大湯温泉 元旅館のお風呂

秋田県

※諸般の事情を鑑み、タイトルおよび本文を一部改編しました(2012年10月)。


元々は旅館だったこちらの建物には、知る人ぞ知る素晴らしい温泉の浴室があります。既に旅館業は廃業しており、現在は客商売を行っていないようですが、某日訪問して入浴をお願いしたところ、ありがたいことに受け入れてくださいました。一応玄関前には車が2台ほど停められるスペースがあり、私の訪問時は既に先客の車がとまっていました。お風呂は一つのみの貸切ですので、先客が出るのを待ってから利用させていただきました。

 
ご主人は実に丁寧に対応して下さり、わざわざ浴室まで案内してくださいました。いかにも和風旅館な造りの廊下を奥へと歩いていきます。わずか200円しか支払っていないのが申し訳なくなるほどの丁重な姿勢に、思わず恐縮してしまいました。客室内は今すぐにでも客が泊まれそうな状態です(もしかしたら昔からのお得意さんなら今でも泊まれるのかしら…)。


廊下にはこちらのお風呂の様子を描いた勝平得之の版画が額縁に収められていました。作者の当宿に対する愛情が伝わってくる絵ですね。

 
上述のように浴室はひとつだけの貸切です。男女のグループで利用する場合は混浴になります。
ブロックが積まれて浴室との壁を成している脱衣所には、裸電球がひとつぶらさがっているだけ、実に簡素です。おもいっきり鄙びたこの脱衣所からは、良質な温泉が持つ独特の雰囲気が漂っていました。

 
脱衣所の扉を開けると、そこにはまるで洞窟のような空間が広がっていました。階段を下っていきます。窓の外からは大湯川が流れる音が聞こえてきますが、もしかしたら階段の一番下はその川面より低い位置かもしれません。川とは反対側の岩の崖面には一面に苔や羊歯、そして蕗のような葉の植物が生え、あたかもジャングルのような緑の絨毯(壁紙?)を形成していました。名前の通りの、岩のお風呂。川岸の巨大な岩を穿って造ったような、とても神秘的な空気感に、早くも私は圧倒されてしまいました。


浴槽は2つあり、階段下りてすぐところに小さなものがひとつ(ここではAとします)、そしてその脇に大きな浴槽がひとつです(同じくBとします)。Aはやや熱めで、Bはちょうど良い湯加減。
Aは浴槽の隅っこからお湯が湧きでており、A浴槽を満たした後はBへと流れでてゆきます。このお湯はどこからか引いているわけではなく、まさにその穴から湧出しているものと思われます。つまり源泉の湧きたてのお湯です。

 
一方、大きな浴槽のBはAの単なる下流かといえば、全くそうではありません。なんとBの底面のあちこちからもお湯が湧き、頻繁に湯面をボコっと盛り上げているのです。そして両方のお湯が合わさり、大量にオーバーフローしているのです。つまりBは足元湧出なんです。これ以上ない新鮮なお湯です。


B浴槽の底で湧出の多い箇所をよく見ると、硫黄が白く綿状に付着しているのがわかります。こうした湧出点はひとつではなく、底(岩)の全体から湧いている感じです。


お湯がオーバーフローしてゆく先でもお湯が出ている箇所を発見。穴からお湯が出ていますが、その穴には川側の窓際から引かれているパイプが突っ込まれており、どうやら穴が源泉というわけではなくて、パイプからお湯が供給されているようです(ここではこのお湯をCとします)。結構ぬるいお湯で、浴槽に溜められること無くそのまま排水されており、何のためにわざわざパイプを引いてここで排湯しているのかは不明。

お湯は無色透明、薄いながらはっきりわかる塩味に弱いタマゴ味、そしてタマゴ臭が感じられます。タマゴ感(つまり硫黄感)はCが、塩味はAが、湧出量はBが、それぞれ大のようです。Bのお湯には茶色い湯の華がたくさん浮遊していました。
足元からの自然湧出なので、当然加水加温消毒循環なんて一切無いわけですが、特にBの湯加減は絶妙!! 永遠に浸かっていたくなりました。何にも手が加えられていないのに最高な湯加減になっているとは、まさに自然の恵み、奇跡であります。

含硫黄-ナトリウム-塩化物温泉 源泉温度不明 pH7.8 溶存物質1.39g/kg 成分総計1.42g/kg
ナトリウムイオン363.5mg/kg(83.87mval%)、塩素イオン556.9mg/kg(81.36mval%)

秋田県鹿角市十和田大湯温泉某所

入浴可能時間:不明(常識の範囲内で)
200円
シャンプー類あり

私の好み:★★★

コメント

タイトルとURLをコピーしました