引き続いて十和田大湯温泉を取り上げます。前回記事で立ち寄り入浴したお宿「花海館」のほぼ辻向いに位置している公衆浴場「いずみの湯」にも、今回立ち寄ってみることにしました。温泉街の中ほどにある上の湯交差点の角には、ドライバーの目を引く大きな看板が立っており、以前からここを通る度に気になっていました。看板に描かれているイラストはおそらくサルなんでしょうけど、ほとんどゴリラのような気もします。この看板から斜めに入るアプローチの先に湯屋があり、駐車場も完備されていました。
建物の駐車場サイドには大きなガラス窓が用いられており、公衆浴場というよりカフェやレストランといった様相です。日中はさぞ明るいことでしょうね。番台で直接料金を支払って中へ入ると、ガラス窓の内側はラウンジになっており、湯上がり後のお客さん達が談笑していらっしゃいました。このラウンジまわりには自販機の他、ロッカーも設置されていました。
一見すると全国どこにでもありそうな、ごくごく普通の脱衣室。公衆浴場にしてはやや狭く、中小規模旅館のような印象を受けるのですが、そんな室内にあってカラフルなプラ籠がひと際目立っています。一つ一つの籠にはナンバリングされているのですが、それぞれに鍵付きの引き出しが付帯しているのが、他の浴場では見られないユニークな点。ちょっとした貴重品(車の鍵や腕時計)でしたらこれで十分ですね。合理的な構造に感心してしまいました。
浴室は窓を除いて全面タイル張りの実用的かつ無機的な造りですが、天井がとても高く、また番台前のラウンジのように大きなガラス窓が印象的であり、屋内であることを一瞬忘れそうになるほど開放的です。明るい時間帯でしたら窓からたっぷりの陽射しが差し込むことでしょう。壁に沿ってL字形に配置されている洗い場には計10基のカランが並んでおり、うち半分はシャワー付きで、シャワー付きと無しが交互に配列されていました。カランから出てくるお湯は温泉かと思われます。
大きな窓の下に据えられている浴槽は、縦長の台形のような形状をしており、最大寸法は約4m×5mで、おおよそ5~6人サイズ。槽内には壁や床と同じ色のタイルが貼られていますが、縁には赤い御影石が用いられており、無機的な室内では、挿し色としてよく映えていました。この縁の上をお湯がしっかり溢れ出ており、放流式の湯使いであることがわかります。
壁から3本の水栓が突き出ており、左右両側は水、そして真ん中はお湯です。左の水栓は止められていましたが、先に布が巻かれている右側の水栓からは冷水が出ていました。一方、真ん中の水栓にはホースが接続されていて、その先からはびっくりするほど激熱の温泉が吐出されていました。表示によれば源泉温度70℃以上のお湯をそのまま投入しているんだそうでして、温泉たまごを茹でるにはもってこいな温度ですが、当然ながらこのままですと人間様は入浴できませんから、加水による温度調整を行っており、それゆえ壁には「水(袋付き)の蛇口は閉めないで下さい」と注意書きが貼られていました。またこれらの蛇口の上にはかき混ぜ棒も用意されていますので、普段から相当熱いお湯であることがわかります。実際に私が入ったところ、体感で44~45℃という熱めの湯加減で、他のお客さんも熱さに体を慣らしながらゆっくり湯船に浸かっており、長湯する方はいらっしゃらず、お客さんの回転(入れ替わり)はかなり早いようでした。
激熱のお湯が出てくる蛇口をクローズアップしてみました。水栓には白い温泉成分が付着していますね。
見た目は無色透明、甘塩味と石膏味がほんのり感じられますが、いずれもかなり薄く、ほとんど無味無臭と表現しても差し支えないほどでした。また分析表によれば、知覚的特徴として「わずかに硫化水素臭」という記載があり、いわゆる硫黄臭(味)をもたらすチオ硫酸イオンが0.5mg含まれているのですが、少なくとも私の入浴時にはそれらしきものは全く確認できませんでした。浴室における知覚的特徴が薄かったのは、加水の影響になのか、貯湯および配湯の段階で弱まっちゃうのか、はたまたそもそも主張の薄い源泉なのか、その辺りの事情はよくわかりません。でも、毎日の汗を流すお風呂としては、このような癖の少ないお湯の方が使い勝手は良いでしょうから、むしろ公衆浴場に向いている泉質と言えそうです。
ピリッとした熱いお湯は、私の弛みきった身や心を、キュッと引き締めてくれました。放流式の温泉をリーズナブルな湯銭で楽しめる、大湯温泉らしい浴場でした。
ナトリウム-塩化物温泉 70.9℃ pH8.1 自然湧出 溶存物質1511.6mg/kg 成分総計1517.5mg/kg
Na+:428.2mg(83.39mval%), Ca++:64.1mg(14.32mval%),
Cl-:693.3mg(86.82mval%), S2O3–:0.5mg, SO4–:98.0mg(9.05mval%), HCO3-:48.9mg,
H2SiO3:92.3mg, HBO2:66.1mg,
秋田県鹿角市十和田大湯字上の湯 地図
0186-37-2140
7:00~21:00 火曜定休
250円
ロッカーあり、他備品類なし(入浴道具の販売あり)
私の好み:★★
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