箒川が大きく湾曲する内側の、半島のように突き出た一角に肩を寄せ合うようにして民家や小規模旅館がひしめき合う畑下温泉。その温泉街の中に位置する鉄筋造の小規模旅館「ホテルぬりや」さんにお邪魔してひとっ風呂浴びてきました。畑下温泉は立ち寄り入浴不可な施設が比較的多いのですが、湯巡手形を呈示して日帰り入浴をお願いすると、女将は愛想よく丁寧に対応してくださいました。浴室は1階帳場の奥にあり、男湯は右側です。
やや古めかしいながらもよく手入れされており綺麗な脱衣室。旅館らしくアメニティー類も一通り揃っています(もちろん宿泊客用なので私は使用を遠慮しましたが)。
川に面した浴室。窓を開けるとすぐ目の前に箒川が流れています。
洗い場には混合水栓が4つ設けられており、うち2つはシャワー付きです。なおお湯は真湯が出てきます。
浴槽は6人サイズで、湯加減はやや熱め。立方体のタイルを積み重ねたような湯口から源泉が注がれており、浴槽手前の切り欠けから排湯されています。源泉温度から察するにおそらく加水されているかと思われますが、湯使い自体はしっかり放流式で循環などは行われていません。
お湯はうっすらと橙色に笹濁り、湯口まわりにはトゲトゲした析出がこびりついています。浴槽全体や排湯の流路は赤く染まっており、析出によってところどころが凸凹になっていました。お湯を口にしてみると、微かな塩味とともに金気味や石膏味が舌に伝わり、金気臭や石膏臭、そして何かをローストしたような香ばしい匂いが嗅ぎ取れました。
お宿の名前は、かつて箒川に沿って塩原を抜けていった会津塗りの行商人たちがこちらへ度々泊まったことから名付けられたんだそうでして、建物こそ違うものの、草鞋がけで険しい峠道を歩きぬいた往時の行商人たちが、このお湯で長旅の疲れを癒したのかと想像しながら湯あみしてみたら、えも言われぬ風情と古の旅の面影が伝わってくるような気がきました。派手さも豪華さも無いものの、女将が温かく迎えてくれる、こじんまりした宿ならではの優しさが嬉しい施設でした。
畑下源泉
ナトリウム-塩化物温泉 77.8℃ pH6.5 224.0L/min(動力揚湯) 溶存物質2413mg/kg 成分総計2563mg/kg
Na+:583.1ng(75.76mval%), Ca++:123.1mg(18.35mval%),
Cl-:860.0mg(70.16mval%), SO4-:266.3mg(16.03mval%), HCO3-:283.2mg(13.42mval%),
H2SiO3:179.3mg, 遊離CO2:150.2mg,
那須塩原駅もしくは西那須野駅からJRバスの塩原温泉行で「畑下」バス停下車、徒歩3~5分
栃木県那須塩原市塩原454 地図
0287-32-2340
ホームページ
日帰り入浴時間13:00~16:00
500円
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品帳場預かり
私の好み:★★
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●ついでに畑下を散策
往来の激しい国道400号からちょっと離れるだけで、喧騒から無縁の世界へとエスケープすることができる鄙びた温泉街畑下。この地区にはたくさんの小さな地元専用共同浴場(以下「ジモ専」)があり、いずれも外来者は利用できませんが、生活と温泉が古くから結びついているその鄙びた佇まいを目にするだけでも温泉ファンとしては嬉しくなります。
国道からちょっと路地を入るだけでもこんな共同浴場(「高砂の湯」)を見つけることができました。草臥れていて風情たっぷり。あぁ、入ってみたいなぁ…。
湯屋にはお湯汲み場も付帯していました。
川の対岸にもジモ専の湯屋(「下田の湯」)を発見。屋根に湯気抜きがあるので、一発で湯屋だとわかりますね。
湯小屋から画面左下の河原へ、下膨れのJの字のように延びているコンクリの先にあるのは、おそらく源泉でしょう。
今回の目的地「ホテルぬりや」の斜め前にも小さな小さな湯屋を発見。本当にこの地区にはジモ専が多いですね。
「ホテルぬりや」裏手を流れる箒川には吊り橋がかかっており、対岸の橋の袂にはかつて無人の露天風呂「青葉の湯」がありました。
しかしながら、現在は「楓の湯」と改称されて宿泊施設所有のお風呂となっており、その施設の宿泊客以外は入浴できなくなってしまいました。残念です…。入口前には「不動の湯」や「岩の湯」で見られるような円筒形の料金入れが、口に封をした状態でまだ残されており、これがかつての「青葉の湯」の名残と言えるでしょう。
コメント
温泉ふるまい
K-Iさん こんばんは
先日、今年用の湯めぐり手形の入手のために塩原に行って来たばかりです。ついでに福渡温泉の和泉屋に手形で寄ってきました。
自分も最近知ったのですが、去年の古式湯まつりの際に温泉ふるまいなる企画が実施され、協賛している宿のお風呂が無料で入れる素敵なイベントがあったのですが、そのリストの中に普段は開放されていないジモ専が三つ含まれていました。
古町温泉の平成の湯、旭の湯。畑下温泉のしもの湯。
下畑のしもの湯はたぶんぬりやの前の湯小屋です。
今年も開催してくれないかなぁ。でないと悔しくて寝れない。多分こんな自分は病気です。
私も…
いねぞさん、こんばんは。
>温泉ふるまい
↓これですよね。
http://www.siobara.or.jp/planfurumai.stm
実はその情報を入手していたのですが、当日は関西にいたため訪れることができませんでした。
普段は入れないジモ専を利用できる絶好のチャンスだったのに、悔しくて悔しくてたまりません。私も同じく病気です
>今年も
まったく同感です。お祭り自体は毎年9月に行われているそうですから、今年もふるまいが開催されることを期待したいですね。
観光協会に電話しよう…
K-I さん こんにちは
>↓これですよね。
そうです。そうです。最初に見たときは無料かぁ。でもほとんど入っているなぁでスルーしてしまったんですが、改めてみると。ちゃんと見ないとダメですね。
>実はその情報を入手していた
それは、なおさら悔しいですね。同じ病状の者としてとても気持ちが判ります。(嫁には判らんと一蹴されました)
>今年もふるまいが開催されることを期待したいですね。
まさに。では今年の湯まつりでお会いしましょう。(笑)
Unknown
>改めてみると
温泉めぐりではこの手のケアレスミスで何度となく悔しい思いをしていることか…。ズボラでそそっかしい自分の性格を恨んでいます
こまめに情報を集めていらっしゃる方には敬服するばかりです。