湯涌温泉 銭がめ

石川県・福井県

 
金沢の奥座敷である湯涌温泉には「総湯 白鷺の湯」という有名な日帰り入浴施設がありますが、今回はそちらへ寄らず、更に奥の方へ進んだ県道沿いに位置する「銭がめ」で入浴してまいりました。施設のホームページや各種案内を拝見しますとこちらの施設も湯涌温泉の一部に含まれているようですが、明らかに温泉郷とは一線を画したほうが良いような、かなり離れた一軒宿というべき立地であるように思われます。重厚感のあるこちらの伝統建築は、そもそも加賀藩主(前田家)が鷹狩りの休憩所として使用していたらしい庄屋屋敷だったそうが、ちょっと変わったネーミングは加賀藩と何か関係があるのでしょうか。


川魚料理などをメインにしたお食事処としての営業が主体のようでして、館内には囲炉裏や個室などが設けられており、数年前には宿泊業も兼業するようになったんだそうです。入浴利用者は食堂の玄関から中へとお邪魔します。


苔むした古風な趣きの玄関は宿泊棟の入り口でしょうか? 剣道の道着をまとったカカシが、頭に子供用のカラフルな傘を装着し、両手で竹刀を構えながら、玄関前で直立不動で立ち尽くしていました。用心棒でもしているのかしら。


玄関を入ってすぐ左手にある受付で料金を支払います。玄関の右手には食堂の座敷が奥へと広がっており、その手前には川魚が泳ぐ生簀が据え付けられていました。入浴客は受付の左奥で下足を脱いで、廊下を進んでゆきます。

 
綺麗で落ち着いた雰囲気の館内。浴室の入口付近にはマスコミ取材の際に贈られたサインが掲示されていました。地元の局アナや関西方面で活躍するタレントさん(レツゴー三匹・海原はるかかなた・横山ホットブラザーズなど何故か松竹系が目立っていました)など、東日本ではあまりお目にかかれない方が多かったように記憶しています。

 
浴室へ入らず、廊下の突き当りまで進んでみると、窓の外には昔の農家の裏庭のような寓話的光景が広がっており、古い蔵から鶏がコケコッコと啼きながらヒョコヒョコと出入りしていました。


さてお風呂に向かいましょう。男女別の内湯のみで露天はありません。脱衣室は洗面台が2台あり、清掃がよく行き届いています。室内にはロッカーが設置されていますが、肝心の鍵な無く、利用時は施錠することができませんでした。もしかしたら鍵は受付で借りるのかもしれませんね。


小川が流れる谷を見下ろす大きなガラス窓によって太陽の光が燦々と降り注ぐ明るい浴室。ガラス窓とその対面に当たる出入口側の壁面には石板タイルが、その左右となる浴槽側と洗い場側の壁面には木材が用いられており、こうした天然の材質を活かしたシンメトリな内装によって上品な雰囲気が醸しだされています。洗い場にはシャワー付き混合水栓が4基設置されており、シャワーから出てくるお湯はおそらく源泉だろうと思われます。
4人サイズの浴槽は全てが古代檜で造られており、上質な木材ならではの温かみと重厚感を兼ね備えており、浴槽に身を沈めて肌が槽に当たった時の優しく滑らかな感触が何とも言えません。


湯口からは源泉100%のお湯が注がれています。一見すると投入量はそれほど多くは無さそうですが、浴槽の縁からは絶え間なくお湯がオーバーフローして洗い場へと流れているので、少ないように見える投入量は、実は浴槽の容量に見あっているのかもしれません。なお槽内には循環用と思しき吸引&吐出口が設けられていましたが、私の訪問時には使われておらず、ほぼ完全な掛け流しの状態であったかと思われます。

お湯は無色透明で弱い塩味と共にごく薄いタマゴ味&匂いと石膏味が感じられ、湯口では微かにミシン油臭が香っていたような、いないような…。サラサラとツルツルの中に硫酸塩泉的な引っ掛かりが混在しているような浴感なのですが、驚くべきは夥しい泡付きでして、入浴するとたちまち全身がびっしりと泡で覆われます。拭っても拭ってもすぐ再び付着し、この泡のパワーによって全体的な浴感としてはスベスベが優っているように体感し、泡の魔力に捕らわれて、湯船から出ようにも出られなくなるほど気持ちのよいお湯でした。このため湯船は丁度良い湯加減だったにもかかわらず、湯上りにはすっかり茹だってしまい、全身がしばらく火照ってなかなか汗が引きませんでした。いや、長湯をせずとも、保温効果は優れているかと思います。金沢の奥座敷に相応しい、とってもハイクオリティのお湯でした。

ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 44.2℃ pH8.8 107L/min(動力揚湯) 溶存物質1.891g/kg 成分総計1.894g/kg
Na+:422.6mg(78.70mval%), Ca++:94.9mg(20.28mval%),
Cl-:348.4mg(31.15mval%), SO4–:726.8mg(52.57mval%), HCO3-:155.0mg(8.05mval%), CO3–:75.0mg(7.92mval%),
H2SiO3:35.5mg,

石川県金沢市板ケ谷町イ50  地図
076-235-1426
ホームページ

11:00~21:00 月曜定休(祝日は営業)
500円
ロッカーあり? シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

コメント

  1. 匿名希望 より:

    Unknown
    先日うかがいましたが、たしかに快適でしたね。

    白鷺の湯のほうは塩素臭が強くてプールに入っているような気分になる上に、地元民が洗い場や浴槽を占領して長話をしているのに閉口したのとは対照的です。

    また、湯涌温泉の中心地から外れていることもあって、いまだに「花咲くいろは」目当てにやってくる気持ち悪いアニメオタクと出会うこともないというのが嬉しいですね。

    クールジャパンなどと持ち上げるのはいいとしても、オタクを相手にした地域おこしというのも良し悪しだと思います。

  2. K-I より:

    Unknown
    「白鷺の湯」に関しては湯使いが私の好みと合わなかったので、温泉街からちょっと離れたこちらへお邪魔して、良いお湯を楽しませていただきました。北陸の温泉地は、場所や施設を選ばないと、良いお湯に会えないことが結構ありますね。

  3. 彼方 より:

    Unknown
    自分もつい先日湯涌温泉に泊まったついでに入ってきました。
    冬場の積雪時にも関わらず、確かによく温まるお湯でした。
    入り過ぎるとのぼせますね、あれ。
    自分が行ったときには先客様が4人いて、なかなか浸かれませんでしたが(笑)

    銭がめは源泉も湯涌温泉とは違うので、実際は「銭がめ温泉」とでも呼んだ方が正解でしょうね。
    もっと近い「湯楽」が湯涌温泉を名乗ってないわけですし。
    これで湯涌温泉街にもかけ流し浴槽を用意してくれる宿が出てくれると、一気にお気に入りの温泉郷になるんですが。
    泊まった宿も良かったし風情は好きなので、そこだけが惜しい感じです。

  4. K-I より:

    Unknown
    彼方さん、こんにちは。
    ここのお湯は本当によく温まるお湯ですよね。実際に私はのぼせかけました(笑)。もう少し湯船の大きさが広ければ良いのですが、いろんな事情もあって難しいのかもしれません。
    奥座敷と呼ばれるような、古くからある北陸の有名温泉地のお宿は、伝統的に歓楽的要素に重きを置いてしまうのか、雰囲気やお食事等が重視されて、湯使いは二の次になってしまう傾向にあるように思えてなりません(あくまで個人的な主観にすぎませんが)。仰るように、掛け流しのお宿があれば最高ですよね。

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