阿蘇温泉郷の中でもズバ抜けて源泉数が多い阿蘇内牧温泉には共同浴場が11軒もあり、共同湯巡りが好きな人間にとっては垂涎の地であります。今回取り上げる「大阿蘇」の本業は旅館なのですが、その浴場は銭湯として地元の人から愛用されており、だれでも気軽に利用できるので、私も行ってみることにしました。民家のような瓦屋根の上に「天然温泉」と書かれた看板がよく目立つ湯屋は、明らかに小規模共同浴場そのものであり、とても旅館のお風呂だとは思えぬ佇まいです。
この施設は基本的に無人のようで、男女が別れている入口のドアを開けると、そこには料金入れがありました。これだけなら別に珍しくありませんが、料金を実際に投入すると、投入口からチリンと鈴の音が鳴るんです。ちょっとした細工ですが、これで無銭入浴を防いでいるわけですね。それにしても100円という料金設定は驚きです。
ちなみに脱衣所には熊本県の温泉には必ず備え付けられている扇風機がありません。
お風呂は浴槽が一つあるだけの極めてシンプルな造り。自家源泉のお湯はほぼ透明ながら微かに薄い灰青色を帯びているように見えます。口にすると甘み+微金気+微苦味が、そして微金気臭+微硫黄臭が感じられます。トロミのあるお湯で、40℃くらいで長湯できる湯加減。弱めですが気泡の付着も見られます。苦味の正体は硫酸マグネシウムでしょうか。100円の共同浴場であまりお目にかかれない正苦味泉に入れるとは嬉しい限りです。
浴室内には体を洗うためのカランが無いのですが、利用客は常連さんが多いために使い勝手は手馴れており、皆さんは必ず湯口付近で脱衣所を向いて洗髪をしていました。そのスタイルがこちらの流儀のようです。
浴槽の上には温泉の効能が箇条書きされているのですが、浴用の適応症より飲用の適応症の方が多い点が興味深いところ(浴用は8つで飲用は16こ)。常連さんもしきたりかのように皆さん必ず飲んでいました。
シンプルなお風呂ですが、掛け流しで芒硝泉と正苦味泉それぞれの特徴がよく出ている良いお湯でした。えてして良質なお湯に入れる施設ほど安い料金だったりしますが、ここはその典型ですね。おすすめです。
阿蘇温泉(大阿蘇旅館)
ナトリウム・マグネシウム-硫酸塩泉 44.5℃ pH6.87 98.5L/min(掘削自噴・149m) 溶存物質1782.6mg/kg 成分総計1807.1mg/kg
熊本県阿蘇市内牧135 地図
0967-32-0157
7:30~22:00
100円
備品類なし
私の好み:★★★
コメント