千葉県御宿町 御宿の湯クアハウス

東京都・埼玉県・千葉県

 
 
普段は鉄っちゃんとしての素性を隠して生活している私ですが、年に数度のペースで抑えることができないほど、「鉄」を求める欲求が高まります。そんな衝動に駆られて、房総半島を横断する小湊鉄道といすみ鉄道を乗り継いだ某日のこと。帰り途に外房線御宿駅へ立ち寄り、御宿の地に湧く鉱泉でその日の汗を流すことにしました。京浜東北線のお古を機器更新させた電車から降りると、プラットホームでは海女さんの像がお出迎え。昭和の国鉄駅らしい木造の駅舎は部分的に改修され、正面の駅名票は当地で誕生したとされる「月の沙漠」のモチーフであしらわれていました。

 
 
駅から海岸へ向かって歩くこと6~7分。砂浜から近い川沿いに位置する14階建てのマンションが今回の目的地「御宿の湯クアハウス」です。昭和のリゾートマンションと思しきこの建物のエントランスでは「日帰り温泉」と染め抜かれた赤い幟がはためいており、外来客でもここで入浴できることをアピールしています。

 
正面玄関を入った先に広がるエントランスホールはマンションの住人専用で、その右手手前にある小上がりみたいなスペースと、その奥にあるカウンターが浴場の受付です。小上がりで靴を脱ぎ、カウンターで入浴料を支払うと、引き換えに脱衣所のロッカーキーが手渡されました。施設名のように、単なる入浴施設ではなく、入浴を通じた健康増進を目的としているんだそうでして、壁には「一般健康コース」や「ストレス解消コース」など、目的別の入浴プログラムが掲示されていました。

 
脱衣所へ入る手前の大広間では、妙にガランとした空間に、数台のマッサージ機器とソファーが置かれていました。おそらく元々は別の用途だったのでしょうね。

 
脱衣室は中小規模の旅館やビジネスホテルの大浴場クラスとほぼ同等の広さ。ロッカーは受付で手渡されたキーと同じ番号のところを使います。室内には洗面台が2台設けられている他、扇風機やエアコンも取り付けられており、暑い夏でも湯上がりは快適です。


お風呂は男女別の内湯のみで、広い浴室内には川側に連続する窓から陽光が降り注ぐので、日中なら照明が不要なほど明るいのですが、窓以外は総タイル貼りで無機質な感が否めず、温泉情緒というよりリハビリ施設を連想させます。

 
洗い場は2箇所分かれて配置されており、ぞれぞれシャワー付きカランが3基ずつ取り付けられています。また、浴室入口付近の洗い場の左側には、上画像のような箱型の蒸し風呂が3台並んでいます。カプセルみたいな樹脂製の箱に入り、上部の蓋を開けて首を出すわけですね。

 
箱蒸し風呂の左側、ちょうど浴室の角に設けられているのは、奥に長いU字型をした歩行湯。U字型と言ってもカーブの部分にはお湯が張られておらず、右側の直線部分にぬるくなった源泉が、同じく左側に冷水が、それぞれ分かれて張られています。そして底に敷かれ他砂利によって足つぼが刺激されるようになっています。左右いずれも槽内に流動感は無く、特に冷水の方はやや黄ばんでいるように見えたのですが、溜めっぱなしなのか、常時入れ替わっているのかは不明。
歩行湯の左隣りは副浴槽で、こちらには茶色い鉱泉の沸かし湯が張られています。槽の大きさは4m×3mほどあるのですが、槽内は木工で底上げされ、肘置きで区分けされた4人用の寝湯になっていました。ただ、お湯の色が濃くて槽内が見えにくいため、実際に入って手探りで中の様子を把握しないと、ここが寝湯になっているとは気づかないでしょう。加温の程度が強く、後述する主槽よりやや熱い42℃前後に設定されていました。オーバーフローなどは見られず、槽内で吸引および供給が行われているようでした。

 
先へ向かって窄まる形をしている浴室の先端部分にあるのが、円形のジェットバスと打たせ湯。前者は直径2メートルほどで5~6人サイズ。ブクブクと音を立てて泡を発生させており、この浴室では最も熱い湯加減(体感で43℃ほど)となっていました。一方、打たせ湯は2本あり、ひとつは太くて勢いがあり、もうひとつはチョロチョロといった感じでした。ジェットバス・打たせ湯とも茶色い鉱泉の沸かし湯を使用しています。

 
主浴槽は目測で8m×3.5m。上画像の湯口の他、その隣にあるかぶり湯からも供給を受けています。他の浴槽と同様に浴槽上部からの溢れ出しは見られず、お湯は槽内にて吸い込まれているようです。この主浴槽は加温の程度が抑え気味で、体感で40℃ほどとなっており、じっくり浸かっていられる長湯仕様でした。この浴場の主要利用者層である日焼けしたサーファーには、寧ろこのくらいぬるい方が良いのかもしれません。

 
主浴槽の隣にあるのが、三角形を二つ向かい合わせたような形状をしているかぶり湯(上がり湯)。上述の入浴プログラムでは、そのコースでもまずこのかぶり湯を10杯かぶることからスタートしています。個人的にはこのかぶり湯が、最も浴感が良かったように感じ取れました。

お湯は典型的な黒湯で、まるでコーヒーのように黒っぽい茶褐色を濃く帯びており、透明度は15~20センチ。色付きが大変濃いため、浴槽内のステップなどは全く見えません。薄塩味+弱重曹味+薄い苦味+微かなタマゴ味を有し、黒湯でよくある有機的な匂いがほのかに嗅ぎ取れます。この手のお湯は得てしてヨードや臭素といった系統の匂いを発することが多いのですが、こちらではそうした匂いは感じられませんでした。なお塩素系薬剤による消毒が実施されているそうですが、それらしき臭いはあまり気になりませんでした。
特筆すべきはお湯のヌルヌル感であり、お湯を体に掛けるだけも、全身はたちまちヌルヌルに覆われます。もちろん入浴中もトロットロ且つヌルッヌルであり、あまりの浴感の強さに興奮し、自分の腕を何度もさすってしまいました。しかも湯船を出てからタオルで体を拭うまで、ひたすらツルスベが持続するんですから驚きです。分析表によれば炭酸イオンが34.7mgと多く含まれているばかりか、腐植質156mgという数値も尋常じゃありませんので、こうしたファクターが特徴的なヌルヌル感を生み出しているのでしょう。

重箱の隅を二点ほど突かせていただきますと、まず施設名は「クアハウス」であるのに、分析表に記載されている源泉名は「クアライフ」となっており、微妙に異なっています。この違いに何か意味はあるのか、あるいは単なる誤記なのか…。
そしてもうひとつ。公式サイトでは掛け流しと謳っていますが、実際には加温・循環・消毒が行われており、館内でもその旨が明示されています。その代わり加水は実施されておらず、どの槽も希釈されていない源泉が張られていますから、放流式ではなく、鉱泉100%という意味合いで「掛け流し」という語句が使われちゃっているのかな、と推測しました。もし放流式を採用しているのでしたらごめんなさい。

高い料金設定ですので、夏季以外の利用は低調なのかと思いきや、老人には40%割引が適用されるらしく、訪問時は近隣から訪れたお爺さんたち数人の利用が見られました。もちろん外房の砂浜沿いという土地柄、サーファーの方も利用なさっていました。モール泉も真っ蒼な腐植質の多さとヌルヌル浴感が面白いお湯でした。

御宿の湯クアライフ
ナトリウム-炭酸水素塩冷鉱泉 24.0℃ 溶存物質3.82g/kg 成分総計3.84g/kg
Na+:973.9mg(97.09mval%), NH4+:10.0mg,
Cl-:221.9mg(13.87mval%), I-:0.2mg, Br-:0.7mg, HCO3-:2298mg(83.44mval%), CO3–:34.7mg(2.56mval%),
H2SiO3:95.0mg, CO2:19.3mg, 腐植質156mg,
加温あり(源泉温度は低いため)
循環あり(浴槽内の温度を均一に保つため)
塩素系薬剤使用(衛生管理のため)

外房線・御宿駅より徒歩7分(600m)
千葉県夷隅郡御宿町浜2143-2  地図
0470-68-5598
ホームページ

平日15:00~22:00、土曜(および12/31~1/7・4/29~5/5・7/21~8/31の平日)13:00~22:00、日曜祝日及び正月三が日10:00~22:00
(各日とも受付は21:00まで)
火曜定休
1000円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★

コメント

タイトルとURLをコピーしました