台北から気軽に行ける緑の山塊、陽明山。ハイキングの名所であるほか、日本統治時代から台湾屈指の温泉郷でもあります。
山の中だというのに中心部の前山公園付近にはコンビニはおろかスターバックスまであります。一帯は平日でも大賑わいで、私が訪れた15時頃、台北中心部方面へ帰るバス停には長蛇の列ができていました。なお前山公園にはガイドブックに必ず載っている公共浴場がありますが、無料とあってかいつも混んでいるので今回はパス。
バス停へと流れる人の流れに逆らって、紗帽山の北側を捲く広い湖山路を西進。路傍ではあちこちでタイワンリスがちょこちょこと動きまわっていました。かわいい!
途中で左へ逸れる路地(湖底路)に入り、紗帽山西麓の長閑な風景を見下ろしながら緩やかな坂を下って突き当った奥に建っているのが「六窟温泉」です。陽明山塊のひとつである紗帽山は650m弱の低山ながらマグマの活動が活発で、山塊が持つ水の涵養力も豊かであることから、山周辺の至る所で温泉が湧き出ており、六窟温泉もそのひとつです。建物上部は大きな温泉マークと共に「六窟」と書かれているので、よく目立ちます。
陽明山の公園エリアから外れた場所にあるので、観光地的な雰囲気が全くなく、一軒宿のような趣きが感じられます。平日だというのに駐車場には沢山の車がとめられていました。玄関入って左手が広い食堂、右手が温泉スペース。
薄暗い受付の右斜め前が大衆池、つまり大浴場の共同浴場で、右手前側に個人池、つまり個室風呂がずらっと並んでいました。積極的なコミュニケーションの苦手な私は、迷わず個人池を選択。駐車台数が多い割に個室風呂を利用している客は少ないようで、私のほかは1~2室しか使われていませんでした。みなさん、大衆池か食堂で寛いでいるようです。
個室は空いているところならば、どこを使ってもよいみたいです(特に指定されませんでした)。台湾の典型的な個室風呂の様式で、まるで洋服屋の試着室のようにいくつも並んだ扉のひとつを開くと、いきなり目の前に浴槽が据え付けられており、とても狭くて、洗い場や湯上りに腰をかけるようなスペースはありません。キャパシティは1~2人でいっぱい(2人だと窮屈かも)。パーテーションで囲まれているので壁以外何も見えず、本当にお湯に入るだけの空間です。
浴槽は石板造り。まずは水を出しながらデッキブラシで浴槽をゴシゴシ洗い、それからバルブを開いてお湯を溜めます。一般的に台湾の個室風呂は、浴槽洗浄のため水の蛇口にホースが付けられていることが多いのですが、なぜかここはホースが無かったため、蛇口の水が届かない浴槽の隅々を洗い流すのが面倒でした(桶に水を汲んで流しました)。
湯口のお湯は46℃前後、浴槽へ溜めていくうちに丁度よい温度まで下がるので、水で薄める必要がなく、濃厚なお湯を堪能できます。見た目はほぼ透明ですが、弱い白系の貝汁濁りが認められます。軟式テニスボールのような硫黄臭、強い酸味で口腔が収斂します。酸味の強さが突き抜けており、他に複雑な味覚はあまり感じられなかったような気がします。スベスベして肌触りがよく気持ち良い浴感です。
その都度お湯を使い捨てる個室風呂は、自分の好みに湯加減を調節でき、しかも自分以外誰も触れていない新鮮なお湯が楽しめるので、狭苦しいとはいえ私は結構好きです。
今回私は陽明山の中心部から歩いて行きましたが、北投や石牌から六窟行のバスに乗って終点で降りれば、バス停の目の前なので、意外と交通の便は良好。施設としては面白みに欠けるように思いますが、お湯は強めの火山性酸性硫黄泉。個室風呂も大浴場も楽しめ、食堂も広く、いかにも観光地な陽明山の賑やかさから隔絶された静かで長閑な環境なので、手軽に喧騒を離れて濃いお湯に浸かりたいときには選択肢に入れてもよい施設だと思います。
MRT北投駅からミニバス「小25」、あるいはMRT石牌駅からバス「535」で終点の六窟下車、徒歩1~2分。もしくは陽明山の前山公園から徒歩15分。
・ミニバス小25の路線図・時刻表 ←時刻表は「發車間距」右の「固定班次」をクリック
・バス535の路線図・時刻表 ←時刻表は「發車間距」右の「固定班次」をクリック
(いずれのバスも均一料金区間)
台北市湖底路81 地図
02-2861-1728
5:00~24:00(レストランは11:00~23:00) 無休
個室風呂(個人池)100元
ドライヤー10元×2枚
私の好み:★★
コメント