みちのく深沢温泉

青森県

 
八甲田の銅像茶屋からちょっと先の田代平寄りにある「みちのく深沢温泉」。お湯はの良さはもちろんのこと、秘境めいたロケーションと鄙びた風情が多くの温泉ファンの心を惹きつけ、渋いお宿にもかかわらずGoogleで検索すると余多のサイトで紹介されていることがわかります。私は以前「田代新湯」(現在は入浴不可のようです)で湯浴みした際に、その上がり湯としてこちらで立ち寄り入浴したことがありますが、それ以来5年ぶりに再訪させていただきました。今回も立ち寄り入浴です。冬季になれば深い雪に覆われる当地ですが、何とこちらのお宿は年中無休なんだそうでして、厳冬に耐えてお客さんを迎え入れる逞しさは、ウインタースポーツを愛する人々の強い味方でもありますね。駐車場入口側には「風呂入口」と張り紙された勝手口がありますが、これは冬季の入口でして・・・

 
無雪期は間口の広いこちら側から出入りします。私が駐車場に車を停めようとすると、この玄関前でご主人が物憂げそうにボンヤリと座って遠くを眺めており、私が車から出るのを目にするや、ヨイコラショと腰を上げて帳場へと消えていきました。

 
昼猶暗く雑然としている食堂兼帳場でご主人に料金を支払い、歩くたびに軋む廊下を進んで男女別の浴室へ。開業以来幾星霜も経てきた館内は、あらゆる色彩がくすんでおり、相当草臥れていることが察せられるのですが、家庭的な雰囲気が泊まる人の心を惹きつけるのか、あるいは冬季でも宿を開けている貴重な存在ゆえか、宿を愛するお客さんからの手紙や写真がたくさん飾られていました。

 
ベンチと棚・籠があるばかりの簡素な脱衣室。一応洗面台はあるのですが、器だけで水は出ません。壁に括りつけられている紐からぶら下げられたガムテープには「カメ虫用」とメモ書きされていました。このテープの用途は言わずもがなですね。

 
左手に洗い場、右手の窓側に浴槽を配する浴室は、古い造りながらもガラス窓を多用しており、そこから差し込む明るさが室内の年季を打ち消していました。室内には湯気とともに金気や石膏の匂いが充満していました。浴槽は2分割されており、手前側は目測で2.5×3m、奥側は2.5×4.5mといった大きさで、奥の浴槽で立ち上がっている湯口よりお湯がドバドバ室内に音を轟かせながら投入されており、浴槽縁より惜しげも無く大量にオーバーフローしています。湯船から溢れ出たお湯が流れる洗い場の床タイルは、温泉成分の付着によって赤茶色に染まっているのですが、長年に及んで流されているうちに部分的にその付着が剥がれ落ちてマダラ模様になっていました。湯口のある奥の方がやや熱めの湯加減で、手前側はそこからの受け湯となっているため若干ぬるめです。

 
磨りガラスで隔てられた仕切りの下にある洗い場には、いくつかの鏡や蛇口が並んでいますが、蛇口から吐出されるのは水のみですので、お湯を体に掛けたければ、桶で湯船のお湯を直接汲むことになります。浴槽の縁には謎の数字が羅列されていたのですが、これって一体何?

 
内湯のドアから屋外に出ると小さなステップを挟んですぐに露天風呂が据えられており、3~4人サイズの岩風呂なのですが、女湯と一体になっていまして、左に掛かっている簾の向こう側が透けて見えてしまいそうなちょっとエロティックな造りなのです。でもジェントルマンなら目の前に広がるダケカンバやブナやダケカンバの緑を眺めながら、じっくり湯浴みして美しい自然を満喫しましょう。お湯はパイプからの供給の他、内湯のお湯も受けており、鮮度感は内湯より若干劣りますが、それでも清々しい環境の中で入る露天風呂は実に爽快です。

お湯は白みと鶯色を帯びた山吹色に濁り、底が見えにくいほど強い濁りを呈しています。金気と土類感(特に石膏)の匂いや味がはっきりと感じられ、大雑把に表現すれば、田代平界隈に湧出する他の温泉(たとえば「田代元湯」や「又兵衛の茶屋」など)と同系統のお湯と言えそうです。完全掛け流しのお湯が大量投入されていますので鮮度感は素晴らしいものがあり、特に内湯は抜群でした。この手のお湯はちょっとでも掃除を手抜きすると、たちまち浴槽等に汚れが発生する傾向にありますが、にもかかわらず内湯・露天ともに古いながらも綺麗に維持されていましたので、建物こそ草臥れているとはいえ、お風呂はきちんとメンテナンスされているのでしょうね。しかも冬季も宿を開けているんですから、そのご苦労は相当なものがあるかと思います。
前回訪問時は建物の老朽具合に躊躇い気味だったのですが、今回再訪することにより、この温泉の良さとお宿のご苦労を再認識させられました。

青森県青森市駒込深沢650  地図
017-738-1464

日帰り入浴7:00~20:00
400円
備品類なし

私の好み:★★+0.5

コメント

  1. ぱと より:

    Unknown
    お久しぶりです、日景温泉が終わりの様で残念です!来月は山梨、岐阜廻りで立山を計画してます!10月後半に今年も青森を始め東北を暢気に温泉廻りする予定です!青森の温泉には、まだまだ行きたい所だらけで目移りしてしまいますね?この夏は山梨、長野、群馬と冷泉を楽しんでます…

  2. K-I より:

    Unknown
    ぱとさん、ご無沙汰しております。
    私は先月台湾に行っていましたが、その後なかなか休みが取れず、温泉に入れていません。お盆明けには1泊できそうですので、避暑できる温泉地で湯めぐりしようかと考えています。

    青森県の温泉はどこも魅力的で、何度行っても面白さが尽きることはありませんね。10月後半へお出かけになるとのことですから、紅葉と一緒に温泉を楽しめますね。
    >日景温泉
    矢立峠の温泉はどんどん廃業に追いやられていますね。とても残念です。この他、温川温泉「温川山荘」も今月で閉じてしまうそうです。最近閉館が相次いでいますので、どの温泉でも、行けるときに行っておかないと後悔することが、今後は益々増えそうです。

  3. プンタ より:

    Unknown
    熱め~ぬるめ~超ぬるめ。
    おまけにトド寝付き(K-Iさんはトドられますか?)
    深沢も大好きな温泉です!
    私は古遠部と比べても遜色のない温泉だと思ってます。(^^)

  4. K-I より:

    Unknown
    >プンタさん
    先日久しぶりに再訪し、ここのお湯の良さを改めて実感しました。私が露天で湯あみしていると、汚れのない作業着をまとった3人組が、「ここの風呂、いいっすよね」なんて口にしながら入ってきました。どこかの現場へ行ってきた帰りなのでしょうけど、仕事の途中に温泉に入れるだなんて羨ましい…。そしてこの温泉の誉がマニアだけでなく、地元で働く方々に広まっていること、つまり温泉と地元の方との距離が短いことにも、羨望の念を抱きました。
    嶽のキミの収穫が始まったようですが、9月に時間ができたらキミの買い込みついでに、また青森県で湯めぐりしたいものです(9月がダメならリンゴの時期でも…)。

タイトルとURLをコピーしました