湯ノ沢温泉 日勝館

秋田県


雄勝峠の秋田県側すぐそばの山中に湧く一軒宿の温泉。
温泉自体は後三年の役の際に湯治で利用されたほどの歴史を有しているんだそうですが、その後明治初期に洪水で流されちゃって、明治中期に再興されました。ちょうどそのタイミングが日露戦争の戦勝後だったので「日勝館」とネーミングされたんだとか。正露丸は今でも有名ですし、東郷平八郎はいまだに近代史の英雄ですから、日露戦争の勝利は日本にとってものすごい意義を持ち続けているんですね。

ネット上での情報では、狭隘な山道を進まなければならないという脅し文句が散見されますが、たしかに車1台しか通れない道であるものの、私の実感としてはそれほど萎縮するほどではありませんでした。もしかしたら山道ばかり走っているので感覚が麻痺している可能性も否定できませんが…。


(↑画像クリックで拡大)
院内駅付近の国道13号から南へ一本道が伸びています。交差点には看板が立っていますので、これを見逃さないように。ここから3kmなんですって。でも狭い山道の3kmって倍近い距離感がありますよね。


こんな感じの道を走っていきます。途中に看板も出ているので安心ですね。
わずか3kmの距離で、しかも道の先には目指す湯ノ沢温泉「日勝館」しかないのに、なぜか対向車が多く、離合のために何度か車を路肩に寄せたりバックしたり…。どうしてそんなに車が多いの?


道のどん詰まりが駐車場で、赤い欄干の橋を渡った川の対岸の上に「日勝館」が建っています。見ての通り駐車場が狭い。道の狭さは大して気になりませんが、駐車スペースの少なさが心配です。私の訪問時には辛うじて1台分空いていましたが、後続の車は仕方なく手前の路肩に停めていました。地形的にこれ以上駐車場を確保できないので仕方ありません。


↑画像が対岸(宿側)から見た駐車スペースの全景。4~5台+α程度しか停められないんですね。


ではそれだけ館内にお客さんが多いのかと言えば、決してそんなことはなく、ここの来る車の多くは、温泉水を汲んで持ち帰る客なのであります。橋を渡ったところに温泉スタンドがあって、皆さんひっきりなしに持参したボトルやタンクへお湯を詰め込んでいます。ですから、客は多いものの回転も比較的早いので、もし現地で車を停める場所がなくても、ちょっと待っていればやがて空くかと思いますよ。


沢の岸にへばりつくように建てられたお宿。玄関では湯治客と宿の女将(といっても割烹着姿)が談笑していました。長閑でいい雰囲気です。


お風呂は男女別の内湯がひとつずつ。浴槽はヒバ造りで、6人なら余裕で入れそうな大きさです。塩ビのパイプから源泉が投入されています。


山奥の鄙びた宿のお風呂って、カランが無いか、あっても使えるかどうかわからないような代物が多かったりしますが、こちらはちゃんとしたシャワー付き混合栓が2基設置されていました。


ヒバの浴槽に張られたお湯は無色透明、非常に清らかに澄みきっています。加温加水循環消毒一切なし。ほぼ無味ですが石膏っぽい若干の甘味がありました。ツルツルスベスベのとっても滑らかな浴感で、やさしく包まれているかのようです。液体に対して相応しくない表現ですが、お湯に浸かるとフワフワと浮くような感覚すらおぼえます。pH9.6とかなりの高アルカリ泉ですが、重曹型なのにツルスベを超えたヌルヌル感まで帯びていないのは、成分自体がとっても薄く(成分総計153.6mg/kg)メタケイ酸も少ないから(39.0mg/kg)なのかもしれません。翻って考えれば、それだからこそ飲むととっても軟らかくて喉越しがよく美味しいんでしょうね。お茶を淹れたり料理に使うにも適しているんでしょう。高アルカリの軟水って、本当に喉越しが良くて美味いんですよね。それで通販商売して大儲けしている温泉旅館が伊豆にあったりしますし…。
40℃を切っているぬるいお湯なので夏の暑い日に長湯するととっても爽快です。じっと浸かっているとジワジワと体に気泡が付着。本当に夢心地です。ぬるめですが長湯すれば体の芯まで温まりますし、それでいて湯上がりはさっぱり爽快です。
先客の常連さん曰く、ここのお湯の水は冬に冷めても凍らないんだとか。また飲むと体調が良くなり、とりわけお通じが良くなった、と仰っていました。更にはアトピーに効くという話も(もちろん個人差があります)。

この温泉は山道をわざわざ進んでいく価値が十分にありました。神がかったお湯は本当に素晴らしい。人々から愛される理由もよくわかります。山間の一軒宿は次第に姿を消していますが、こちらはしばらく安泰でしょう。そう願いたい。

アルカリ性単純温泉 39.9℃ pH9.6 86.1L/min(自然湧出) 溶存物質141.2mg/kg 成分総計153.6mg/kg

秋田県湯沢市下院内字湯ノ沢  地図
0183-52-4129

入浴のみ8:00~20:00 休業期間:11月21日~翌年4月30日
300円(入浴&休憩1000~1500円 10:00~15:00)
100円有料ロッカー2つ、石鹸あり

私の好み:★★★

コメント

  1. 転勤族 より:

    Unknown
    こんにちは。
    仙台に転勤して2か月が過ぎました。
    このGWは東北湯めぐり紀行を刊行中です。
    前半戦は古遠部、八甲田、酸ヶ湯、松川、赤湯
    そして今日はここ日勝館を訪問しました。

    このブログを拝見して洗髪や体を洗うのは諦めて
    いましたが、なんとリニューアルして立派なシャワー
    付き混合水栓が2基設置されておりシャンプー、
    リンス、ボディソープも完備されてましたよ!
    こんな素晴らしいお湯に浸かって体もきれいに
    文句なく素晴らしい施設です!
    ※ただし入浴料が500円になってました。

  2. hitareri より:

    手違いで行けず
    お久しぶりです。
    日勝館のネーミング由来がわかりました。ここは2016年秋の東北旅行の大事なルートでしたが、旅行に出て数日後、そこまでの宿の宿泊予約が前後したりしているうちに、すっかり曜日感覚が薄れてきた頃?に日勝館の予約をする事になり、運悪く土日の泊になってしまい、案の定予約が取れなかったです。今から思えば、湯沢温泉あたりでまったりして日月にでももう一度予約入れればよかったです。
    一度旅に出たら温泉に入りすぎてしまい、希少価値の宿の泊さえも「もういいや~」ってなってしまう我が家の悪いところが出ました。
    逍遥さんブログで日勝館を満喫中!

  3. K-I より:

    まとめて返信いたします
    >転勤族さん
    こんばんは。古遠部、八甲田、酸ヶ湯、松川、赤湯ですか。東北をぐるっと回っていらっしゃるんですね。羨ましいです。私も行きたい…。今年のGWは、前半後半ともに訳あって東京の自宅におり、出かけれられません。お湯が恋しい毎日です。連休後半も悪天候に負けず、いろんな温泉を巡ってくださいね。東北は本当に面白いですよね。
    こちらのお風呂がリニューアルしたことは、人伝てに聞いておりました。時代に合わせて変化しているのでしょうね。

    >hitareriさん
    こんばんは。何日にもわたる旅ですと、当初の計画通りにいかず、どうしても変更することになりますよね。是非次回はこちらに狙いを定めて旅程を立てられるといいですね。

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