大田原温泉 那須野ヶ原ベルビューホテル

栃木県

 
半年以上も前のことですが、定期的な所用のため東北某所を訪れた帰り道に、ちょっと時間があったので、栃木県大田原市の「那須野ヶ原ベルビューホテル」で日帰り入浴すべく立ち寄りました。「那須野ヶ原カントリークラブ」というゴルフ場に併設されたこのホテルでは、掛け流しの温泉に入浴できるらしいのです。どんなお湯に出会えるのか期待に胸を膨らませながら、小高い丘の上にあるホテル棟を目指しました。クルドサック状のアプローチの先に立派な車寄せが伸びており、ちょっとしたラグジュアリ感を漂わせる結婚式場のような外観を見上げつつ、エントランスから館内へ入ります。

 
白色基調のロビーは大変広々としており、特別に豪華という程でもありませんが、リゾート施設に相応な瀟洒さが伝わってきました。フロントで入浴をお願いしますと、快く対応してくださいました。

 
ロビーの左端に沿って伸びる通路を進んだ突き当たりが、ホテルご自慢の大浴場です。外観も館内も瀟洒な洋風デザインで統一されていましたが、浴室入口には「ゆ」と染め抜かれた暖簾がさがっており、脱衣室内も和洋を折衷させたような内装になっていました。温泉イコール和風という固定概念を捨てきれなかったのでしょう。でも高い天井と大きな窓のおかげで室内空間はとっても開放的。手入れがよく行き届いて清潔感があり、窓からは後述する露天風呂や庭園が眺められますので、とても気持ちよく使うことができました。なお貴重品用ロッカーは脱衣室の入口手前に設置されています。

 
浴室は男女によってコンセプトが異なっているらしく、「茶臼」と名付けられた女湯は洋風風呂、「朝日」と名付けられた男湯は和風風呂なんだとか。いずれの浴室名も那須岳に由来していますね。男である私が利用したのは当然後者になりますが、和風と言っても実質的には洋風に近く、高い天井と広い床面積による開放感、そしてシックなカラーリングによる落ち着きが、非日常的なひと時をもたらしてくれました。
洗い場にはシャワー付きカランが5基並んでおり、脱衣所の出入口を挟んだ反対側にはサウナが設けられています。


浴槽は大きさの異なるものが二つ並んでおり、左側はジャグジーがブクブクと稼働している副浴槽で、大きさはおおよそ1.8m×3.5mの四角形。

 
一方その右側にあるのは主浴槽で、こちらは目測で3.5m×6.5m。主・副両浴槽とも、壁には現在アート的なタイル絵があしらわれており、いずれも抽象画に見えますが、主浴槽の方をよく観察すると、太陽・山・松という日本絵画的な要素が描かれていることに気づきます。なるほど、これを以て和風風呂と称しているのかな。その構図から白砂青松をイメージしているのかと早合点したくなりますが、当地は内陸であり、しかも那須岳という名山が聳えていますから、もしかしたら那須連峰を望む奥州街道筋のいち風景と捉えるべきかもしれませんね。

 
壁絵下に置かれた箱型の湯口からは、直に触ると火傷しそうなほど激熱のお湯が注がれていました。湯船のお湯は浴槽縁よりオーバーフローし、縁直下のグレーチングへと流れ落ちています。槽内での投入や吸引は確認できなかったので、けだし放流式の湯使いかと思われますが、温度調整を図っているのか、お湯の投入量はやや絞り気味でした。
石材造の箱型湯口の下縁には、ライン状に白い析出がモコモコと現れています。またお湯の流路表面は茶色く染まっていました。

 
露天風呂は日本庭園風の岩風呂で、田園風景を見下ろす丘の上に位置しており、木立や茂みの隙間からは、集落の民家や田んぼの姿がチラチラと見え隠れしています。石板敷きの浴槽はかなり大きく、真ん中には島のような大きい岩が鎮座しており、入浴中これにもたれかかると、姿勢がちょうど良い感じになりました。特に浴槽からお湯が溢れ出ているような光景は見られなかったのですが、岩陰からコポコポと排湯される音が聞こえたので、どこかにオーバーフロー管等が隠されているのでしょう。おそらくこちらも放流式の湯使いかと思われます。

 
配管を流れてきたお湯は石造りの流路へ落とされ、そこを流れて露天風呂へと注がれています。その流路の周りは、温泉成分の付着によって、やや赤みを帯びたクリーム色に染まっていました。内湯同様にこの投入流路から注がれるお湯も大変熱く、しかも投入量は内湯より多いため、入りしなの露天風呂は脚を入れることも躊躇われるほどアツアツな状態。そこで、内湯から桶を持ってきてしっかり掻き混ぜたら、ちょうど良い湯加減に落ち着きました。尤も、掻き混ぜた後でも絶え間なく熱いお湯が注がれるので、数分後には再び熱くなってしまうんですけどね(特に湯口付近)。

お湯はほぼ無色透明ですが、湯中では茶色い湯の花がチラホラ浮遊しています。海から遠く離れた内陸地であるにもかかわらず、この温泉は高張性の食塩泉で、お湯を口にすると大変しょっぱい味覚を有しているのが特徴的。塩辛さの他、苦味、そしてスーッとするミントのような清涼感が感じられます。そして、室内ではふんわりと、そして湯面(特に湯口)からは弱いながらも明瞭なアブラ臭(クレゾールのような鼻孔をツンと刺激する匂い)が漂っています。

トロミのある湯船に浸かると、食塩泉的なツルスベと硫酸塩泉的なキシキシが、五分五分で拮抗して肌に伝わってきました。高張性の食塩泉らしいパワフルな(ある意味で凶暴な)温まりがあり、入浴しているうちに、その力強さによってガツンと攻められて体力が奪われ、あまり長湯することができません。ましてや、私の訪問時は内湯・露天ともやや熱めの湯加減であったので、温まりが余計に強く、気づけばフラフラになっていました。でもその力強さから来る温浴効果は大変頼もしいもので、湯上がり後、少なくとも2時間近くは、まるで体の芯に熱源を埋め込まれたんじゃないかと勘違いしたくなるほど、温まりが持続しました。北関東の寒い冬にはとっても心強い熱の湯です。塩分が濃いため夏にはベタつきそうですが、脱衣所には扇風機が用意されていますので、湯上がりにはしっかりクールダウンを。

ゆったりとした気持ちのよい空間で、個性的かつパワフルなお湯に浸かることができる、満足度が高い穴場的存在の温泉でした。

那須野ヶ原源泉1号
ナトリウム-塩化物温泉 51.1℃ pH7.1 119.3L/min(動力揚湯) 溶存物質11.006g/kg 成分総計11.0009g/kg
Na+:3347.7mg(79.88mval%), Ca++:708.9mg(19.40mval%), Mg++:6.6mg, Fe++:3.1mg,
Cl-:5457.4mg(84.37mval%), Br-:16.5mg, HS-0.1mg, SO4–:1328.9mg(16.16mval%), HCO3-:26.7mg,
H2SiO3:42.5mg, HBO2:37.8mg, H2S:0.1mg,

JR西那須野駅より東野バスの黒羽線で「八幡神社前」下車、徒歩15分(1.3km)
(那須塩原駅より大田原市営バスの那須塩原線を利用し「コミュニティセンター入口」もしくは「道の駅那須与一の郷」で下車しても徒歩圏内)
栃木県大田原市南金丸2025  地図
0287-23-1100
ホームページ

日帰り入浴14:00~21:00
550円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

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