が賢明だと思います。
ここから先は4輪駆動じゃないと無理だよ、と忠告している看板。
なるほど確かに車にとっては急勾配の連続、両側から藪がせり出し、凸凹やぬかるみも多い悪路です。車体の底や側面を何度も擦りそう。オフロード車以外は通らない方がよさそうです。歩く分には問題ないのですが、この日は暑くて、既に汗だく状態。ひたすら登るので腰が痛くなっちゃいました。日ごろの不摂生を恨むばかり。
35分でゲートに到着。オフロード車で来られるのもここまで。
雨男である私の動きの呼応するかのように、俄然空が掻き曇り、ややもすれば雨が降りそうな空気。大丈夫かしら…。
原生林の中を歩きます(画像左)。途中見晴らしの良いところがあり、野辺山や清里界隈、そしてその奥に聳える秩父連山が一望できました。
1時間5分(ゲートから30分)で、ゲートと温泉の中間地点に架かる橋まで来ました。この辺りになると勾配は緩くなり、部分的に平坦地や下る個所もあったりして、幾分楽になります。
1時間15分でミドリ池への分岐点。ここは道なりに温泉方面へまっすぐ進みます。道しるべも立っていますから心配ご無用。
ところどころに「あと○○分」と書かれた手作りの案内板があるので、これに励まされながら先へ進みます。
やがてキャンプ場が現れ(画像左)、そこを通り過ぎて沢を越えると(画像右)、まもなく本沢温泉の建物に到着です。事前調査では2時間要するとのことでしたが、私は1時間25分で着いちゃいました。
宿泊棟(本棟)の手前には期間開設(冬季のみ?)の湯小屋があって、その前には揚湯ポンプと引湯管が設置されていました。内湯までお湯を導くためのものでしょう。
・露天
本棟に入って露天風呂の料金を支払います。お金と引き換えにタオルを1本くれました。
外には水場があるので、そこで喉を潤して、更に先にある露天風呂へ向かって歩きます。
10分弱で夏沢峠や硫黄岳へ登る道と露天風呂へ分かれる分岐点に出ます(画像左)。ちょっとしたガレになっているので、火山活動があるのかしら…。温泉への期待が膨らみます。
露天入口には分析表が書かれた看板が立っていました(画像右)。
沢のV字谷に出ました。正面に八ヶ岳の断崖絶壁が聳えて迫り、まさに絶景です。また谷がまるごとガレになっているので、余計な藪がなくて視界良好。
さて、露天風呂はどこかしら…。見回すと、谷の下方にとても小さな白い湯溜まりがポツンとありました(画像の下の方に小さく写ってます)。意外に小さくてビックリ。目隠しは何もなく、2~3人入るのが精いっぱいの湯船が掘られているだけ。でも一丁前に、最近作られたと思しき白木の衣服掛けが設けらてていました。ありがたく使わせていただきます。
浴槽の縁には「日本最高所 本沢温泉 野天風呂 雲上の湯 2158m」と書かれた杭が立っています。記念撮影のお誂えもバッチリ。
お湯は灰白色に強く濁っており、泥湯のような粉っぽさとスベスベ感が混ざったような浴感。いかにもガレらしく、地獄谷によくありがちな刺激のある硫化水素臭が香り、緑礬的な収斂味と苦み、正苦味的な知覚、そして石膏味が混じったような複雑な味がします。
お湯は湯船の底から湧いていました。ちょうど「雲上の湯」と書かれた木の杭の真下あたりが湧出点になっており、底にお尻をつけるとそこだけピンポイントで熱くてちょっと飛び上がりそうになりますが、湯船に張られているお湯は加水も何もされていないのに絶妙な湯加減。絶景の中で硫黄の濁り湯に浸かる幸せ、これぞ自然の恵み、最高です。
・内湯
本棟へ戻って、今度は内湯へ。露天と内湯は別料金です。両方合わせるとちょっと高いかもしれませんが、そう簡単に来られる場所じゃありませんし、露天と内湯は全然違うお湯なので、ここまで来たなら是非両方のお湯に入ってみてください。
帳場から階段を下りて廊下を奥へ進んでいくと(画像左)、どん詰まりに浴室がありました。山小屋なので備品類はありませんが、男女はちゃんと別ですし、脱衣所(画像右)もちゃんと広さが確保されているし、意外としっかりとした造りです。
浴槽にはお湯が冷めないよう蓋が被せられているので、湯浴みはそれを取ってからです。カランは無いので、掛け湯は直接湯船から汲むことになります。浴槽はちょっと深め。排水を汚さないため、石鹸類は使用不可です。
お湯は薄い黄色で、底がぼやけて見える程度に濁っています。芒硝や石膏の味と匂いがはっきりしており、これに土気や金気っぽさが混じる感じです。トロミのあるお湯で、キシキシとスベスベが混在した浴感。湯面にはカルシウム分の薄い膜が浮かんでいました。またお湯が排水されてゆく部分には千枚田状態のちいさな石灰棚ができていました。
露天は典型的な火山性酸性硫黄泉ですが、内湯は濃いめの芒硝・石膏泉で、全然違うお湯が楽しめるのが本沢温泉のよいところ。わざわざ歩いてきた甲斐がありました。
以上、冗長な記事にお付き合いくださりありがとうございました。
・露天風呂
酸性-含硫黄-カルシウム・マグネシウム-硫酸塩泉(硫化水素型)
43.6℃ pH2.3 湧出量不明(自然湧出) 溶存総計1733mg/kg 成分総計2314mg/kg
・内湯
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・炭酸水素塩泉
43.6℃ pH不明 湧出量不明 溶存総計4260mg/kg 成分総計4529mg/kg
長野県南佐久郡南牧村海尻 国定公園内 地図
直通:090-3140-7312 茅野事務所:0266-72-3260
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日中なら入浴可能のようです(内湯は宿泊者優先のため不可になることもあるようです)
露天800円・内湯800円
石鹸類使用不可
私の好み:★★★
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