約1500年前に行基によって開湯という伝説が残っている伊豆屈指の古湯「谷津温泉」。河津町の峰温泉や谷津温泉は敷居の高い旅館ばっかりなんじゃないかと勝手に思い込んでいたのですが、某日天城峠を越えて東伊豆へ向かっているとき、河津駅付近の路傍に「薬師の湯」と書かれた看板を見かけ、携帯で調べてみたら、どうやらそこでは気軽に日帰り入浴ができるらしいことを知ったので、事前調査なしで行ってみることにしました。河津の峰温泉から小道に逸れて細い道を谷戸の奥へと進んでいったところに位置しており、奥まった立地故に少々わかりにくいのですが、上述のとおり近辺まで来ると立て看板や電信柱の広告があるので、それを目指せば迷わずに済むかと思います。ちょっと古いカーナビで検索すると「ヴィラ・サーフサイド」という名称で出てくるかもしれませんが、それと同一施設ですのでご心配なく。
こちらは民宿兼日帰り入浴施設のようですが、施設内には大きなプールが目立っており、プールサイドにはスキューバ用のボンベが並べられていました。おそらくこのプールでダイビングの練習をするんでしょうね(専らシュノーケル派の私にはよくわかりませんが…)。しかもこのプールの水は全て温泉なんだとか。すごいですね。
館内は店番をしているおばさん以外は誰もいないので、妙に静まり返って不気味でもありました。こちらは温泉入浴の他、源泉の熱を利用した岩盤浴施設もあり、むしろそちらを売りにしているようですが、入浴のみの利用も可能です。
施設内に入ってとっても気になるのが、シューシューと音を立てながら勢い良く蒸気を吹き上げるこの源泉井と櫓。浴室や岩盤浴室のそばにあるので、こちらを利用する方なら誰しもが目を奪われるはず。
近づいてみると、蒸気のみならずお湯もボコボコと湧いています。こういう光景っていつ見ても興奮しちゃいますね。我を忘れて夢中になって観察しちゃいました。
源泉井には湧いたばかりのお湯を貯めておく枡があり、そこには石膏とおぼしき析出が分厚くコーティングされていました。温泉で石膏をはじめとする硫酸塩の析出はよく見かけますが、こんなに分厚い析出はなかなかお目にかかれません。触ってみたいのですが、湧いているお湯は熱湯ですから、指を咥えて傍観するだけにとどめておきました。
傍らにはスケールがかき集められているカゴを発見。すぐに(析出が固まって)スケールが詰まっちゃうんでしょうね。メンテナンスが大変そうです。
この源泉井で湧いたお湯が浴室へ引かれており、そしてその高熱を岩盤浴で利用しているのです。スーパー銭湯で見られるような人工的な熱ではなく、自然の熱であります。その熱はどんなもんか、さっそく行ってみましょう。
では岩盤浴へ。デトックスという言葉が独り歩きしているためか一時期は女性からかなり人気を集めましたが、この手の所謂「お湯のいらないお風呂」は今に始まった話ではなく、信州の渋温泉には「信玄竈風呂」がありますし(そういえば渋温泉の開湯伝説にも行基がかかわってきますね)、秋田県の玉川温泉に行けば中高年が茣蓙を敷いてそこらじゅうに寝っ転がっているわけで、つまりは日本古来の温浴方法のひとつであり、昔から同じようにして爽快感や健康増進を図っていたんですね。
余談はさておき、こちらの岩盤浴場は建てられてからあまり年月が経っていないのかかなり綺麗です。
岩盤浴室内はこんな感じ。こちらの部屋は男女兼用ですが、この反対側には女性専用ルームもあります。窓から外の光が降り注ぐので、岩盤浴は薄暗い部屋じゃなきゃイヤという方にはちょっと不向きかも。しかしながら玉砂利から伝わってくる温泉の熱はやはりすごい。体の芯までしっかり伝わりますね。実に気持ち良い。全身汗だくになったところで、休憩室に備え付けの水を飲んでから浴室へ。
浴室の脱衣室もシンプルな構成ながらとても清潔です。なおロッカーは脱衣所内には無く岩盤浴棟に設置されています。
内湯の様子。7~8人サイズの浴槽がひとつ、その手前の洗い場にはシャワー付き混合栓4基設置されています。画像ではわかりにくいのですが、浴槽左脇には飛び石が置かれ、それを渡ってドアを開けて屋外の露天へ向かうようになっています。
湧出温度がなんと100℃という、これ以上無い熱湯を源泉櫓からわずか数十メートルの距離で浴槽へ投入しているため、湯口から注がれるお湯は激熱。湯口を観察すると、部分的に冷たい箇所もあったので、源泉投入量を絞って加水しながら湯温調整しているようですが、それでも結構熱かった…。湯口内部の配管や周囲の石には、石膏のトゲトゲ析出がビッシリ付着していますね。
トロトロとしたお湯は無色澄明、よく見ると微細な白い浮遊物もチラホラ。泉質名には塩化ナトリウムが含まれていますが、味に塩気は無く、硫酸塩泉的な味と匂いが明瞭に感じられ、青白い輝きも明瞭で、湯中の肌も青白く見えます。スベスベとした滑らかな肌触りの中に硫酸塩泉的な引っ掛かりが混在。熱い上にしっかりと硫酸塩が効いているので、ちょっと浸かるだけですぐに体がヘロヘロになってしまうのですが、でも浴感がいいので再びお湯に戻りたくなり、自分の体力と相談しながら入ったり出たりを何度も繰り返してしまいました。
露天はあまり開放感はないものの、塀の手前に潅木類を配して、小さな庭としてしっかり纏められた造りです。この岩風呂は5人サイズで、こちらの浴槽の縁にもちゃんと白い析出が付着していますね。たまに電車の走行音が聞こえてくるので湯船から見上げてみると、真上を伊豆急の電車が走っていました。「隠れ鉄」な私は密かに興奮。でもお湯は内湯の方がキリっとした浴感が冴えていたので、個人的には内湯の方が好きかも…。というのも、露天も内湯同様に源泉投入量を絞りつつ、加水をして湯加減を調整しており、画像で写っている湯口の他、内湯側から足を入れる浴槽中の段付近にも塩ビパイプの湯口が設けられているのですが、両方の湯口はいずれも投入量が少なく、もしお客さんで混雑したらたちまちお湯が鈍っちゃいそうな感じなのです。ま、そうなりそうな状況なら、施設側で投入量を調整するんでしょうから余計な心配は無用かもしれませんね。
ちなみにこの露天で湯浴みしていると、たまに櫓の方から風に乗って鼻を刺激する微かな匂いが感じられました。源泉櫓のすぐ傍だからこそ、こんなことも体感できるんだと思います。
いかにも伊豆らしい無色透明の硫酸塩泉ですが、お湯の元々の泉質に鮮度の良さが相俟って、湯上りに得られた体の芯からホッコリする温まり方からはパワー漲るお湯の実力を実感でき、それでいてベタベタするわけでもなく、むしろスッキリサッパリした爽快感もあり、見た目からは想像できない潜在能力を持った優れたお湯であると感じました。ただ、料金設定がいかにも伊豆らしい高さであり、これをどう捉えるかは難しいところ。でも私個人の感想としては、お湯の良さや源泉を使用した岩盤浴の気持ちよさを考えれば、決して高くはないかと思います。
谷津38号
ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉 100℃ pH8.6 成分総計1377.28mg/kg
伊豆急行・河津駅より徒歩20分(約1.5km)
静岡県賀茂郡河津町谷津171-1 地図
0558-34-1445
ホームページ
?~22:00
入浴のみ800円(小タオル付)
岩盤浴+入浴1600円(3時間)
ロッカー(100円)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★
コメント
Unknown
K-Iさん、ご無沙汰しております。
伊豆の温泉を検索していたらたどり着いちゃいました。
先日河津桜見物に行ってまいりましたが、今年は開花が遅れ、まだまだ満開は先の様です。
私の目的はこの時期のみ開放される共同浴場でした。
観光客はみな屋上の足湯に入るので、入浴している方はおらず、ずっと貸切状態でしたよ。
今年は春が遠い…
野暮天さん、こんばんは。
河津桜はまだ満開ではないですか。今年は遅いですね。近所の梅もまだまだですし…。今日も冷たい雨が降り続き、肩をすぼめながら一日を過ごしました。春の到来は遅れていますが、スギの花粉はしっかり飛んでいるようでして、私は症状が本格的に出始めてます
>この時期のみ開放される共同浴場
あそこって河津桜の時期に開放されるんですか。何度か桜の時期に河津へ行っていますが、知りませんでした…。1年後に行くべき課題にします。
来週は台湾へ飛んできます
目的はもちろん…
Unknown
来年は是非チャレンジしてください。
足湯は人がいたけれど、浴場は誰も入ってきませんでした。
>来週は台湾へ飛んできます
うらやまし~。
古き良き日本時代の温泉が残っていたりするようですね。
Unknown
伊豆のジモ専って、外来者は近寄りがたいイメージがあるんですけど、開放されるんでしたら余計な心配しなくて済みますね。そのようなお風呂をきちんとチェックして、もっと細かく情報を仕入れなきゃいけないな、と反省してます
台湾の温泉はいろんな種類があって面白いです。戻ってきましたらこのブログでも記事にさせていただきます。
Unknown
岩盤浴が人気で昔は2泊3日で宿泊して凄く疲れがとれました 昼食は車で食べに行きました 駅までも20分位で歩けるし 岩盤浴は汗が滝のように出てお勧めです
Unknown
イガラシさん、こんにちは。
谷津温泉薬師の湯は、現在アミドローラという名前に変わって営業しており、現在でも人気の宿のようです。