松之山温泉 ひなの宿ちとせ 後編「月見の湯」

新潟県

前回記事の続編です。

 
大浴場「ほんやらの湯」に満足した私は、日帰り入浴の料金内で利用できるもう一つのお風呂「月見の湯」も利用してみることにしました。この「月見の湯」は露天風呂なのですが、浴場がひとつしかないため、時間帯による男女入れ替え制となっており、日帰り入浴の時間ですと10:00~12:00が女湯、13:00~15:00が男湯として設定されています。その名前から想像するに、日が暮れて空に月が浮かび上がった頃合いを見計らって入った方が風情を感じられて良いのでしょうけど、日帰り入浴は日中だけですので、今回は月見ではなく雪見を楽しむことにしました。
まずはエレベーターで3階に上がり、浴場名が記された行灯の前にある戸を開けます。

 
戸の先には渡り廊下が伸びており、その突き当たりが脱衣小屋。上述のように男女入れ替え制のため、渡り廊下には今の時間帯が男女どちらであるかを知らせてくれる札が掲示されていました。
大浴場「ほんやらの湯」は、汗や垢をしっかり洗い落として湯船で温まる、一般的なお風呂としての役割を担っていますが、この「月見の湯」は湯に浸かって風情を愉しむことを目的とした施設であるらしく、設備面はどちらかと言えば簡素です。脱衣小屋にしても、備品類が整っていていた大浴場とは対照的に、こちらは棚と籠が用意されているだけで、洗面台やドライヤーなどは無く至って質素ですが、入浴には水分補給が欠かせないというお宿の配慮なのか、室内には飲料水のサーバが置かれていました。また、「ほんやらの湯」の脱衣室に備え付けられていた籠置き場の一つ一つには、番号の代わりに四字熟語やことわざなどの成句が付られていましたが、こちらにおいては風情面を強調したいのか、「閑けさや岩にしみいる蝉の声」や「雪とけて村いっぱいのこどもかな」など有名な俳句が記されていました。

 
こちらが露天風呂「月見の湯」の全景。全体的に木材が多用されており、浴槽の上など多くの部分は屋根で護られています。訪問したのは当地が豪雪に見舞われる厳冬期。人の背丈を超える雪は、柵によってなだれ込みがくい止められていましたが、それでも浴槽の目の前まで迫っていました。

 
露天を囲む大和打ちの塀に貼り付けられているネームプレートには、この浴場の男女別時間割が案内されており、これによれば男湯となる時間は13:00~18:30で、それ以外の入浴可能時間は女湯になるんだそうです。
このネームプレートの右隣りにはシャワーブースが設けられていますが、浴場の大きさに反して1箇所しかありませんので、やはり上述したように、このお風呂は汗を流す実用的なものではなく、景色を眺めながらお湯を愉しむことを目的としているのがわかります。

 
浴槽は(目測で)おおよそ3m×5m。槽内は石板貼りですが、四辺には太い木材が用いられており、滑り止めを意図しているのか、表面にはスリットが彫られていました。なお浴槽を二分するような形で丸太が一本渡されていますが、これによって槽内が仕切られている訳ではなく、単に縁の上に渡されているだけであり、枕代わりに使うと良い感じです。また、縁の上にも木の枕が用意されており、側面にもたれながらこれに頭を載せて湯浴みすると、上手い具合に姿勢が安定し、リラックスした状態で湯浴みすることができました。

 
お湯は2段の枡からトポトポと落とされていました。使用源泉は大浴場「ほんやらの湯」と同じく、鷹の湯1・2・3号泉。いかにも松之山温泉らしく、湯口においてはメチャクチャ熱いのですが、浴槽の容量に対して投入量は絞り気味であり、湯量調整によって湯加減をコントロールしているものと思われます。実際にこの時の湯温は(体感で)43℃前後であり、雪景色の中で入るには実に心地よい温度が維持されていたのでした。なお湯使いは完全放流式。浴槽に満たされたお湯は、太い木の縁を削った切り欠けより溢れ出ていました。

 
お湯はやや灰色掛かった山吹色に弱く濁っており、湯中には山吹色の半透明を細かくちぎったような湯の華が大量に浮遊していました。その量は「ほんやらの湯」をはるかに凌駕しており、湯の華だらけといっても過言ではありません。事実、上画像のような小さな画像でもその様子をご覧いただけるかと思います。湯面からは刺激を伴うアブラ的な匂い、そして焼き過ぎてちょっと焦げちゃったような目玉焼きの匂いが漂い、お湯を口に含むと塩辛さと苦味、そして唇などが痺れる渋みが感じられました。ツルスベのお湯に浸かるとトロミがあり、強い塩分によるピリッとくる刺激もあって、お湯の濃さを実感します。とっても火照るお湯なのですが、厳冬期の露天では却ってそれがちょうど良く、外気の冷たさをお湯の火照りが上手い具合に相殺して、体には程よいぬくもりと爽快感が残ってくれました。


お風呂の上は屋根で覆われていますが、湯船に浸かって視線を斜め上に向けると、お宿の屋根や温泉街の軒並みの向こうに、木々の茂る丘が眺められ、開放感のもとで雪見風呂を堪能することができました。雲が出ていない日没後には、きっとお月見ができるのでしょうね。

全体的な雰囲気がとっても素敵なこちらのお宿。お湯もお風呂もなかなかでした。今回は貸切風呂が利用できていませんので、その実現を兼ねて、次回は是非泊まってみたいなぁ…。

鷹の湯1号・2号・3号
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 85.5℃ pH7.5 掘削自噴 溶存物質14978mg/kg 成分総計14979mg/kg
Na+:3500mg(60mval%), NH4+:31mg, Ca++:1900mg(38mval%),
Cl-:8900mg(99mval%), Br-:25mg, I-:10mg,
H2SiO3:110mg, HBO2:250mg,
「月見の湯」:放流式、ただし加水あり(源泉高温のため、清掃後の浴槽張り込み時に加水実施)(極寒期には一時的に加温)

新潟県十日町市松之山湯本49-1  地図
025-596-2525
ホームページ

立ち寄り入浴10:30~15:00 月曜定休
700円(拙ブログの記事で取り上げなかった貸切浴室は別途1050円/45分)
内湯(「ほんやらの湯」)に貴重品用ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり、「月見の湯」にはいずれの備品類もなし

私の好み:★★★

コメント

  1. 渡部健作 より:

    Unknown
    『雪見風呂』ですか。日本にはいろいろな温泉の楽しみ方がありますね。私は今まで一度も体験した事がありませんが、いつか体験してみたいです。
    来年もレンタカーで日本を旅行したいと考えています。又いろいろとご紹介していただければ嬉しいです。

  2. 渡部健作 より:

    Unknown
    『雪見風呂』ですか。日本にはいろいろな温泉の楽しみ方がありますね。私は今まで一度も体験した事がありませんが、いつか体験してみたいです。
    来年もレンタカーで日本を旅行したいと考えています。又いろいろとご紹介していただければ嬉しいです。

  3. 渡部健作 より:

    Unknown
    『雪見風呂』ですか。日本にはいろいろな温泉の楽しみ方がありますね。私は今まで一度も体験した事がありませんが、いつか体験してみたいです。
    来年もレンタカーで日本を旅行したいと考えています。又いろいろとご紹介していただければ嬉しいです。

  4. K-I より:

    Unknown
    渡部さん、こんばんは。
    先日の台風は各地に甚大な被害をもたらしたようですが、埔里は大丈夫でしたか。
    雪見風呂は日本ならではの楽しみ方ですよね。渡部さんが苦手な寒い気候の下での観光になっちゃいますけど、北国は味覚も素晴らしいので、機会があれば是非雪見風呂を体験なさってください。
    >レンタカー
    承知致しました。よろこんで紹介させていただきます♪ いつでもご連絡ください。

  5. K-I より:

    Unknown
    渡部さん、こんばんは。
    先日の台風は各地に甚大な被害をもたらしたようですが、埔里は大丈夫でしたか。
    雪見風呂は日本ならではの楽しみ方ですよね。渡部さんが苦手な寒い気候の下での観光になっちゃいますけど、北国は味覚も素晴らしいので、機会があれば是非雪見風呂を体験なさってください。
    >レンタカー
    承知致しました。よろこんで紹介させていただきます♪ いつでもご連絡ください。

  6. K-I より:

    Unknown
    渡部さん、こんばんは。
    先日の台風は各地に甚大な被害をもたらしたようですが、埔里は大丈夫でしたか。
    雪見風呂は日本ならではの楽しみ方ですよね。渡部さんが苦手な寒い気候の下での観光になっちゃいますけど、北国は味覚も素晴らしいので、機会があれば是非雪見風呂を体験なさってください。
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