肘折温泉 若松屋村井六助 前編(お部屋・「幸の湯」)

山形県

 
今回の肘折における湯めぐりでは、旅館「若松屋村井六助」、通称「六助」さんで一泊お世話になりました。正式名称が長いためか、お電話でも現地でもお宿の方はこの通称を名乗っており、温泉街でも通称で難なく通じてしまいます。ロクスケといっても永六輔じゃありません。

 
渋めな外観に反して館内は民芸調の装飾で鮮やかに彩られています。ロビーでは朝にセルフでコーヒーがいただけるんですね。


鉢の中では金魚が遊泳中。

 
今回案内されたお部屋は4階の一室です。館内にはエレベータがあるので上下移動はとっても楽ちん。
こちらのお宿はプランによって階層が異なっているんだそうでして、今回泊まった4階のお部屋にはエアコンとトイレが完備されていますが、3階と2階はエアコン無しでトイレは共用とのこと。
窓の外ではお向かいのお宿の屋根上で雪下ろしの真っ最中。


お食事は部屋出しなので、他の方に気兼ねなくのんびりいただけました。と言っても肘折希望大橋が開通する前のアクセス状況が宜しくない吹雪の日に伺ってしまったため、この日の宿泊客は私以外にもう一組しかいらっしゃらなかったようです。今回は3ランクある4階の料金プランのうち最もリーズナブルなプランをチョイスしたのですが、それでも焼魚・刺身・煮物・おひたし、そして口に入れるだけで蕩けてしまうとっても柔らかい牛肉のお鍋など豊富な献立が御膳の上に並び、しかもツヤツヤに輝いた白いご飯が薫り高くて本当に美味しく、大食感な私でも充分にお腹を満たせ、ご機嫌の余りに舌鼓を打ちまくりました。
なお朝食もお部屋出しですが、そちらは撮り忘れちゃいました。

●幸の湯
 
今回こちらのお宿を選んだ大きな理由の一つがこの「幸の湯」の存在でした。肘折温泉で湯めぐりしていると、多くのお宿および入浴施設が組合源泉を単独もしくは混合して引いているため、どうしてもこの組合源泉という大きな壁にぶち当たってしまいます。ブレンドしている源泉の違いこそあれ、巡ってゆくにつれて入浴できるお湯はいくつかのパターンに収斂されてしまい、次第に湯使いの違いや浴室の造りの相違を見出して楽しむといった方向性を進まざるを得なくなります。
そんな肘折にあって自家源泉を有しているお宿は非常に貴重な存在なのですが、この「六助」さんもそのひとつであり、貸切風呂「幸の湯」でその自家源泉100%のお風呂に入ることができるのであります。浴室名は昭和33年6月にこちらを利用した高松宮様が命名したんだそうです。私は中学から大学まで東京目白にキャンパスを構える菊の御紋に縁のある学校に通っていたためか、普段は同窓会のハガキを見ずに捨てちゃうほど愛校心の欠片もないのに、地方で皇族関係のものと遭遇するとどうしても気になってしまう妙な癖があります。

 
扉にぶら下がってる木札が「どうぞお入り下さい」ならば入浴可能で、裏っ返して「入浴中」だったら他の方が利用中。


綺麗で手入れがよく行き届いている脱衣室。洗面台は設置されていますが、ドライヤーの備え付けはありませんので、もし使いたい場合は次回取り上げる大浴場へ。

 
木造の浴室からは重みと風格が醸しだされています。腰板や浴槽など水回りは石板貼りです。窓を開けたら格子越しに温泉街のメインストリートが目に入ってきました。洗い場にはシャワー付き混合水栓が1基取り付けられており、もちろんシャンプー類も完備です。

 
長方形を斜めに切ったような台形の浴槽は2人サイズ。二段に組まれた石の湯口からトポトポと源泉が落とされています。上述のように自家源泉である村井源泉100%のお湯が注がれ、完全掛け流しという喜ばしい湯使いです。夜間に利用したので色に関してははっきりわかりませんが、ほんのり黄土色を帯びているようにも見えるものの、底がはっきりと見える程に無色透明であり、その透明度は肘折屈指かもしれません。多くの施設に引かれている2号泉のような浴槽の縁などへの析出や赤茶色の付着も少なく、明らかに組合源泉とはかなり性格を異にしています。

お湯を口にすると甘塩味と薄出汁味、そして炭酸味が感じられ、金気もありますがかなりマイルドです。他源泉より炭酸味が強く、肌にうっすらと細やかな気泡が付着します。やや熱めだがトロトロした感触がとても心地よく、ツルスベ感もはっきり伝わり、出ようと思っても出られない後を引くなんとも言えない極楽湯でした。

今回の宿泊では夕食前に1回、就寝前に1回、そして起床直後に1回、計3回も入ってしまいました。この「幸の湯」は本当に湯浴み客に幸福感をもたらしてくれますね。素晴らしいです。

村井源泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉 43.0℃ pH6.2 溶存物質1853mg/kg
Na+:469.4mg, Ca++:40.9mg,
Cl-:454.6mg, SO4–:112.9mg, HCO3-:538.2mg,
H2SiO3:110.4mg, CO2:632.2mg,

次回へ続く

コメント

  1. ぱと より:

    Unknown
    山形は米も蕎麦も魚、肉、果物も全て美味いですよね、そのうえ温泉も最高ですから楽園ですね!自宅でもつ煮で一杯やってる場合じゃ無いですね(汗)

  2. K-I より:

    まさに
    ぱとさん、こんばんは。山形県はまさに桃源郷のような場所ですね。お湯も食材も良いですし、みなさん温かく接してくださいます。 
    最近は我が懐を大寒波が襲っているので、年始以来どこにも出かけず家でスルメを齧りながらチビチビと缶ビールを飲んでおります(^^)

  3. Takema より:

    Unknown
    わたしも年末にこちらに泊まる計画を立てていたのですが、例の仮設道路の絡みで宿の方にやんわりと「また別の機会に‥」と断られてしまったんです(それで東根温泉に変更)。今はもう道路も開通しましたが、今度は休みが‥嗚呼。

  4. K-I より:

    Unknown
    Takemaさん、こんばんは。私は別のお宿の女将さんから、迂回路が悪路であるため安全を考慮してお客さんからの予約を断っている、という話を伺いました。年末年始の書き入れ時にもかかわらず、泣く泣く予約を断らざるを得なかったお宿の方の心中を察するに、さぞかし辛かったことでしょうね。吹雪いていたとはいえ宿泊客の歩く姿がほとんど見られなかった温泉街の光景には目を疑いたくなりました。そんな状況下、バスでアクセスして雪まみれになって温泉をハシゴしたワタクシは、東鳴子の焼肉八兆にてお食事中だったTさんやPさんよりヘンタイという有難き称号を頂戴し、至極光栄に存じております
    (あの焼き肉、めちゃくちゃ美味そうですね!)

  5. ぽち より:

    Unknown
    おいらの大好きな『幸の湯』だっ!!!
    しかもお泊りはリッチな四階なので、あのアングルよりも眺めが良いですわ~。
    でもいつもの湯治コースでも、六助さんち始め、肘折温泉のお宿の食事は本当にいつも美味しいんです。
    複数のお宿の方曰く、水の良さのせいと仰るのですが、もちろん食材の良さと手作り料理のあたたかさもあると思うんですがね。

    この日はTさんと八兆で色々噂をしておりました
    いつか肘折か八兆ご一緒致しましょう!

  6. K-I より:

    Unknown
    ぽちさん、こんばんは。宿泊中「幸の湯」には心酔してしまいました。今回「六助」さんには初めてお世話になり、お湯の良さや美味しいお食事、そして温かなもてなしにすっかり心を奪われたのですが、他のお宿も非常に魅力的ですので、次回宿泊時はどちらでお世話になろうかと、さっそく皮算用をして悩んでいます(^^)
    肘折はどのお宿も本当に温かいですね。食事の美味しさの秘訣は、ぽちさんが仰る通りだと思います。肘折のあらゆる魅力が料理の味に凝縮されているんですね。
    東北には足繁く通っておりますので、その機会にぜひ乾杯しましょう!

  7. MASA より:

    Unknown
    K-Iさん、こんにちは。
    何度かコメントさせていただいてる愛読者です。
    つい先日、肘折温泉へ行き(初の山形上陸でした)、若松屋さんへ泊りました。
    こちらへ宿泊したのは幸の湯狙いで、勿論こちらの記事に強く触発されたからです。
    結果、蕩けそうになるほど素晴らしい湯に恍惚となりました。
    宿の女将さんも良い人で、色々話せて楽しかったです。
    朝市では山菜や総菜を購入し、肘折の温泉街の素朴な雰囲気に陶然となりました。
    因みに2日目は丸屋さんに泊まったのですが、和モダンはどこも似た感じやな~と宿に入った瞬間は思いましたが、やっぱ泉質も湯殿の雰囲気も抜群なので(特に露店の八角形の湯舟は源泉100%で良かったです!)何度も入ってしまって逆に疲弊してしまいました(苦笑)
    K-Iさんのお陰で、また素晴らしい旅ができました。カルデラ温泉館も良かったです!
    心より御礼申し上げます。

  8. K-I より:

    Unknown
    MASAさん、こんにちは。
    返信が遅くなり申し訳ございません。
    「幸の湯」は素晴らしいですよね。コメントを拝読していたら私もまた入りたくなりました。カルデラの中にある肘折は独特の雰囲気がありますので、私が好きな温泉地のひとつです。とりわけ真冬の豪雪に埋もれた肘折は、当地じゃないと味わえない景色や体験を楽しめ、温泉の有難みがより一層身にしみるので、なおのこと大好きです。

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