宮城県を襲った地震といえば、言わずもがな2011年3月11日の東日本大震災がまず思い浮かびますが、2008年6月14日に発生した「岩手・宮城内陸地震」も決して忘れることができません。特に土石流が駒の湯温泉を飲み込んだニュース映像は誰しもが衝撃を受けたのではないでしょうか。この駒の湯を含め震源地付近の温泉は、土石流に飲み込まれたり、あるいは源泉湧出量が激減するなどの被害を受け、どこもしばらくは営業ができない状態が続いていましたが、先日ぽちさんのブログ「づれづれ草」にて、湯浜温泉「三浦旅館」の新源泉の使用が開始されたという情報が紹介されたので、居ても立ってもいられなくなり、東北で所用があった某日、無理やり栗駒方面へ寄り道して、立ち寄り入浴してきました。本当はゆっくり宿泊したかったのですが、どうしても都合がつかなかったため、泣く泣く入浴のみとなってしまいました。
※新源泉の使用開始および営業再開については、ぽちさんのブログの2012年6月15日付「湯浜温泉・三浦旅館に新源泉!!」および同年7月30日付「湯浜温泉三浦旅館8月1日宿泊営業再開!」をご参照あれ。
湯浜温泉は徒歩のみでアクセスできる一軒宿の秘湯。国道398号線の路肩にある駐車場に車をとめ、ここから約7分、登山道を歩いてゆきます。ま、わずか数分ですから、服装や装備などは特に気を使うことはありません。私もサンダルで歩きましたし…。
登山道の入口には、温泉の赤い幟が立てられていました。またその反対側では木彫りのフクロウが出迎えてくれます。
美しいブナ林の斜面を下りてゆき…
コンクリの橋を渡って対岸へ。
橋から先は、川の左岸の縁を進みます。橋詰の岩にはペンキで「あと3分」と書かれています。たった3分で着いちゃうのか。とっても清々しい環境なんだから、もうすこし歩きたいなぁ…。
小さな滝の脇をコンクリの階段で下ります。辺りの岩からは湯気が立ち上っていました。
道は川からちょっと離れて再びブナ林の中へと入ってゆきますが、途中で川の方を見下ろすと、露天風呂を発見しました。
ちゃんとお手入れされているのか、浴槽の周辺や槽内にはごみのようなものは無く、桶もきちんと並べられています。でもお湯はかなりぬるめでしたし、嵩も低く、何よりこの時は空模様が今にも泣きだしそうだったので、後ろ髪がひかれる思いでしたが、今回はパスすることに。
登山道に戻って山の中を歩いてゆくと、再び木彫りのふくろうが路傍に現れ、そこを通過すると…
いきなり視界が開け、三浦旅館の建物が目に入ってきました。当地には車が入ってこられないため、頭上には物資運搬用のケーブルが張られており、宿への物資は国道の路肩に設けられた積み込み場から空を渡ってここへと運ばれてきます。画像の左の方では白い湯気が上がっていますね。
これが新源泉であります。タンクも樋もコンクリ枡もまだまだ真新しく輝いていますね。湯気からはほんのりと硫黄の匂いが漂っていました。熱い源泉を加水することなく冷ますために、わざわざ樋に落としているのでしょう。この源泉は今年6月には湧出しており、夏の本格的な観光シーズンに間に合うよう準備を進めていたんだそうですが、「河北新報」の記事によれば…
口径をめぐって掘削業者と県に認識の違いがあり、今もその溝は埋まっていないが、旅館側は「改良工事は難しい。これ以上、再開が遅れるのは避けたい」として掘削許可を申請し直す方向だ。
という事情があって営業開始が遅れてしまい、ひとまず7月下旬から日帰り入浴のみ、8月からようやく宿泊営業も再開されるに至ったんだそうです。
それでは早速伺うことにしましょう。この時は奥さんが対応してくださいました。
自家発電により電気も使えますが、館内各室には昔ながらのランプも吊り下げられており、日が暮れると温かく柔らかな明かりを灯してくれるみたいです(日中の日帰り利用でしたので、残念ながらランプが灯るシーンには遭遇しませんでした。)。
お風呂は男女別の内湯が一室ずつ。脱衣室にもホヤが綺麗に磨かれたランプが台の中に納められ、今か今かと点灯されるのを待っているようでした。なお室内に掲示されている温泉分析表は日付が平成20年となっているため、旧源泉のものかと思われます。
この時は私以外に客がおらず、また周囲には宿の他に人工物が無いため、館内は静寂に包まれており、浴室は樋からお湯が落とされる音だけが響くばかりで、他の音は一切聞こえませんでした。浴室の床は石板貼りで、側面腰部は鉄平石、それより上部は木材の上に化成建材がカバーされています。洗い場にはシャワー付き混合水栓が1基あるのみです。
樋からしずしずと注がれる新源泉。この樋や浴槽は総木造で、山奥の秘湯らしいぬくもりと風情が感じられます。お湯は無色透明、うっすらながらはっきりと硫黄の味と匂い(タマゴ感と砂消しゴム感を足して2で割ったような味と匂い)が確認でき、メタケイ酸が比較的多いためか、ツルスベ感がとても良好で、湯あみ中は何度も自分の肌をさすってしまうほど気持ち良い浴感でした。
やや熱めの湯加減なので、熱いお風呂が苦手な方は加水することをおすすめします。
お湯の中では大小さまざまな大きさの、茶色い湯の華がたくさん浮遊しており、あるいは沈澱しています。桶に掬うとその形状がわかりやすく確認できるかと思います。湯使いはもちろん完全掛け流しです。
トポトポと湯船にお湯が注がれる音を耳にしながら、この宿を長い休業状態から復活させる主人公となったこの新源泉に浸かって瞑目していると、宿のオーナーさんをはじめ関係している方々のご苦労が伝わってくるようでした。お客さんの目に体に触れるようになってまだ数か月の新源泉ですが、これからどれだけの人の心身を癒すのでしょうか。
宮城県内は全県的に渇水だというのに、栗駒だけは例外らしく、お風呂に入っていると、私がここへたどり着きまで我慢していた灰色の空が一気に泣きはじめ、それも単に泣くのでのではなく、怒り狂って号泣するかのように、バケツをひっくり返したような激しい夕立となりました。お風呂から上がり、囲炉裏のところに座って1時間ほど雨宿りをしていると、宿の奥さんが冷たい麦茶を持ってきてくださいました、曰く、この日を含めて連日界隈では夕立に見舞われているとのことでした。栗駒だけではなく万遍なく降ってほしいものですが…。
栗駒5湯のうち、復活できているのはこちらを含めて2つだけ。
駒の湯は足湯がそろそろ供用されるみたいですね。
今回は時間の都合で日帰り入浴のみでしたが、次回は栗駒山登山とからめて宿泊して、周囲の自然とともにゆっくりお湯を堪能したいと思います。苦労の末に素晴らしい新源泉を我々に提供してくださっているオーナーさんに感謝です。
かわせみ源泉
単純硫黄温泉 pH8.2 90.7℃(使用位置34.9℃) 蒸発残留物758.4mg/kg 溶存物質777.9mg/kg
Na+:176.5mg(87.37mval%),
Cl-:220.6mg(70.52mval%), HS-:4.7mg(1.59mval%), S2O3–:0.3mg(<0mval%), HCO3-:100.9mg(18.71mval%),
H2SiO3:197.0mg, 遊離H2S:0.5mg,
(平成20年8月18日分析)
(おそらくこの数値は旧源泉のものと思われます)
宮城県栗原市花山字本沢岳山1-11 <a href="http://www.mapion.co.jp/m/38.91477607481211_140.7358600315516_5/">地図
駐車場から徒歩7分
衛星電話090-8925-0204(受付時間7:00~20:00)
ホームページ
日帰り入浴時間7:00~19:00
冬季休業
500円
シャンプー類あり
私の好み:★★★
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