昨年(2015年)秋某日の日没後、秋田県境に接する碇ヶ関の公営温泉公衆浴場「碇ヶ関温泉会館」へ立ち寄りました。
会館と称するだけあって、浴場のみならず研修棟や商工会棟が棟続きに一体となっています。温泉棟は玄関を入って左斜め前。男女両入口に挟まれる形でカウンターがあり、その前方に設置されてる券売機で入浴券を購入し、カウンターに置かれている透明アクリルの箱へ券を投入します。ピンクの公衆電話なんて、いま時珍しいですね。平成生まれの若者はダイヤル式の電話の使い方を知っているのでしょうか。
受付ホールにはベンチが置かれている他、茣蓙敷きのお座敷も設けられ、湯上がりに休憩できる環境が整えられていました。私が訪問した時、受付カウンターには誰もいなかったのですが、奥の控室には管理のおばちゃんがおり、脱衣室の清掃や浴槽の温度測定などいろんな仕事を忙しそうにこなしていらっしゃいました。
こちらの浴場は観光要素よりも地元の方々の汗を流すことが主目的であるため、いわゆる温泉風情なものはなく、使い勝手を重視した実用的な構造です。しかしながら、広い床面積と高い天井、そして大きな窓により、屋内ながら開放的な空間となっており、のびのびと湯浴みすることができました。
浴室内には2つの浴槽の他、サウナが設置されていて、津々浦々の浴場と同じくこちらでもサウナは人気を博していました。でもせっかくサウナがあるのに水風呂が無いのはちょっと残念かな。洗い場には、オートストップ式のお湯と水、そしてお湯が出るシャワーという3種類の単水栓が1ペアとなったブースが計14組取り付けられています。もしかしたら水栓から出てくるお湯は温泉かも。
窓に面して据えられた浴槽は大小に分かれていて、手前側の小浴槽は8〜9人サイズで湯口のお湯が直接注がれており、私の体感で44℃前後の熱い湯加減になっていました。一方、奥側の大きな浴槽は小浴槽の倍近い容量を有する広々とした造りで、お湯は小浴槽から流れてくるものを受けており、万人受する適温に調整されていました。そしてこの大きな浴槽の縁から洗い場へ向かって、波紋を描きながらお湯が絶え間なくオーバーフローし、洗い場の床に落とされる石鹸やシャンプーの泡をすすぎ流していました。
うっすらと白くなっている石造りの湯口からは、50℃弱の熱いお湯が注がれていたのですが、管理のおばちゃんが湯加減を測りに来た後、湯口のお湯が一時的にぬるくなったので、適宜加水が行われているようです。大きな浴槽内には泡風呂装置のようなものが埋め込まれていましたが稼働しておらず、また槽内におけるお湯の吸い込みや供給も見られなかったので、加水を行いながら放流式の湯使いを実践しているものと思われます(消毒に関しては不明)。分析書によればあともう少しで食塩泉を名乗れそうな単純泉で、無色透明、ほぼ無味無臭です。弱いツルスベを有する柔らかな浴感で、真湯とは違うトロミのような滑らかさもあり、クセがないアッサリ系のお湯にもかかわらず温浴効果もしっかりと得られ、さすが本物の温泉だと納得させられました。こちらで使われているお湯は三笠山3号泉という源泉。三笠山といっても文明堂のどら焼きとは全く関係ないのですが、分析書に記された源泉湧出地とこの浴場の所在地は同じ地番(碇ヶ関鯨森8-1)ですので、この源泉は施設の敷地内で湧出しているのかもしれませんね。
無色透明無味無臭の温泉は、物見遊山で入るならば面白みに欠けるのですが、地元で生活する方にとっては日々の入浴に向いており、私が利用した時も大勢の常連さんで賑わっていました。特に地元の方は通常料金(250円)より50円安い200円で利用できますから、自宅のお風呂よりも便利で気持ち良いのでしょうね。地域の憩いの場として立派に機能しているお風呂でした。
三笠山3号泉
単純温泉 45.2℃ pH7.4 湧出量測定不能(掘削動力揚湯) 溶存物質0.884g/kg 成分総計0.894g/kg
Na+:229.6mg(75.74mval%), Ca++:55.8mg(21.15mval%),
Cl-:377.1mg(83.06mval%), SO4–:41.8mg(6.79mval%), HCO3-:76.4mg(9.76mval%),
H2SiO3:80.9mg,
(平成24年9月10日)
JR奥羽本線・碇ヶ関駅より徒歩11〜12分(850m)
青森県平川市碇ヶ関鯨森8-1 地図
0172-45-2226
6:00〜22:00 第3月曜定休
250円
貴重品用ロッカーあり(100円リターン式)、有料ドライヤーあり(100円)
私の好み:★★
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