・本記事では2015年7月11日の状況を取り上げております。
・今月に入ってから拙ブログでは山形県の温泉を連続して取り上げておりますが、いつも拙ブログをご覧くださっている皆様にいち早くご報告したいことがございましたので、今回は岐阜県の記事を挟み込ませていただきました。
梅雨後半の日本列島を猛暑が襲った先週末、私は避暑を兼ねて奥飛騨地方を湯めぐりしていました。奥飛騨は名湯の多いエリアですが、その中でも野趣あふれる無料開放の露天風呂として有名な塩沢温泉「湯元山荘」跡の露天風呂へ久しぶりに再訪してみることにしました。拙ブログでは6年前に一度取り上げております(当時の記事はこちら)。ご存知無い方のために簡単に説明しますと、かつて塩沢温泉では「湯元山荘」という温泉旅館が営業されていたのですが、残念ながら廃業してしまい、その後は露天風呂だけが残され、どういうわけかお湯も供給され続け、誰でも自由に入浴できる状態となっていたのでした。
国道361号沿いに立つ無印良品南乗鞍キャンプ場の看板が目印。この丁字路を曲がって、細い川沿いの道を1.5kmほど北上します。
道が大きくカーブするところで、右手に小径が逸れますので、そこへ入って坂を下れば到着できるはずなのですが、小径の入口付近の様子が何だかおかしいのです。それもそのはず、「湯元山荘」の看板が取り外されていました。しかも…
道には車両の通行を阻止するためのチェーンが張られており、「ここでのご入浴は出来ません」と書かれた札が下がっているではありませんか。あれれ、どうしちゃったんだろう。とうとうここも閉鎖か…。災害でも発生したのか。あるいは何らかの工事が行われるのか。クリアファイルに入れられたこの注意書きは、汚れやヨレなどがほとんど無いので、まだ印刷されて間もないものと思われます。ということは、チェーンが張られたのもつい最近なのかな。このまま引き下がることも考えましたが、せっかくここまで来たことですし、どうしても現状を自分の目で確かめたくなったので、ここから先は自己責任で進んでみることにしました。
アプローチを歩いて下り、駐車場跡までやってきました。「クマ出没注意必要」の札は相変わらずです。
駐車場の片隅には塩沢温泉の源泉ポンプ小屋があり、訪問時も中からはしっかりと作動音が響いていました。小屋の奥には2つの大きなタンクが立っており…
タンクの下からボコボコ音を立てて黄土色の温泉が勢い良く湧出していました。この源泉の温度を計測したところ25.8℃と表示されたのですが、後述する露天風呂の温度はもっと高いので、この源泉は露天風呂のものではなく、おそらく国道沿いの集落にある塩沢温泉の旅館「七峰館」へと引かれているのでしょう。
ポンプ小屋やタンクからちょっと離れたところに櫓の残骸のようなものがあり、その下には温かい配管が埋設されていましたので、露天風呂に注がれている源泉はこっちなんだろうと思います。
駐車場(跡)から川の対岸を望むと、露天風呂にはちゃんとお湯が張られていました。どうやら撤去されたわけでも災害に遭ったわけでもなさそうです。まずはひと安心。
湯船にお湯が張られていることは確認できたので、木造の橋を渡って対岸の露天風呂へ向かってみました。橋が腐食して踏み抜いたりしないか心配でしたが、今のところは全く問題ないようでした。橋の上から露天風呂の方を眺めますと、渓流の両岸にトラバーチンが形成されているがわかります。右岸側は源泉から引湯する過程で漏れた温泉によるもの、左岸側は言わずもがな露天風呂のオーバーフローによるものです。
あれれ? 橋を渡りきってすぐのところにあった「湯元山荘」の廃墟が消えて、草の生い茂る更地になっているではありませんか。いつの間にやら完全撤去されていたんですね。
旅館の建物は消えても、塩沢温泉露天風呂はまだ姿をとどめておりました。
閉鎖される前まで、このお風呂は有志の方によって清掃されており、そのため山の中にほったらかされている野湯に近い環境だというのに、比較的綺麗な状態が維持されていました。岩に立てかけられていたデッキブラシはそんなに古いものではなく、つい最近まで実際に使われていたことが窺えます。
重炭酸土類泉や塩化土類泉など、黄土色に濁る金気や土気の多い温泉は、自然の中に放っておくと、あっという間に藻や苔が繁殖し、ドロドロになって悪臭を放つ傾向にあります。北海道の然別峡野湯群や青森県田代元湯などはその典型ですが、この塩沢温泉も同様であり、おそらく閉鎖されてまだあまり経っていないはずなのに、早くも槽内には苔が発生しており、その破片が湯面に浮かんでいました。
対岸のトラバーチンはなかなか立派なもの。岸の上にはバスタブのような箱型タンクが置かれていますが、かつてはここでお湯を一時的にストックしていたらしく、そこから漏れたお湯がトラバーチンを形成したわけですね。なおこのタンクは現在空っぽです。
露天風呂のお湯は対岸(駐車場側)にある源泉井にてポンプアップされており、この日も源泉から塩ビパイプで川を渡ってきたお湯が絶え間なく注がれていました。パイプの口における温度は37.6℃ですから、まさに夏向きの温泉です。お湯の見た目から想像できるように金気と土気を有している他、かなり強い炭酸味を含んでおり、お湯に手を突っ込むだけでも、ほんのりとしたシュワシュワ感(どちらかと言えばモゾモゾ感かな)が伝わってきます。なお泡付きはありません。
居ても立ってもいられなくなった私は、入浴に問題が生じそうなことなんてどうでも良くなり、衝動的に入浴してしまいました。清掃されなくなった露天風呂の底はヌメヌメしており、歩く度に藻類の塊が舞い上がって、決して衛生的には宜しくない状態なのですが、暑い陽気の中で入るぬるめの露天風呂はとても爽快であり、また、ちょうど時期的にブヨとアブの端境期であるためか、鬱陶しい虫達に寛ぎを妨害されることもありませんでした。この露天風呂に入れるのは、これが最後となるのかな。
帰宅後にネットで調べてみたら、源泉井からお湯を汲み上げるポンプが最近故障したらしく、どうやらその故障が閉鎖の一因となっているようです。私が訪れた時にはちゃんとお湯が出ていましたから、一応修理されたのでしょうけど、よくよく考えてみれば、ポンプを回し続けるのも修理するのも、それなりの費用を要するわけですから、むしろ今まで温泉を無料開放していてくれたことがイレギュラーだったのかもしれません。
また、無料開放の露天風呂といえば、最近では栃木県塩原温泉「不動の湯」が風紀の乱れによって閉鎖されたことが大きな話題となりましたが(その後条件付きの再開が決定)、同様の事案がここでも問題化していたのかもしれませんね。
いずれにせよ、この度の閉鎖は大変残念です。もし海の日の三連休にこちらへ行こうと計画なさっていた方は、このような状況ですので、くれぐれもご注意くださいませ。取り急ぎご報告させていただきました。
コメント
Unknown
こんばんは。こちらの山奥へ行ってらしたのですね。
私は野湯及びそれに近いものには関心はあれど、訪ねる機会は今の所皆無なのですが。しかしながらこの種の貴重な湯が少なくなっていくのは残念ですね。
Unknown
こんばんは。こちらの山奥へ行ってらしたのですね。
私は野湯及びそれに近いものには関心はあれど、訪ねる機会は今の所皆無なのですが。しかしながらこの種の貴重な湯が少なくなっていくのは残念ですね。
Unknown
こんばんは。こちらの山奥へ行ってらしたのですね。
私は野湯及びそれに近いものには関心はあれど、訪ねる機会は今の所皆無なのですが。しかしながらこの種の貴重な湯が少なくなっていくのは残念ですね。
Unknown
あんちゃん、こんばんは。
はい、先週末はこのあたりをウロウロしており、コメントを頂戴した時は、北アルプスへ登山する準備に取り掛かっていました(^^)
野湯(及びそれに準じたもの)は環境や衛生面で、入浴に結構なハードルがあるものですよね。回数を重ねるうちに、ある程度開き直れるようになりましたが、それでも「うわっ! こりゃ無理だ」というところも結構あります(笑)。おっしゃるように、この種のお風呂が次第に過去帖入りしている現状は、一介のファンとしてとても嘆かわしく思います。
Unknown
あんちゃん、こんばんは。
はい、先週末はこのあたりをウロウロしており、コメントを頂戴した時は、北アルプスへ登山する準備に取り掛かっていました(^^)
野湯(及びそれに準じたもの)は環境や衛生面で、入浴に結構なハードルがあるものですよね。回数を重ねるうちに、ある程度開き直れるようになりましたが、それでも「うわっ! こりゃ無理だ」というところも結構あります(笑)。おっしゃるように、この種のお風呂が次第に過去帖入りしている現状は、一介のファンとしてとても嘆かわしく思います。
Unknown
あんちゃん、こんばんは。
はい、先週末はこのあたりをウロウロしており、コメントを頂戴した時は、北アルプスへ登山する準備に取り掛かっていました(^^)
野湯(及びそれに準じたもの)は環境や衛生面で、入浴に結構なハードルがあるものですよね。回数を重ねるうちに、ある程度開き直れるようになりましたが、それでも「うわっ! こりゃ無理だ」というところも結構あります(笑)。おっしゃるように、この種のお風呂が次第に過去帖入りしている現状は、一介のファンとしてとても嘆かわしく思います。
Unknown
地元の人から聞きましたが市が管理してるようで滑る、脱衣所がない、トイレがない、橋が危ない、と言った苦情があったそうです。何かあったら市の責任になると言うのもあるようです。せっかく無料で開放されてたいいお風呂残念ですね
Unknown
地元の人から聞きましたが市が管理してるようで滑る、脱衣所がない、トイレがない、橋が危ない、と言った苦情があったそうです。何かあったら市の責任になると言うのもあるようです。せっかく無料で開放されてたいいお風呂残念ですね
Unknown
地元の人から聞きましたが市が管理してるようで滑る、脱衣所がない、トイレがない、橋が危ない、と言った苦情があったそうです。何かあったら市の責任になると言うのもあるようです。せっかく無料で開放されてたいいお風呂残念ですね
Unknown
コメント有難うございます。
>何かあったら市の責任
これが理由で閉鎖されちゃうところって多いですよね。たしかに行政の管理云々の問題も大切なんだと思いますが、我々個々人が自分の行動に対していかに責任を取るか、というバランス感覚も重要なんだろうと、常々思っています。こんな野湯同然のところで危ないだの何だの言う人は、お門違いも甚だしいですよね(笑)。
海外では観光地で危ないところでも、手摺りが無かったり、注意書きも必要最低限だったりして、客側がきちんと責任を自覚するようになっていますから、日本の観光地の過保護なまでの防護柵や注意書きを目にすると、行政の姿勢に対しても、市民側の意識に対しても、情けないものを覚えざるを得ません。
普段はバカなことしか考えていない私が、柄になく小難しいことを申し上げてしまいましたが、またこのお湯に気軽に入れる日が来ることを祈っております。
Unknown
コメント有難うございます。
>何かあったら市の責任
これが理由で閉鎖されちゃうところって多いですよね。たしかに行政の管理云々の問題も大切なんだと思いますが、我々個々人が自分の行動に対していかに責任を取るか、というバランス感覚も重要なんだろうと、常々思っています。こんな野湯同然のところで危ないだの何だの言う人は、お門違いも甚だしいですよね(笑)。
海外では観光地で危ないところでも、手摺りが無かったり、注意書きも必要最低限だったりして、客側がきちんと責任を自覚するようになっていますから、日本の観光地の過保護なまでの防護柵や注意書きを目にすると、行政の姿勢に対しても、市民側の意識に対しても、情けないものを覚えざるを得ません。
普段はバカなことしか考えていない私が、柄になく小難しいことを申し上げてしまいましたが、またこのお湯に気軽に入れる日が来ることを祈っております。
Unknown
コメント有難うございます。
>何かあったら市の責任
これが理由で閉鎖されちゃうところって多いですよね。たしかに行政の管理云々の問題も大切なんだと思いますが、我々個々人が自分の行動に対していかに責任を取るか、というバランス感覚も重要なんだろうと、常々思っています。こんな野湯同然のところで危ないだの何だの言う人は、お門違いも甚だしいですよね(笑)。
海外では観光地で危ないところでも、手摺りが無かったり、注意書きも必要最低限だったりして、客側がきちんと責任を自覚するようになっていますから、日本の観光地の過保護なまでの防護柵や注意書きを目にすると、行政の姿勢に対しても、市民側の意識に対しても、情けないものを覚えざるを得ません。
普段はバカなことしか考えていない私が、柄になく小難しいことを申し上げてしまいましたが、またこのお湯に気軽に入れる日が来ることを祈っております。
11月末まで
一応
11月末まで施設修繕のため使用禁止だそうですが、修繕が終われば再度入湯可能だとの事
工事発注は高山市役所、高根支所だそうです
確認してから訪れる方が良いかもしれませんね
11月末まで
一応
11月末まで施設修繕のため使用禁止だそうですが、修繕が終われば再度入湯可能だとの事
工事発注は高山市役所、高根支所だそうです
確認してから訪れる方が良いかもしれませんね
11月末まで
一応
11月末まで施設修繕のため使用禁止だそうですが、修繕が終われば再度入湯可能だとの事
工事発注は高山市役所、高根支所だそうです
確認してから訪れる方が良いかもしれませんね
Unknown
>11月末まで
そうなんですか。ということは、また入れる日が来るかもしれないわけですね。尤も場所が場所ですし、あのロケーションもお役所的には容易に首を縦に振れるような環境じゃないでしょうから、おっしゃるように、事前に入念に確認しておいたほうがよさそうですね。何はともあれ、良い方向へ進んでほしいものです。
情報をお寄せ下さりありがとうございます。
Unknown
>11月末まで
そうなんですか。ということは、また入れる日が来るかもしれないわけですね。尤も場所が場所ですし、あのロケーションもお役所的には容易に首を縦に振れるような環境じゃないでしょうから、おっしゃるように、事前に入念に確認しておいたほうがよさそうですね。何はともあれ、良い方向へ進んでほしいものです。
情報をお寄せ下さりありがとうございます。
Unknown
>11月末まで
そうなんですか。ということは、また入れる日が来るかもしれないわけですね。尤も場所が場所ですし、あのロケーションもお役所的には容易に首を縦に振れるような環境じゃないでしょうから、おっしゃるように、事前に入念に確認しておいたほうがよさそうですね。何はともあれ、良い方向へ進んでほしいものです。
情報をお寄せ下さりありがとうございます。
閉鎖その後
いつのまにか閉鎖なんですね。
修繕が終わったころは、もう初冬で、例年5月の連休あたりから有志による清掃が行われていました。
今年はどうなんでしょうか。
復活しているのであれば再訪したいものです。
閉鎖その後
いつのまにか閉鎖なんですね。
修繕が終わったころは、もう初冬で、例年5月の連休あたりから有志による清掃が行われていました。
今年はどうなんでしょうか。
復活しているのであれば再訪したいものです。
閉鎖その後
いつのまにか閉鎖なんですね。
修繕が終わったころは、もう初冬で、例年5月の連休あたりから有志による清掃が行われていました。
今年はどうなんでしょうか。
復活しているのであれば再訪したいものです。
Unknown
のりくらさん、こんばんは。
昨年夏に行った時に閉鎖を確認しましたが、その後の動向については、存じ上げておりません。
復活していてほしいのですが、難しいかもしれませんね。
Unknown
のりくらさん、こんばんは。
昨年夏に行った時に閉鎖を確認しましたが、その後の動向については、存じ上げておりません。
復活していてほしいのですが、難しいかもしれませんね。
Unknown
のりくらさん、こんばんは。
昨年夏に行った時に閉鎖を確認しましたが、その後の動向については、存じ上げておりません。
復活していてほしいのですが、難しいかもしれませんね。
完全閉鎖
K-Iさん 今晩は。
もう少しぐぐったらK-Iさんのこの記事を知っていた山神さんのブログにその後が載っていました。
残念です。
完全閉鎖
K-Iさん 今晩は。
もう少しぐぐったらK-Iさんのこの記事を知っていた山神さんのブログにその後が載っていました。
残念です。
完全閉鎖
K-Iさん 今晩は。
もう少しぐぐったらK-Iさんのこの記事を知っていた山神さんのブログにその後が載っていました。
残念です。
Unknown
>のりくらさん
いま山神さんのブログを拝見し、絶句してしまいました。もう二度とあのお湯に入ることはできないんですね。非常に残念です。
教えてくださりありがとうございました。
Unknown
>のりくらさん
いま山神さんのブログを拝見し、絶句してしまいました。もう二度とあのお湯に入ることはできないんですね。非常に残念です。
教えてくださりありがとうございました。
Unknown
>のりくらさん
いま山神さんのブログを拝見し、絶句してしまいました。もう二度とあのお湯に入ることはできないんですね。非常に残念です。
教えてくださりありがとうございました。