ふけの湯温泉 後編 野天風呂

秋田県

前回記事「ふけの湯温泉 前編 内湯・露天風呂」の続編です。

●野天風呂・男湯
 
内湯で体の垢を落とし、ヒバ材のぬくもりに心癒された後は、地球の息吹が伝わってくる、荒々しい噴気帯の野天風呂へと向かいました。駐車場から歩道を進んで、あちこちから蒸気が上がる噴気帯へ。

 
緩やかな坂道を下り、女湯の野天風呂の前をかすめ、沢の手前を右折して男湯へ。
漫画家つげ義春の作品には、当地のオンドル小屋で湯治する人々が描かれています。現在の女湯や男湯がある辺りには、かつて湯治棟があったそうですが、40年ほど前に災害に呑み込まれてしまったそうでして、今では跡形もありません。

 
野天風呂のまわりは、荒涼とした噴気帯。シューシューと蒸気を噴き上げる音や、ボコボコとお湯を湧出する音が、そこここから響いてきます。地熱の迫力を体感しながら湯浴みできる、何とも魅力的なロケーション。内湯がスタティックであるなら、野天風呂はダイナミック。大自然のパワーに圧倒されながら、心ゆくまでゆったり湯浴み。


角材とアクリル波板で組み立てられた簡素な脱衣小屋で着替え…

  
野天風呂へドボン。ファンタスティック! これで天候さえ良ければ文句無しだったのですが、あいにくこの時は雨が降っており、上画像で呑気そうに湯浴みしている私は、実は雨で頭がズブ濡れ状態なのでした。でも雨なんてどうでも良く思えるほど、この雄大なロケーションに心酔しました。

この浴槽も木造であり、その大きさは目測で3m×4.5m。底には沈殿がたくさん溜まっています。源泉から木の樋を流れてくるお湯は弱い貝汁濁りを呈しており、私が湯船へ浸かると、沈殿が舞い上がって灰白色に濁りました。弱い酸味とともに、軟式テニスボールのような風味を有しています。内湯とは異なる源泉であり、酸っぱさが弱く、イオウ感もかなり薄めでして、味・匂いともに総じてマイルドです。

●野天風呂・混浴

続いて、男女別の野天風呂の先にある混浴の野天風呂にも入ってみます。噴気帯の中を左へカーブする道を歩いてゆくと、右にオンドル、左に混浴風呂の脱衣小屋が建てられています。

 
噴気帯に建てられた簡易的なオンドル小屋。この内部に茣蓙を敷き、その上で横になって地熱で体を温めるわけですね。かつての八幡平の温泉といえば、こうしたオンドルや蒸し風呂で湯治をする利用方法が多かったわけですが、時代の変遷とともにお湯に入浴する一般的な利用法が主流となり、現在でも以前と同じ利用方法をメインにしているのは大深温泉ぐらいでしょうか。

 
さてこの混浴野天風呂は、道に対しては目隠しの塀が立てられているものの、お風呂側はあけっぴろげであり、本館や駐車場から野天風呂へ下ってゆくアプローチから丸見えなんですね。あまりにあけすけな環境ですから、尻込みしてしまう方もいらっしゃるかと思います。一応脱衣小屋は男女別ですけど…。

 
板張りのテラスのようなところに、2つの浴槽が段違いに並んでいます。いずれも3.5m×4m程の大きさで、湯口のお湯が落とされる上段浴槽はやや熱め(体感で44℃ほど)、そこから流れてくるお湯を受ける下段浴槽は、いつまでも長湯できそうなぬるめの湯加減となっていました。


2つの四角い浴槽の他、奥には4つの樽風呂も設けられています。どうやらこの樽風呂は近年になって新設されたようです。


樽風呂側から混浴野天を捉えてみました。白濁湯の向こうに広がる山の緑の中では、白い蒸気が何本も上がっています。大自然の息吹が伝わってくる、八幡平ならではの光景です。

 
4つある樽風呂は、ひとつひとつの大きさが異なっていますが、それぞれにお湯が注がれており、私の訪問時にはいずれもちょっと熱めの湯加減でした。後日ネットでこの樽風呂について調べたところ、日によって湯加減が異なるらしく、熱い日もあればぬるい日もあり、それゆえ評判も様々でした。自然の恵みというものは気まぐれであり、その時どきによってご機嫌が上下しますので、そのあたりの管理は何とも難しいものがあるのでしょう。
樽の側面には容量を示していると思しき漢字が羅列されていたのですが、どこかで実際に樽として使われていたものを、こうしてお風呂に転用したのでしょうか。せっかく開放的な環境の野天風呂にいながら、わざわざ狭い樽風呂に入るのはいかがなものかと考えたくもなりますが、でも一人サイズの樽風呂に入ると、なぜか独特の安心感や抱擁感があって、とっても落ち着くんですよね。胎内回帰のような心理的効果でも働いているのでしょうか。


野天風呂を終始独占できたことので、これ幸いとばかりに、手前側の浴槽に入って自分撮りしてみました。次回訪問時は立ち寄りなんかじゃなく、ゆっくり泊まって時間を忘れて湯浴みしたいなぁ…。

(館内)
岩の湯
単純酸性泉 66.5℃ pH2.5 湧出量記載なし(自然湧出) 溶存物質439.3mg/kg 成分総計620.3mg/kg
H+:3.2mg(58.70mval%), Na+:4.3mg, Mg++:3.3mg, Ca++:8.4mg, Al+++:7.4mg(15.19mval%), Fe++:5.7mg,
Cl-:2.4mg(50.00mval%), HSO4-:30.2mg(14.29mval%), SO4–:306.9mg(35.71mval%),
H2SiO3:65.0mg, CO2:181.0mg,
(参考:HS-, S2O3–, H2Sともに0.1mg未満)

(野天)
熊の湯
単純温泉 79.8℃ pH5.8 湧出量記載なし(自然湧出) 溶存物質59.0mg/kg 成分総計96.5mg/kg
Na+:3.0mg(24.07mval%), Mg++:1.3mg(20.37mval%), Ca++:3.8mg(35.19mval%),
Cl-:2.9mg(18.60mval%), S2O3–:0.2mg, SO4–:11.4mg(55.81mval%), HCO3-:6.7mg(25.58mval%),
H2SiO3:27.1mg, CO2:37.5mg,

秋田県鹿角市八幡平  地図
0186-31-2131
ホームページ

冬季休業(詳しくはホームページを参照のこと)
日帰り入浴600円(内湯・館内露天・野天風呂のいずれも利用可能)
内湯にロッカー(100円有料)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

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