風間浦村の桑畑集落にある日帰り入浴施設です。国道からちょっと上がった津軽海峡を臨む小高い丘の上に建っており、多少天気が悪くても対岸の北海道の姿がバッチリ望めます。そもそもこの辺りはテレビやラジオでも青森県より北海道の電波のほうが良好に受信できちゃうような地域なんですよね。
最近改築されたらしく、外観はもちろんのこと、館内もとっても明るく綺麗です。玄関入ってすぐに受付、その左手に食堂・休憩スペースが設けられ、受付の右手が浴室となっています。
脱衣所も清潔で使い勝手良好。
男湯の場合、浴室の左側シャワー付き混合栓×9基が並び、反対側に長方形の内湯と、それに並んで水風呂・サウナが設置されていました。
浴室から屋外に出てすぐの位置に露天風呂も設けられており、寒冷地らしく浴室と露天の間は二重の扉で隔てられ、露天風呂には屋根がかかっています(でも厳冬期は露天風呂を閉鎖しちゃうみたいです)。
上述の通り海岸沿いの丘の上という立地ゆえ、見晴らしが良好。露天からは勿論のこと、内湯にも大きなガラス窓が嵌められているので、いずれのお風呂からも津軽海峡や対岸の北海道の恵山あたりが眺望できました。さすが津軽海峡は大型貨物船が多く、船が動いてゆくさまを眺めていると、時の経つのを忘れてしまいそうです。
さてお湯ですが、黒っぽい鼠色に濃く濁っており、透明度は10cmほどでしょうか。やや強めの塩味+石灰的な味+はっきりとした苦味+硫黄味が感じられ、クレゾールみたいなアブラ臭に近い硫黄臭が漂っています。ツルツルスベスベの気持ちよい肌触りです。熱交換器により加温されており、内湯はちょっと熱めでしたが、露天は外気に冷やされてちょうど良い湯加減でした。加温以外の加水や循環は無い放流式の湯使い。オーバーフローしたお湯が捨てられてゆく排水溝は、析出によってちょっとした千枚田状態になっていました。このまま放っておけばミニミニ石灰棚が育つでしょうね。
このように硫黄的知覚が明瞭で黒っぽく濁り、苦味を伴う食塩泉…。あれ、どこかで同じようなお風呂に浸かったことあるぞ…。お湯に浸かりながら思案をめぐらせているうちに、下風呂温泉さつき荘のお婆ちゃんの話が脳裏に蘇ってきました。下風呂の海辺地源泉ほどのパンチや面白みはありませんが、それに近い質感を連想させます。おそらくこの桑畑温泉も硫黄泉が海水の影響を受け、更に鉄分が硫化したために、近所の下風呂・海辺地源泉に似たようなお湯として湧いているのでしょう。
ちなみに、この「湯ん湯ん♪」が建つ丘には元々桑畑小学校があったのですが、地方に例外なく押し寄せる過疎化の波には勝てず、平成13年度を以って閉校し、その跡地を利用して温泉施設が誕生したという次第です。
(↑画像はクリックで拡大)
では温泉として新しいのかというと、決してそんなことはなく、館内には明治37年5月25日付の内務省東京衛生試験所による分析表が掲示されています。つまり少なくとも明治期には療養目的の温泉地として存在していたんですね。
その分析表によると、この温泉は食塩性鋼鉄泉と分類され、その特徴として…
本鉱水は純粋の湧出物にして、決して他の薬種を加減したるものにあらず、天然の良配剤にして、之を服用して難治の病患を全癒せしこと挙げて数うべからず、患者は服用してその効顕の偉大に驚くなるべし。冀(こいねがわ)くは御試用あらんことを願上候。(原文の仮名はカタカナ。句読点無し)
と説明されていました。えらく大袈裟に効能を謳っていますが、今と違って衛生状態も医療技術も悪かった当時にしてみれば、桑畑の濃い温泉はまさに療養目的の温泉として最適だったのかもしれませんね。湯治のお湯の見た目についての記述が無いのが残念ですが、以前は墨汁のようだった下風呂温泉の海辺地源泉よろしく、こちらもかつてはもっと黒かったんでしょうか。
「湯ん湯ん♪」といういまいちなセンスのネーミングから、お湯に対しても施設についてもあまり期待していなかったのですが、その予測をいい意味で裏切ってくれた、なかなか素敵なお風呂でした。
ナトリウム・カルシウム-塩化物泉 35.4℃ pH不明 溶存物質8.675g/kg 成分総計9.470g/kg
下北交通バス・むつ~佐井線で桑畑下車
青森県下北郡風間浦村易国間湯ノ上1-1 地図
下北交通ホームページ
0175-32-6045
10:00~21:00(通年)(食堂11:00~14:00、17:00~20:00) 第2月曜定休
350円
貴重品ロッカー・ドライヤーあり、シャンプー・石鹸類は販売
私の好み:★★★
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