津軽弘前の奥座敷である大鰐温泉には共同浴場が9軒存在しています。それらの多くは小規模で外部者の利用には制限があったりしますが、この中でも「若松会館」は駅から近くて見つけやすい建物であるため、旅行者にも利用しやすいお風呂ではないかと思います。駅から温泉街に向かって歩き、平川に架かるトラス鉄橋を渡って右に折れたらすぐに到達です。川の対岸の橋の傍に位置しているので、駅から歩いていけば迷うことないかと思います。私はこれまで何度もお世話になっており、目を瞑っても駅から辿りつける自信があります。
でも足繁く通っている温泉って、あんまりカメラで撮影しようという気になれないんですよね。「若松会館」もそのひとつでして、過去の画像フォルダを懸命に漁ってみたのですが、結局みつかったのは、外観を写した2枚と、浴槽を写した1枚だけでした。いつもより画像が少なくて申し訳ありません。
浴室の中央には、角が取れて丸くなった長方形浴槽が据えられ、その周りをカランが囲むという津軽の伝統的な公衆浴場スタイルを踏襲しています。浴室内の壁や浴槽縁の小さなタイルには昭和の美学とでもいうべき、鮮やかな色遣いが施され、古い浴場なのに色彩的なインパクトが強めです。川沿いという絶好なロケーションなので、窓を開けると目下に悠然と流れる平川が眺められ、川面から心地よい風が浴室へと流れてきます。
お湯は無色澄明で、薄い塩味、そして芒硝の味と匂いが感じられます。源泉温度が高いので加水されていますが、湯使いとしては加温循環消毒無しの放流式で、常に新鮮なお湯が楽しめます。源泉は浴槽下部のバルブから投入され、その真上に加水用の蛇口が設置されています。加水されているものの湯温は高めで、その上に硫酸塩のパワーの加わってくるので、湯船に入りしなは肌がピリピリするかもしれません。でもそのピリピリが心地よいんですね。家庭の風呂じゃ味わえない温泉ならではの感触が伝わってきます。
大鰐の湯は基本的には澄んだ清らかなお湯ですが、特に冬期になるとごく僅かに白く濁ることがあります。大鰐温泉のお湯はいくつかの源泉を青柳の貯湯槽に集めて一括管理しているのですが、温泉水の使用量が多くなる冬期になると、源泉のうち赤湯源泉から引いてくる量が多くなり、この赤湯源泉は他源泉よりも鉄分を多く含んでいるため、この鉄分が酸化して混濁を発生させてしまうのです。決して源泉が汚れたとか質が悪化したわけではないので、もし若干濁っていてもお気になさらずに。
画像が少ないので、「若松会館」の近所にある「湯魂石薬師堂」の画像でも一緒に載せておきましょう。
津軽藩開祖の津軽為信が慶長年間に眼病を患って悩んでいたところ、夢の中で「大鰐の湯で眼を洗えば治る」という薬師如来のお告げを受けたので、それに従って芦の原を探索してみたら、大きな石の下から湧き出る熱湯を発見し、実際にそのお湯で目を洗ったら難病が完治したという伝承が残っています。為信はとても喜び、謝意をあらわすため、その大きな石の上に祠を建立し「湯魂石薬師堂」と名付けたんだそうです。現在はその大石を模した源泉の出るモニュメント、そして足湯が併設されています。大鰐という地名の通り、お湯は鰐の口から注がれています。鰐の口のまわりは硫酸塩の析出で真っ白に付着していますよ。いくら言い伝えがあるからといって、今はそのお湯で洗眼しないほうが宜しいかと…。
大鰐統合源泉(青柳3号・植田2号・赤湯2号・石原)
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 68.0℃ pH7.2 940L/min(配湯量) 溶存物質2.6740g/kg 成分総計2.6879g/kg
Na:710.9mg(73.57mval%), Ca:182.2mg(21/63mval%), Cl:1080.9mg(72.54mval%), SO4:140.4mg(21.63mval%)
JR奥羽本線・大鰐温泉駅もしくは弘南鉄道大鰐駅より徒歩6~7分(約600m)
青森県南津軽郡大鰐町大字大鰐字大鰐59-1 地図
0172-48-4001
6:00~21:00 毎月18日休業(祝日や日曜の場合は前日か翌日に休業)
200円
ロッカーあり、ドライヤー有料(20円)
私の好み:★★
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